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《被疑者宅に》
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仁田たちにはあえて知らせず、この前のスーツを着たモグラと同じくスーツを着た海月は被疑者宅に赴いた。
海月はスーツが着慣れていないので堅苦しさを感じさせた。しかも弁護に立ち会うというのも初めてであったので緊張気味である。
モグラは手土産に有名店のカステラを持っていきチャイムを鳴らした。被疑者宅には弁護士も自分たちが立ち会うのは知っている。
出てきたのは太った女性であったが、端正な顔立ちをしたモグラが深々と頭を下げればすぐさま入れてくれた。しかも美青年の部類に入る海月にも興味を示し、床の間に入れさせてくれて茶を勧めてくれたのだ。
(絶対この人、顔で見てるよな……)
そう思いながら海月は奥の間を見ると、火の鳥のようなものを祀っているのが見えた。多分、火の神かもしれない。その火の神は大きな鳥のようだが轟々として真っ赤に燃え上がっていて、厳かでいつも怒っていそうな神であった。――そこに人が現れた。
「あなたですね。仁田という息子が被害者の福原さんの息子さんに怪我をさせたというので弁護に預かったという人物は?」
床の間で茶を啜っていると現れたのはインテリな眼鏡を掛けた男性の姿であった。恐らく弁護士であろう。
ちなみに息子は謹慎中であるにも関わらず会っていない。先ほどの女性……母親がはぐらかしていたが、謹慎中であるにも関わらず遊びに行っているなどというような言葉を弁護士に向けて謝罪をしていた。……いわゆるバカ息子であった。モグラはにこりと笑んだ。
「まぁまぁそんなことも言わずに、カステラどうです? 結構美味しいんですよ、このカステラ。一番評判が良いのを買いました」
「……馬鹿馬鹿しい。カステラで事を済まそうとしているのですか?」
それでもモグラが余裕綽々で切ってもらったカステラを口に運び、茶を啜っている。弁護士がカチンと来たようだ。
「あなたの弁護している方々には恐喝罪と暴行罪が出ているんですよ。なにを悠長な」
「それはお宅の被害者……いや、被疑者だって同じでしょ? 先に喧嘩を売ったのはあなたが弁護する息子さんだと聞いていますし、圧のある恐喝も見受けられましたね。俺は仁田さんのご家族とはある約束をしているので、引くことができません。なのでお互いの平和を願って互いに謝罪すべきだと俺は思います」
弁護士がフレーム眼鏡を上げた。それから海月を見て口元を歪めた。――海月に戦慄が走る。
「……少し表に出てくれませんか? そこの青年と一緒に、ね」
舐めるような視線を向けられ海月は心臓を掴まれた気持ちになったが、モグラと一緒に外へと出た。母親は不安げな顔をしていたがモグラの営業スマイルをかました。「席を外しますが心配しないでくださいね」などと言ってしまえば母親はもう既に、――ノックアウトであった。
恐らくモグラの爽やかで甘い顔立ちがタイプなのだろうなと海月は踏んだ。それから二人はインテリ眼鏡に従って表に出たのだ。
海月はスーツが着慣れていないので堅苦しさを感じさせた。しかも弁護に立ち会うというのも初めてであったので緊張気味である。
モグラは手土産に有名店のカステラを持っていきチャイムを鳴らした。被疑者宅には弁護士も自分たちが立ち会うのは知っている。
出てきたのは太った女性であったが、端正な顔立ちをしたモグラが深々と頭を下げればすぐさま入れてくれた。しかも美青年の部類に入る海月にも興味を示し、床の間に入れさせてくれて茶を勧めてくれたのだ。
(絶対この人、顔で見てるよな……)
そう思いながら海月は奥の間を見ると、火の鳥のようなものを祀っているのが見えた。多分、火の神かもしれない。その火の神は大きな鳥のようだが轟々として真っ赤に燃え上がっていて、厳かでいつも怒っていそうな神であった。――そこに人が現れた。
「あなたですね。仁田という息子が被害者の福原さんの息子さんに怪我をさせたというので弁護に預かったという人物は?」
床の間で茶を啜っていると現れたのはインテリな眼鏡を掛けた男性の姿であった。恐らく弁護士であろう。
ちなみに息子は謹慎中であるにも関わらず会っていない。先ほどの女性……母親がはぐらかしていたが、謹慎中であるにも関わらず遊びに行っているなどというような言葉を弁護士に向けて謝罪をしていた。……いわゆるバカ息子であった。モグラはにこりと笑んだ。
「まぁまぁそんなことも言わずに、カステラどうです? 結構美味しいんですよ、このカステラ。一番評判が良いのを買いました」
「……馬鹿馬鹿しい。カステラで事を済まそうとしているのですか?」
それでもモグラが余裕綽々で切ってもらったカステラを口に運び、茶を啜っている。弁護士がカチンと来たようだ。
「あなたの弁護している方々には恐喝罪と暴行罪が出ているんですよ。なにを悠長な」
「それはお宅の被害者……いや、被疑者だって同じでしょ? 先に喧嘩を売ったのはあなたが弁護する息子さんだと聞いていますし、圧のある恐喝も見受けられましたね。俺は仁田さんのご家族とはある約束をしているので、引くことができません。なのでお互いの平和を願って互いに謝罪すべきだと俺は思います」
弁護士がフレーム眼鏡を上げた。それから海月を見て口元を歪めた。――海月に戦慄が走る。
「……少し表に出てくれませんか? そこの青年と一緒に、ね」
舐めるような視線を向けられ海月は心臓を掴まれた気持ちになったが、モグラと一緒に外へと出た。母親は不安げな顔をしていたがモグラの営業スマイルをかました。「席を外しますが心配しないでくださいね」などと言ってしまえば母親はもう既に、――ノックアウトであった。
恐らくモグラの爽やかで甘い顔立ちがタイプなのだろうなと海月は踏んだ。それから二人はインテリ眼鏡に従って表に出たのだ。
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