6 / 10
《見たくない温かさ》
しおりを挟む
海月が次の客を呼んだ際に現れたのは、渋々といった様子の強面だが端正な顔立ちをした父親に天真爛漫だが幼い女児を連れた姿であった。……海月は少々険しい顔をしてしまう。
海月は占いの才能があるので仕方なくやっているのだが、本来は人間相手をしたくないのだ。特に幼い子供の相手などもってのほかだ。苦手中の苦手である。
父親の方が占いをしたいのかなんて思ったが、元気そうに座った幼い少女が放った。
「占いしてっ!」
まるで太陽の笑みを浮かべて告げる幼女の姿に、こいつがかいなどと思ったが、海月は上っ面のぎこちない笑みを浮かべる。
「なにを占って欲しいですか?」
「えっとね~、私のオムコさんが誰か占って欲しいなぁ!」
「は、……はい?」
見た目は小学一年生くらいの子であるのだが、まさかの婿決めとは思わずに海月は愕然としている。
「無理なら詐欺だって訴えるぜ」
父親が自分の娘を傷つけさせぬまいという思いで海月に食ってかかる。そして嫌な笑みを零しているではないか。
父親の薄汚れた服装を見て海月は少し観察をする。それから頷き、机に並べたトランプをシャッフルした。
「詐欺だと思うのなら、この子は無料で見て差し上げましょう」そしてさらに混ぜていく。
「さすがにこんな小さな子の婿決めはほぼ不可能です。十年以上の未来が見られるほど占いの技術が俺にはないので、少し未来のことで予測させて頂きます」
「ほぉ~。さすがに美波の婿決めはまだ早いよな、兄さん?」
「そうですね。多分あなたがたが大人数でなにかの事業を遂げているから、娘さんがしっかりされているのでしょうね」
海月がカードをトランプで切りながら五枚のカードを美波に向けた。父親は先ほどの言葉で不意を突かれたようだ。
「なるほど。いろんな方から好意を寄せられていますね。ですがもう少し先の未来で運命の出会いを果たしますね」
「なんだとっ!?? どんな奴だ!」
「ハートの女王が出ているということは娘さんが一目惚れをした可能性が高いですね。……でも、運命の出会いが出るのが早すぎますね。少し心配ですから、また来て見て下さい」
「……その時、金は払うだろう?」
「だったら来なくていいです」
渋るような父親の声に反して冷たく放つ海月ではあるが娘の美波は笑顔で海月にく笑いかけた。それから手を握られてしまう。
「また占って欲しい! お兄ちゃんに占って欲しい!」
苦手な幼い子供相手に強請られると海月の顔が引きつってしまった。だがそんな海月など見向きもしないでいきなり父親が机を強く叩いたのだ。ドンッという音が響き海月は父親を見る。父親は身体をわななかせていた。
「……じゃあ証拠を見せてみろ」なんと挑戦状を叩きつけてきた。それから父親はお品書きに書いてある水面占いを指さした。
「この的中率が高いって書いてある奴やってみろ。千円なら出せる。千円分の占いで当たれば美波の占いに行ってやる」
なんとケチで傲慢な父親なのだろうかと思うが構わずに海月は千円を受け取って水面占いを行おうとする。睡蓮の水瓶に聖水を注ぎ込み、砕いた水晶を入れる前に「占って欲しいことはなんですか?」尋ねれば父親は太い息を吐いて「……家族のこと」そう答えたのだ。
海月は砕いた水晶を入れて心中で「この方のご家族について知りたい」そう願う。
すると現れたのはツリ目の青年とタレ目の青年が誰かと争っている姿であった。
同じ背丈くらいで父親と同じく端正な顔立ちだ。茶髪でおちゃらけていそうなツリ目の青年と黒髪で優しそうな青年が誰かに絡まれている姿が見える。
水面に映し出された事実を父親に告げれば盛大な息を吐いていた。「あの馬鹿双子か……」父親は頭を掻き疲弊の息をさらに吐き出す。
すると美波が心配するように父親の加減を伺うのだ。どうやら思い当たる節があるらしい。
「お父さん平気~?」不安げに尋ねれば父親が美波の頭をくしゃりと撫でて微笑んだ。
海月はあまり見たくない光景であった。自分はモグラ以外に実の親にされたことはない。モグラは実の親ではない――
だが平静を装わねば。
「じゃあ千円分の占いを致しましたので、またなにかありましたらこの店に来てください」
「あぁ……。一応、肝に銘じておくよ」
名刺を渡し親子が去る頃には海月の心が痛かった。だが娘の美波が振り返る。そして花のように笑う。
「バイバイっ! お兄ちゃん!」
笑みを零している姿にはどうしてだがぽっかり空いた心が塞がったような気持ちになった。
海月は占いの才能があるので仕方なくやっているのだが、本来は人間相手をしたくないのだ。特に幼い子供の相手などもってのほかだ。苦手中の苦手である。
父親の方が占いをしたいのかなんて思ったが、元気そうに座った幼い少女が放った。
「占いしてっ!」
まるで太陽の笑みを浮かべて告げる幼女の姿に、こいつがかいなどと思ったが、海月は上っ面のぎこちない笑みを浮かべる。
「なにを占って欲しいですか?」
「えっとね~、私のオムコさんが誰か占って欲しいなぁ!」
「は、……はい?」
見た目は小学一年生くらいの子であるのだが、まさかの婿決めとは思わずに海月は愕然としている。
「無理なら詐欺だって訴えるぜ」
父親が自分の娘を傷つけさせぬまいという思いで海月に食ってかかる。そして嫌な笑みを零しているではないか。
父親の薄汚れた服装を見て海月は少し観察をする。それから頷き、机に並べたトランプをシャッフルした。
「詐欺だと思うのなら、この子は無料で見て差し上げましょう」そしてさらに混ぜていく。
「さすがにこんな小さな子の婿決めはほぼ不可能です。十年以上の未来が見られるほど占いの技術が俺にはないので、少し未来のことで予測させて頂きます」
「ほぉ~。さすがに美波の婿決めはまだ早いよな、兄さん?」
「そうですね。多分あなたがたが大人数でなにかの事業を遂げているから、娘さんがしっかりされているのでしょうね」
海月がカードをトランプで切りながら五枚のカードを美波に向けた。父親は先ほどの言葉で不意を突かれたようだ。
「なるほど。いろんな方から好意を寄せられていますね。ですがもう少し先の未来で運命の出会いを果たしますね」
「なんだとっ!?? どんな奴だ!」
「ハートの女王が出ているということは娘さんが一目惚れをした可能性が高いですね。……でも、運命の出会いが出るのが早すぎますね。少し心配ですから、また来て見て下さい」
「……その時、金は払うだろう?」
「だったら来なくていいです」
渋るような父親の声に反して冷たく放つ海月ではあるが娘の美波は笑顔で海月にく笑いかけた。それから手を握られてしまう。
「また占って欲しい! お兄ちゃんに占って欲しい!」
苦手な幼い子供相手に強請られると海月の顔が引きつってしまった。だがそんな海月など見向きもしないでいきなり父親が机を強く叩いたのだ。ドンッという音が響き海月は父親を見る。父親は身体をわななかせていた。
「……じゃあ証拠を見せてみろ」なんと挑戦状を叩きつけてきた。それから父親はお品書きに書いてある水面占いを指さした。
「この的中率が高いって書いてある奴やってみろ。千円なら出せる。千円分の占いで当たれば美波の占いに行ってやる」
なんとケチで傲慢な父親なのだろうかと思うが構わずに海月は千円を受け取って水面占いを行おうとする。睡蓮の水瓶に聖水を注ぎ込み、砕いた水晶を入れる前に「占って欲しいことはなんですか?」尋ねれば父親は太い息を吐いて「……家族のこと」そう答えたのだ。
海月は砕いた水晶を入れて心中で「この方のご家族について知りたい」そう願う。
すると現れたのはツリ目の青年とタレ目の青年が誰かと争っている姿であった。
同じ背丈くらいで父親と同じく端正な顔立ちだ。茶髪でおちゃらけていそうなツリ目の青年と黒髪で優しそうな青年が誰かに絡まれている姿が見える。
水面に映し出された事実を父親に告げれば盛大な息を吐いていた。「あの馬鹿双子か……」父親は頭を掻き疲弊の息をさらに吐き出す。
すると美波が心配するように父親の加減を伺うのだ。どうやら思い当たる節があるらしい。
「お父さん平気~?」不安げに尋ねれば父親が美波の頭をくしゃりと撫でて微笑んだ。
海月はあまり見たくない光景であった。自分はモグラ以外に実の親にされたことはない。モグラは実の親ではない――
だが平静を装わねば。
「じゃあ千円分の占いを致しましたので、またなにかありましたらこの店に来てください」
「あぁ……。一応、肝に銘じておくよ」
名刺を渡し親子が去る頃には海月の心が痛かった。だが娘の美波が振り返る。そして花のように笑う。
「バイバイっ! お兄ちゃん!」
笑みを零している姿にはどうしてだがぽっかり空いた心が塞がったような気持ちになった。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。
ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。
学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。
当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。
同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。
ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。
そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。
まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。
その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。
こうしてジュリーとの同居が決まった。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる