魔女として断罪された悪役令嬢は婚約破棄されたので魔王の妃として溺愛されることを目指します

悠月

文字の大きさ
42 / 106
第二章 魔王の待つアヴァロニア王国に向けて旅立ちます

16 ヴィネ陛下、私を妃にしてくださいませ! ②

しおりを挟む
 案の定、ヴィネ陛下の側近、セパルが口を挟んでくる。

「恐れながら……エレイン嬢が聖カトミアル王国の聖堂騎士団長殿から婚約破棄されたなど、あなたの口から聞くまで、我々は知りませんでした。そして、それが嘘か誠かも、我々には確かめるすべがないのですよ」
「嘘ではありません! 本当に、私は……婚約破棄されたのでございます!」
「聖カトミアル王国と我が国とは、けして良好な関係にあるとは言えません。我が国は、何度も彼の国から一方的な侵略を受けています。それも、ただファシシュ神を信仰しないという理由だけで。そんな国から来た人間の言葉を素直に信用できると思いますか? 諸手もろてを上げて歓迎できると思いますか? あなたは、もしや我が国に間諜として送り込まれた存在なのでは? と、我々から疑われたとて仕方ないのですよ」

 それはそうだろう。
 突然、友好国でもない国の人間が現れ、あろうことか妃にして欲しいと言い出したのだ。
 それも、国家の実権を握っている王子に等しい存在の聖堂騎士団長の元婚約者だ。セパルのように疑ってかかるのは、当たり前と言えば当たり前のことだ。
 さらに、国王の結婚は、あくまでも政治的な意味合いを持つ。
 重臣たちが、「はい、どうぞ」と諸手を上げて許すわけにはいかないだろう。
 非常識なことを言っているのは、私も承知している。
 わかってはいるが、それでも──私は、ヴィネ様の傍にいたいのだ!

 重臣たちの間に広がる重苦しい空気を振り払うように、ヴィネが再び口を開く。

「まあ、よい。地位や財が望みではないと言ったな。では、いったい何が望みなのだ? 何が望みで私の妃になりたいと申す? そなたは、私の妃となって何をしたいのか? 申してみよ。理由次第では、考えてやってもよい」

「陛下!」

 セパル以外の臣下たちも次々と異議の声を上げた。

「陛下……!」
「陛下、何をおっしゃいますか!」

 制止しようとする重臣たちに対して、黙るようにと、ヴィネ陛下は片手を上げる。

「申してみよ。くだらない理由であれば、城の外につまみ出せばよい。さあ、エレインとやら、遠慮なく申せ」

 国王の言葉に、臣下たちは、口をつぐんだ。
 皆、固唾かたずを呑むように、私の回答を待っている。
 広間の空気が、ピリピリと張り詰めて肌を刺すように感じられた。
 
 私はいよいよ覚悟を決めた。
 ヴィネ様をはじめ、皆の信頼を得るためには、たとえ信じてもらえなくとも真実を話さなければいけないだろう。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない

あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。 王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。 だがある日、 誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。 奇跡は、止まった。 城は動揺し、事実を隠し、 責任を聖女ひとりに押しつけようとする。 民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。 一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、 奇跡が失われる“その日”に備え、 治癒に頼らない世界を着々と整えていた。 聖女は象徴となり、城は主導権を失う。 奇跡に縋った者たちは、 何も奪われず、ただ立場を失った。 選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。 ――これは、 聖女でも、英雄でもない 「悪役令嬢」が勝ち残る物語。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

処理中です...