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第二部【ミーガン子爵家再興編】 第一章 『フェンドラム山脈のドラゴン族とクラン設立』

5話

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 ギルマスにギルド長室を追い出されたクロード達とミレイはとりあえずクランハウスが出来るまで泊まる宿を確保するためにミレイの案内でギルド直営の宿へ向かうことにした。

「ここならSランク冒険者のクロード達はサービスで宿泊はただだし、さっき登録したばかりの三人も割引が効くわ。食事も値段の割には美味しいし、ここで良いんじゃないかしら。ずっと泊まる訳でもなんだし」

「うん。良いと思う。ここにしよう。よし、こうして無事に帰って来れた事だしこのまま無事の帰還を祝して軽くパーティーでもするか。ミレイにも言っておきたい事があるし、どうかな」

「ええ!とても良いわね!!私がこれまでどれだけみんなの事を心配していたかじっくり話してあげるからキッチリ付き合いなさいよ!」

「はいはい。わかってるって。心配してくれて、ありがと」

「//////な、何よ!!べ、別にあなただけを心配していた訳じゃないんだからね。み、みんなのこともちゃんと心配してたんだから。勘違いするんじゃないわよ。//////」

 クロード達は急にモジモジし始めたミレイを連れてギルド直営の宿屋に入って行く。

 クロードはみんなに食堂の席を確保しに行ってもらい宿屋の受付に向かい受付で帳簿を書いている男に話しかける。

「すいません。宿泊したいのですが。部屋は空いているでしょうか。期間はとりあえず十日でお願いします」

「いらっしゃい。十日の宿泊ね。人数は何人ですか?」

「えっと、六人で」

 クロードが人数を言うと男は首を横にずらしボロ達五つ子を見ると再びクロードに目線を戻し――――

「あちらのモンスターはお仲間ですよね。家は従魔も料金を頂くことになっているのですが」

「あ、大丈夫ですよ。あの子達はここに入ってもらうので」

 クロードが異空間のゲートを開いて男に言うと男は目を丸くして暫く固まる。

「はっ、な、成程、それでしたら大丈夫ですね、十日。食事はあちらの食堂でお召し上がりください。食事の支払いは食堂のカウンターでお願いします。では、十日、六人の宿泊で、六十万メル、金貨六枚だね――――――丁度だね。はい。これが部屋の鍵ね。二階の端の三部屋を用意したからごゆっくり」

 クロードは宿の店主から三部屋分の鍵を預かるとみんなが集まっている一画へと向かう。

「あ~~!!やっと来たぁぁ。遅いのよクロードォォォ。この私が一緒に食事するって言ってんだからもっと早く来なさ~い。…………う――――」

「う?」

「…………うわぁぁぁぁん…………ズビ、ズビ…………スン、スン…………みんな無事でよかったぁぁぁ……ス~、ス~」

「……え!もしかしてミレイ寝ちゃったの!?――――これは起きそうにないな。みんなは先に食事してて、俺はミレイをギルドの職員寮まで運んで来るから」

 クロードの言葉を受けルシファーが「でしたら私が」と言ったが、クロードは「いや、俺が運んで来るから大丈夫だよ。みんなは食事して手」と言ってミレイを背負って宿を出て行く。

「……前にも一度だけ運んだことがあったけどその時よりも少し軽く感じるな。俺の力が強くなっただけかもしれないけど…………でも大分心配かけちゃったみたいだな」

「……そうよ~。もっと私のこともみんなみたいに大事にしなさい――――ス~、ス~」

 自分の独り言にミレイが急に返事をしたためクロードは驚き後ろを向きミレイの様子を伺うと耳元で規則正しいミレイの寝息が聞こえて来る。

「…………了解しました。眠り姫様」

 クロードはミレイを起こさない様に職員寮まで運び、丁度量の玄関近くにいた寮母さんの職員の方にミレイを預けると一人宿へと戻って行く。

***

 クロードがミレイを背負って宿を出た後、ナビー達は食堂の席に着いて食事を取っていた。

「ねね~、ナビー様~さっきクロード様に背負われて行ったミレイって人は一体どんなひとなの?」

 シャリナの問いにルシファー、ミカエルだけでなく今までミレイと王都のギルドで少ししか接点が無かったケイト達も興味津々で耳を傾ける。

「そうですね。ミレイさんとマスターの関係は最初はあまり良いものではなかったと思います。マスターが『銀狼の牙』を追放されて一人になり最初に接触したのがミレイさんです。ジョブが覚醒前のマスターは今では考えられないですが最弱と言って差し支えありませんでした」

「へ~、あのクロード様にもそんな時があったんだね~」

「ええ、あったんですよ。それで最後の拠り所としてギルドを訪れたマスターにミレイさんは数か月かけて自分が無能であることを自覚させました。まあ、当時のマスターは本当に弱かったですから受付嬢としては早く冒険者を諦めて新しい道に進んでもらいたかったと言う思いがあったんだと思います。しかし、マスターは諦めませんでした。それどころかわざわざ死ぬような思いをしてキラーボアを狩って来る始末です。ここからです。ミレイさんのマスターに対する接し方が明らかに変わって来たのは、マスターへの献身的なサポート、何かあったら相談相手になる。マスターに強くなってもらうためにマスターに教官を紹介した事もありましたね。当時の私はマスターの中に宿る一スキルでしかありませんでしたから……正直、ミレイさんに対してもの凄く嫉妬していました。…………あの人はどうしようもなくマスター、クロード様のことが好きなんですよ。まあ、ここに本人がいたら今の好きと言う所は全否定するでしょうが。ミレイさん素直じゃありませんからね」

 それからもクロードのことや自分達のことを話しながら食事をしているとクロードが宿に戻って来た。

「あ!マスター、お帰りなさい。ミレイさんはどうでしたか?」

「ん、ああ、ミレイなら寮母さんと同僚の人に引き渡して来たよ。今頃は気持ちよく自分の部屋で寝てるんじゃないかな」

「そうですか。では、食べましょうか」

「ああ」

 クロード達は食堂が閉まるまで食事を楽しむとそれぞれ部屋に行き眠りに就いた。

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