魔女として断罪された悪役令嬢は婚約破棄されたので魔王の妃として溺愛されることを目指します

悠月

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第一章 婚約破棄されたので魔王のもとに向かいます

18 魔女裁判は非科学的極まりないと思います①

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 溜息を吐く私を横目に、ダミアンは続ける。

「アンリ殿なら、異端審問の裁判にも慣れていますからね」

「まあ、そうだね、慣れていると言えば慣れているよ。こんなに美しい女性に対して、裁判を行わなければならないのは、心苦しいけれどね。君とは、こんな形で出会いたくはなかったな、ああ、本当に残念だよ」

 ウェーブのかかったプラチナブロンドの長い髪を後ろでひとつに束ねた司祭アンリは、司祭らしからぬ、口説き文句のような台詞を口にする。

「仕方がないから、まずは魔女の印を見つけることにしようか。用意はいいかい? 美しいお嬢さん」

 アンリは、懐から太くて長い針を取り出した。

「お、お待ちくださいませ。そ、それは……何をする道具ですの?」

 私は、アンリに問い掛けながら、必死にこのイベントの記憶を思い出そうとしていた。
 一生懸命、記憶を辿るが思い出せない。
 ゲーム内では、このくだりに関しては、地の文で簡単に説明されていただけだ。
 ただ「公爵令嬢エレインに対して異端審問が行われた」と、述べられていただけで、裁判の詳細までは語られていなかったのだ。

 アンリはその甘いマスクに、なぜか嬉しそうな笑みを浮かべながら答える。

「決まっているじゃないか、この針を見てわからないかい? 君の美しい身体の中から、魔王と契約を交わした証である魔女の印を見つけるんだよ」
「え……、お、お待ちください……。見つけるとは、いったいどのようになさるのです……?」

 針を持っているということは、まさか……。
 まさか……よね?

「魔女の印は、痛覚がないからね。とりあえず、君の美しく柔らかい肌のあちこちにこの針を刺してみて、魔女の印を探すことにするよ」

 アンリは、まるで最愛の恋人に囁くかのように、告げる。

「さあ、ドレスを脱いで。その白く美しい柔肌やわはだを僕に見せてくれるかい?」

 ちなみに、アンリの私に対する好感度も、ジャンやダミアン同様に1しかない。
 それでいて、このように糖度の高い台詞が次々に出てくるとは、恐れ入ったものである。

「ちょ、ちょ、ちょっと……お待ちくださいませ。身体中に針を刺しまくるのですか? しかも、殿方の前で裸に……、ドレスを脱がなければならないと、おっしゃっているのですか?」

 私は、恐怖のあまり、じりじりと後ずさった。

「当たり前じゃないか。君は、かろうじて公爵令嬢の地位にぶら下がっているだけ。限りなく魔女の疑いが強い存在なのだからね。公爵令嬢だからと言って、例外は許されない。司祭の立場から、厳正なる魔女裁判を行わせてもらうよ。だから、僕の言うことを聞いておくれ、お嬢さん」

 裁判と聞いて、少しはきちんとした裁きをしてくれるかもと期待した自分がバカだった。
 ここは、迷信がはびこる、ヨーロッパ中世をモデルに作られた世界なのだ。
 公正な裁判など、行なわれるはずがないのだ。

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