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第一章 婚約破棄されたので魔王のもとに向かいます
17 ダミアンが汚物でも見るような眼差しで私を見ています
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「本来、異端審問はきちんとした証拠をもって行なわれるべきものですからね。魔女としての確たる証拠を入手すべく、今日は司祭のアンリ殿にもついてきてもらったのです」
ジャンの斜め後ろに控えていたダミアンが、ジャンの言葉を補足するように説明を加えた。
どうやらこれは、ジャンの考えではなく、聖堂騎士団の副団長にして、ジャンの腹心の部下であるダミアンの進言によるものだったらしい。
ダミアンは、この前の婚約破棄の際に、私への弾劾文を読み上げた、あの人物だ。
ダミアンは、何事もジャンを第一として働く優秀な部下である。どこが尊敬に値するのかまったく理解できないジャンであるが、なぜかダミアンはジャンを強く敬愛している。
ダミアンは、隻眼であるが、それは生まれつきのものではない。
戦場で、我が身を呈してジャンを庇い、盾となった際に、右目に敵の矢を浴びた。その傷が原因で、片目を失ったのである。
ダミアンにとって、我が身より大事なのがジャンだ。
そのため、恋愛など二の次と思っているのか、なかなか攻略の難しいキャラである。
プレイヤーの中には、
「ダミアン様のジャン様への忠誠は、ただの忠誠ではないわ。あれは、“愛”よ! それも“恋愛”という意味での“愛”だわ!」
と言って、主従カップリングの同人活動にいそしんでいた者たちもいたぐらいだ。
そして、ダミアンは、腐女子だけではなく、少し厨二な傾向を持つプレイヤーからも信奉されるキャラであった。
「眼帯キャラ」と言えば、「厨二病属性」を持つもの、という暗黙の掟でもあるのだろうか。
ジャンへの行きすぎた傾倒という設定にとどまらず、ダミアンの台詞は、常に厨二がかっていた。
ダミアンは、聖堂騎士団の副団長として、創造神ファシシュに対しても篤い信仰心を持っている。
ゲームの中では、魔王ヴィネ様やアヴァロニア王国に対して、他のキャラたちよりも強い憎しみを抱いていた。
「異教徒はすべて、この世の中から殲滅せねばならない! 悪を蔓延らせてはならぬのだ! この聖堂騎士団の名にかけて、この世から駆逐せよ! 抹殺せよ!」
とは、ダミアンがよく言っていたことである。
この大仰さもまた、やはり厨二がかっている。
おそらく、創造神ファシシュに反する存在、異端というものが許せない性格――として、設定されているのではないか。
「私、エレイン様のことはジャン様の婚約者として、敬愛しておりました。ああっ、それなのに……! このようなことになってしまうとは、本当に、とても、とても残念ですよ、エレイン様。あなたが、この世を滅ぼす、魔王の手先であったとはね……!」
ダミアンは、両手を一度、左右に大きく広げた後、もんどりうつように自身の眼帯を覆い、激しく嘆いて見せる。
前世の世界では、「ヴィジュアル系バンド」というものが流行ってい時期もあったと記憶している。ダミアンの所作は、ヴィジュアル系バンドのメンバーのようでもあるし、ミュージカルの一場面のようでもある。
あるいは、中学生の頃ノートに書いた、黒歴史ポエムか。
いちいち芝居ががってはいるが、ダミアンのその言葉に嘘はないのだろう。
確かに、あの婚約破棄の前までは、私に対しても、まるで部下として上役に仕えるかのように、礼儀正しい態度で接してくれていたと思う。
それが今は、汚物を見るかのような、蔑んだ眼差しで私を見つめている。
厨二がかったダミアンだけに、駆逐されそうな殺意も感じられる。
唾ぐらいなら余裕で顔に吐きかけられそうな勢いである。
ちなみに、ダミアンから私への好感度も、主君に合わせるかのように、1しかなかった。
(主従揃いも揃って、好感度1って……。いったいどういう数値なのよ)
ジャンの斜め後ろに控えていたダミアンが、ジャンの言葉を補足するように説明を加えた。
どうやらこれは、ジャンの考えではなく、聖堂騎士団の副団長にして、ジャンの腹心の部下であるダミアンの進言によるものだったらしい。
ダミアンは、この前の婚約破棄の際に、私への弾劾文を読み上げた、あの人物だ。
ダミアンは、何事もジャンを第一として働く優秀な部下である。どこが尊敬に値するのかまったく理解できないジャンであるが、なぜかダミアンはジャンを強く敬愛している。
ダミアンは、隻眼であるが、それは生まれつきのものではない。
戦場で、我が身を呈してジャンを庇い、盾となった際に、右目に敵の矢を浴びた。その傷が原因で、片目を失ったのである。
ダミアンにとって、我が身より大事なのがジャンだ。
そのため、恋愛など二の次と思っているのか、なかなか攻略の難しいキャラである。
プレイヤーの中には、
「ダミアン様のジャン様への忠誠は、ただの忠誠ではないわ。あれは、“愛”よ! それも“恋愛”という意味での“愛”だわ!」
と言って、主従カップリングの同人活動にいそしんでいた者たちもいたぐらいだ。
そして、ダミアンは、腐女子だけではなく、少し厨二な傾向を持つプレイヤーからも信奉されるキャラであった。
「眼帯キャラ」と言えば、「厨二病属性」を持つもの、という暗黙の掟でもあるのだろうか。
ジャンへの行きすぎた傾倒という設定にとどまらず、ダミアンの台詞は、常に厨二がかっていた。
ダミアンは、聖堂騎士団の副団長として、創造神ファシシュに対しても篤い信仰心を持っている。
ゲームの中では、魔王ヴィネ様やアヴァロニア王国に対して、他のキャラたちよりも強い憎しみを抱いていた。
「異教徒はすべて、この世の中から殲滅せねばならない! 悪を蔓延らせてはならぬのだ! この聖堂騎士団の名にかけて、この世から駆逐せよ! 抹殺せよ!」
とは、ダミアンがよく言っていたことである。
この大仰さもまた、やはり厨二がかっている。
おそらく、創造神ファシシュに反する存在、異端というものが許せない性格――として、設定されているのではないか。
「私、エレイン様のことはジャン様の婚約者として、敬愛しておりました。ああっ、それなのに……! このようなことになってしまうとは、本当に、とても、とても残念ですよ、エレイン様。あなたが、この世を滅ぼす、魔王の手先であったとはね……!」
ダミアンは、両手を一度、左右に大きく広げた後、もんどりうつように自身の眼帯を覆い、激しく嘆いて見せる。
前世の世界では、「ヴィジュアル系バンド」というものが流行ってい時期もあったと記憶している。ダミアンの所作は、ヴィジュアル系バンドのメンバーのようでもあるし、ミュージカルの一場面のようでもある。
あるいは、中学生の頃ノートに書いた、黒歴史ポエムか。
いちいち芝居ががってはいるが、ダミアンのその言葉に嘘はないのだろう。
確かに、あの婚約破棄の前までは、私に対しても、まるで部下として上役に仕えるかのように、礼儀正しい態度で接してくれていたと思う。
それが今は、汚物を見るかのような、蔑んだ眼差しで私を見つめている。
厨二がかったダミアンだけに、駆逐されそうな殺意も感じられる。
唾ぐらいなら余裕で顔に吐きかけられそうな勢いである。
ちなみに、ダミアンから私への好感度も、主君に合わせるかのように、1しかなかった。
(主従揃いも揃って、好感度1って……。いったいどういう数値なのよ)
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