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19章-06
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……真っ白な空間で目が覚めた。
上も下も真っ白であやふやな世界。下手に動いたら床を見失って転びそうだけど、さすがに慣れも感じてきている。
(……ここ、神様の夢の世界か)
変なことに慣れてしまった自分に呆れつつも、世界に変化が起こるのを黙って待つ。
ここは私の夢だけど、神様が干渉している以上、待つしかない。
何かきっと、意味があるのだろうから。……多分。
それにしても、私はいつの間に眠っていたのかしらね。
「あ、誰かいる」
いくらかぼんやりと待っていれば、目の前の空間に誰かの影が落ちた。
この夢で出会う人にいい思い出はないけど、逃げることができないのも体験済みだ。
じっと目をこらして、それが誰であるのかを見極める。
……ずいぶん、細い影だ。華奢というより、これはもうガリガリだろう。
手足に骨の形が浮いて見えているほどだ。ちょっと痩せすぎね。
(……多分、女の人よね?)
それらしい丸みは全くないけど、なんとなくそんな気がした。それも、女性ではなく少女と呼ぶ年齢だと思う。
続けて浮かび上がるのは黒い髪。何故かカットが不ぞろいで、前も後ろもジグザグになっている。わざとやったのなら前衛的すぎるわね。……そんなことはないだろうけど。
「…………」
ガリガリの手足に、絆創膏がいくつも貼ってある。
でも、傷の大きさには全然足りてなくて、青痣やかさぶたがあちこち覗いている。
裸足の足。血の染みだらけのヨレたワンピース。これだけ見たら、浮浪者のようだ。
なのに、こちらを見つめる目だけは妙に大きく、ぱっちりとしている。
睫毛も長いし、きっと頬に骨が浮いてさえいなければ美少女だろう。
……そう。わかりたくないけど、そうだとよくわかってしまうほどに。
「…………貴女、『私』なのね」
「うん」
かすれた少女の声で、〝 〟が頷いた。
名前を思い出すのも恐ろしい、地球での私。もう失われた私。
泣きたくなるほど酷い姿だけど、その顔は間違いなく、『アンジェラ・ローズヴェルト』と瓜二つだった。
「……神様は、顔が似ているから私を選んだのかしら?」
「さあ?」
「こんな美少女に酷いことをする輩もいるのね」
「顔がきれいだったから、傷つけたかったみたいよ」
「何それ嫌な話」
「本当にね。嫌な話」
姿はボロボロなのに、〝 〟は私と同じ調子で言葉を返してくる。
聖女と話している時とは、また違う感覚。聖女は姿は同じでも他人だったけど、この子は私だもの。
……そう考えると、ある意味独り言なのかしらね、これ。
「…………ねえ、回復魔法使おうか?」
「ううん、いらない」
かつては持ってなかった力を提案したけど、〝 〟はゆるく首を横にふった。
私がサポート特化のアンジェラになったのは、この子の傷を癒すためなのかもしれないのに。
「いらないの? どうして?」
「だってこれは、過去の傷だもの。もうどこにも残っていない傷」
「今の私は、怪我なんてしていないでしょう?」
瞬いた時にはもう、傷だらけの少女はいなかった。
真っ白で上も下もわからない空間。
私の目の前にあったのは――――大きな姿見だった。
「……なんだ。本当に独り言だったのね」
鏡の中の少女には、どこにも傷などない。
亜麻色の長い髪と青い瞳。モヤシのような華奢な体には、けれど骨など浮かんでいない。
泣きそうな顔で、こちらに微笑んでいるだけだ。
[かわいそうな女の子は、幸せになれそうかな?]
ふと横をみれば、白いモヤのような何かが私に話しかけている。
女性とも男性とも言い難く、感情の乗っていないただ穏やかな声。
「なりますとも。最高のハッピーエンドルートを選んできましたからね!」
[それはよかった]
グッと親指を立てて答えれば、モヤモヤはどこか嬉しそうに輝いた。
この姿だと威厳もへったくれもないけど、この神様らしいといえばそうなのかもね。
「それで、神様は過去の私を救いたかったんですか?」
[わたしが救うというのは語弊があるね。君を救ったのは君であり、あの幼馴染であり、仲間たちだ。わたしは何もしていないよ]
「……そうですか?」
[そうだとも。わたしはただ、〝 〟の笑顔が見たかっただけだよ]
「私……というか、アンジェラと同じ顔じゃないですか」
[それでも。〝 〟まで救われて、ようやく完全なハッピーエンドだろう? ああ、本当によかった。君にお願いして大正解だったね]
モヤモヤは光り輝きながら、真っ白な空間でくるくると踊り始める。
……そっか。この戦いは、世界を魔物の危機から救う旅であり、偽者の私を救うための旅でもあったのか。
私は骨の浮いていないちゃんとした体を手に入れたし、もらえなかった愛を知ることもできた。
愛される温かさも……愛するという気恥ずかしさも。
「完全勝利じゃない」
[そうだよ。素晴らしいよ! こんなに素敵な終わり方を示してくれるなんて、ヒトはやっぱりすごいね!]
神様は現れてからずっと興奮気味で、顔はないけど子どものようにはしゃいでいる。
てっきり、【無垢なる王】を殺してリセットするという命令に背いたことを怒られると思っていたんだけど、意外と柔軟なひとなのね。
[その結果が酷いものだったら、わたしも怒ったよ? だけど、君が示してくれた道のほうが、皆が幸せになれるようだからね。だったら、彼はあのままでいいよ。もしも本当におかしくなってしまったら、それはまた考えよう]
「相変わらず勝手に人の考えを読みますね」
[神様だからね]
便利な言葉ね、神様って。
まあ、それだけのことができる存在と『聖女』は繋がっているのだから、こっちもまたすごい気がするけど。
[ああ、そうだ。素敵な結末を見せてくれた君だから、特別にご褒美をあげるよ。さすがにこれ以上の加護はあげられないけど……何か頼みはあるかい?]
「頼み……あっ! あります!!」
うっかり呆れてしまっていたけど、頼みごとと言われれば話は別だ。
今神様に願うことは、もちろん一つだけ。
最後の戦いで、私の無茶に彼を巻き込んでしまったから。
「私が攻撃の魔法で代償として払った命、どうかジュードの分は免除してもらえませんか? その分は、私から徴収してもらって構いませんので!」
ぎゅっと手を組んで願えば、踊っていたモヤモヤがピタッと止まった。
――戦い終わった後でジュードが倒れてしまったのは、多分そのせいなのだ。
これは宿に戻ってから、お医者さんとカールが検分した結果なのだけど。
あの魔法を使っている間、代償は体に通っている『魔力回路』から吸収されていたのだそうだ。魔力回路とは、亀裂のように浮かび上がっていた赤い線のことで、内臓とは別に体の中に通っているものらしい。
魔術師や私のような魔法が使える人間は、日常的に魔力を循環させているから何ともないのだけど。ジュードは全く素養のない人間なので、今までそれを使ったことがなかった。
そこへ突然『命を削る』なんてハードな負荷をかけてしまったため、回路はほとんど燃えつき、ジュード本人も倒れてしまったのだ。
いつも通りに戦ってくれたけど、実際にはかなりの痛みを耐えていたはず……と聞いている。
「約束を破って貴方の民を傷付けるような魔法を使ったのは、私です。ジュードは全然関係ないんです!」
[まあ、そうだね。彼が熱心に頼むから聞いてしまったけど、君の魔法に彼は関係ないね]
「ですよねっ!? お願いします!! ジュードからは奪わないで下さい!!」
神様も同意してくれたので、もう一押しとばかりに頭を下げる。
ただでさえ怪我もしていたのに、魔力的な負荷を受けて命を削るなんて絶対に嫌だ。
私はジュードを傷付けたくて魔法を使ったわけじゃないのだから。
[……わたしは構わないけど、きっと彼が知ったら怒るよ? あの場で宣言した通り、彼は君がいない世界なんて望んでいないだろうからね]
「それでも、です。ジュードがいるから、彼が『彼のためのアンジェラ』だと求めてくれたから、偽者の私は戦えたんです。お願いします、神様!」
通じるかわからないけど、ダメ押しで土下座もしておくべきかしら。
そんなことでジュードが助かるのなら、いくらでも――……
[まあ、そうは言っても消費された命は、寿命二時間分だけどね]
「……は?」
大真面目に考えていた私の頭から、色んなものがスポーンと転げ落ちた気がした。
「……え? あの、二時間? 私、神様との約束を破ったんですよ? 聖女なのに」
[うん。だから、君たちが【無垢なる王】と戦っていた時間分の寿命を、代償としてもらったよ。……もっと負けたほうがいい?]
「い、いえいえいえいえいえ!!」
あまりにも予想外の返答に、私は全力で首を横にふった。
……二時間。あれだけ散々格好つけて、魔法もガンガン使っておいて、
たった二時間、だったのか。
「あ、甘すぎませんか、神様」
[甘いよ。本当はもっと沢山奪ってもいいのだけど、君たちは素晴らしい道を見せてくれたし、〝 〟を幸せにしたかったからね]
止まっていた神様は再びくるりと空中で踊った。
……ああ、なんだ。たった二時間だけなのか。頼みごとを神様が聞いてくれたなら、私はジュードを置いて死ぬ覚悟もあったのに。
「よかった……ほんとに、よかった」
[君たちが頑張ったからだよ。うんうん、素晴らしいハッピーエンドだね]
じわりとにじんだ視界はあっという間に崩壊して、涙をボロボロとこぼしていく。
本当に、本当に、これ以上ない結末だ。私はこんなに幸せな結末を迎えて大丈夫なのかしら。
偽者のアンジェラなのに。
[もちろん構わないさ。この世界はこうして、頑張った人が報われる形であって欲しいからね]
キラキラ、ふわふわと。真っ白な世界に光が満ちていく。
元からあやふやだった神様の輪郭などは、あっという間に溶けて見えなくなってしまった。
[そろそろ起きてあげて、アンジェラ。今度は、格好よく決めてくれるといいね]
上も下も真っ白であやふやな世界。下手に動いたら床を見失って転びそうだけど、さすがに慣れも感じてきている。
(……ここ、神様の夢の世界か)
変なことに慣れてしまった自分に呆れつつも、世界に変化が起こるのを黙って待つ。
ここは私の夢だけど、神様が干渉している以上、待つしかない。
何かきっと、意味があるのだろうから。……多分。
それにしても、私はいつの間に眠っていたのかしらね。
「あ、誰かいる」
いくらかぼんやりと待っていれば、目の前の空間に誰かの影が落ちた。
この夢で出会う人にいい思い出はないけど、逃げることができないのも体験済みだ。
じっと目をこらして、それが誰であるのかを見極める。
……ずいぶん、細い影だ。華奢というより、これはもうガリガリだろう。
手足に骨の形が浮いて見えているほどだ。ちょっと痩せすぎね。
(……多分、女の人よね?)
それらしい丸みは全くないけど、なんとなくそんな気がした。それも、女性ではなく少女と呼ぶ年齢だと思う。
続けて浮かび上がるのは黒い髪。何故かカットが不ぞろいで、前も後ろもジグザグになっている。わざとやったのなら前衛的すぎるわね。……そんなことはないだろうけど。
「…………」
ガリガリの手足に、絆創膏がいくつも貼ってある。
でも、傷の大きさには全然足りてなくて、青痣やかさぶたがあちこち覗いている。
裸足の足。血の染みだらけのヨレたワンピース。これだけ見たら、浮浪者のようだ。
なのに、こちらを見つめる目だけは妙に大きく、ぱっちりとしている。
睫毛も長いし、きっと頬に骨が浮いてさえいなければ美少女だろう。
……そう。わかりたくないけど、そうだとよくわかってしまうほどに。
「…………貴女、『私』なのね」
「うん」
かすれた少女の声で、〝 〟が頷いた。
名前を思い出すのも恐ろしい、地球での私。もう失われた私。
泣きたくなるほど酷い姿だけど、その顔は間違いなく、『アンジェラ・ローズヴェルト』と瓜二つだった。
「……神様は、顔が似ているから私を選んだのかしら?」
「さあ?」
「こんな美少女に酷いことをする輩もいるのね」
「顔がきれいだったから、傷つけたかったみたいよ」
「何それ嫌な話」
「本当にね。嫌な話」
姿はボロボロなのに、〝 〟は私と同じ調子で言葉を返してくる。
聖女と話している時とは、また違う感覚。聖女は姿は同じでも他人だったけど、この子は私だもの。
……そう考えると、ある意味独り言なのかしらね、これ。
「…………ねえ、回復魔法使おうか?」
「ううん、いらない」
かつては持ってなかった力を提案したけど、〝 〟はゆるく首を横にふった。
私がサポート特化のアンジェラになったのは、この子の傷を癒すためなのかもしれないのに。
「いらないの? どうして?」
「だってこれは、過去の傷だもの。もうどこにも残っていない傷」
「今の私は、怪我なんてしていないでしょう?」
瞬いた時にはもう、傷だらけの少女はいなかった。
真っ白で上も下もわからない空間。
私の目の前にあったのは――――大きな姿見だった。
「……なんだ。本当に独り言だったのね」
鏡の中の少女には、どこにも傷などない。
亜麻色の長い髪と青い瞳。モヤシのような華奢な体には、けれど骨など浮かんでいない。
泣きそうな顔で、こちらに微笑んでいるだけだ。
[かわいそうな女の子は、幸せになれそうかな?]
ふと横をみれば、白いモヤのような何かが私に話しかけている。
女性とも男性とも言い難く、感情の乗っていないただ穏やかな声。
「なりますとも。最高のハッピーエンドルートを選んできましたからね!」
[それはよかった]
グッと親指を立てて答えれば、モヤモヤはどこか嬉しそうに輝いた。
この姿だと威厳もへったくれもないけど、この神様らしいといえばそうなのかもね。
「それで、神様は過去の私を救いたかったんですか?」
[わたしが救うというのは語弊があるね。君を救ったのは君であり、あの幼馴染であり、仲間たちだ。わたしは何もしていないよ]
「……そうですか?」
[そうだとも。わたしはただ、〝 〟の笑顔が見たかっただけだよ]
「私……というか、アンジェラと同じ顔じゃないですか」
[それでも。〝 〟まで救われて、ようやく完全なハッピーエンドだろう? ああ、本当によかった。君にお願いして大正解だったね]
モヤモヤは光り輝きながら、真っ白な空間でくるくると踊り始める。
……そっか。この戦いは、世界を魔物の危機から救う旅であり、偽者の私を救うための旅でもあったのか。
私は骨の浮いていないちゃんとした体を手に入れたし、もらえなかった愛を知ることもできた。
愛される温かさも……愛するという気恥ずかしさも。
「完全勝利じゃない」
[そうだよ。素晴らしいよ! こんなに素敵な終わり方を示してくれるなんて、ヒトはやっぱりすごいね!]
神様は現れてからずっと興奮気味で、顔はないけど子どものようにはしゃいでいる。
てっきり、【無垢なる王】を殺してリセットするという命令に背いたことを怒られると思っていたんだけど、意外と柔軟なひとなのね。
[その結果が酷いものだったら、わたしも怒ったよ? だけど、君が示してくれた道のほうが、皆が幸せになれるようだからね。だったら、彼はあのままでいいよ。もしも本当におかしくなってしまったら、それはまた考えよう]
「相変わらず勝手に人の考えを読みますね」
[神様だからね]
便利な言葉ね、神様って。
まあ、それだけのことができる存在と『聖女』は繋がっているのだから、こっちもまたすごい気がするけど。
[ああ、そうだ。素敵な結末を見せてくれた君だから、特別にご褒美をあげるよ。さすがにこれ以上の加護はあげられないけど……何か頼みはあるかい?]
「頼み……あっ! あります!!」
うっかり呆れてしまっていたけど、頼みごとと言われれば話は別だ。
今神様に願うことは、もちろん一つだけ。
最後の戦いで、私の無茶に彼を巻き込んでしまったから。
「私が攻撃の魔法で代償として払った命、どうかジュードの分は免除してもらえませんか? その分は、私から徴収してもらって構いませんので!」
ぎゅっと手を組んで願えば、踊っていたモヤモヤがピタッと止まった。
――戦い終わった後でジュードが倒れてしまったのは、多分そのせいなのだ。
これは宿に戻ってから、お医者さんとカールが検分した結果なのだけど。
あの魔法を使っている間、代償は体に通っている『魔力回路』から吸収されていたのだそうだ。魔力回路とは、亀裂のように浮かび上がっていた赤い線のことで、内臓とは別に体の中に通っているものらしい。
魔術師や私のような魔法が使える人間は、日常的に魔力を循環させているから何ともないのだけど。ジュードは全く素養のない人間なので、今までそれを使ったことがなかった。
そこへ突然『命を削る』なんてハードな負荷をかけてしまったため、回路はほとんど燃えつき、ジュード本人も倒れてしまったのだ。
いつも通りに戦ってくれたけど、実際にはかなりの痛みを耐えていたはず……と聞いている。
「約束を破って貴方の民を傷付けるような魔法を使ったのは、私です。ジュードは全然関係ないんです!」
[まあ、そうだね。彼が熱心に頼むから聞いてしまったけど、君の魔法に彼は関係ないね]
「ですよねっ!? お願いします!! ジュードからは奪わないで下さい!!」
神様も同意してくれたので、もう一押しとばかりに頭を下げる。
ただでさえ怪我もしていたのに、魔力的な負荷を受けて命を削るなんて絶対に嫌だ。
私はジュードを傷付けたくて魔法を使ったわけじゃないのだから。
[……わたしは構わないけど、きっと彼が知ったら怒るよ? あの場で宣言した通り、彼は君がいない世界なんて望んでいないだろうからね]
「それでも、です。ジュードがいるから、彼が『彼のためのアンジェラ』だと求めてくれたから、偽者の私は戦えたんです。お願いします、神様!」
通じるかわからないけど、ダメ押しで土下座もしておくべきかしら。
そんなことでジュードが助かるのなら、いくらでも――……
[まあ、そうは言っても消費された命は、寿命二時間分だけどね]
「……は?」
大真面目に考えていた私の頭から、色んなものがスポーンと転げ落ちた気がした。
「……え? あの、二時間? 私、神様との約束を破ったんですよ? 聖女なのに」
[うん。だから、君たちが【無垢なる王】と戦っていた時間分の寿命を、代償としてもらったよ。……もっと負けたほうがいい?]
「い、いえいえいえいえいえ!!」
あまりにも予想外の返答に、私は全力で首を横にふった。
……二時間。あれだけ散々格好つけて、魔法もガンガン使っておいて、
たった二時間、だったのか。
「あ、甘すぎませんか、神様」
[甘いよ。本当はもっと沢山奪ってもいいのだけど、君たちは素晴らしい道を見せてくれたし、〝 〟を幸せにしたかったからね]
止まっていた神様は再びくるりと空中で踊った。
……ああ、なんだ。たった二時間だけなのか。頼みごとを神様が聞いてくれたなら、私はジュードを置いて死ぬ覚悟もあったのに。
「よかった……ほんとに、よかった」
[君たちが頑張ったからだよ。うんうん、素晴らしいハッピーエンドだね]
じわりとにじんだ視界はあっという間に崩壊して、涙をボロボロとこぼしていく。
本当に、本当に、これ以上ない結末だ。私はこんなに幸せな結末を迎えて大丈夫なのかしら。
偽者のアンジェラなのに。
[もちろん構わないさ。この世界はこうして、頑張った人が報われる形であって欲しいからね]
キラキラ、ふわふわと。真っ白な世界に光が満ちていく。
元からあやふやだった神様の輪郭などは、あっという間に溶けて見えなくなってしまった。
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