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《火の鳥の隷属》
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表へ出たモグラと海月であったがフレーム眼鏡を掛けた弁護士が眼鏡を上げた。そして海月を見てからモグラを見やる。モグラには軽蔑するような視線を向けていた。
「そちら側が謝罪をしてくれませんかね? こちらは火の神を敬っている家庭を重んじていますから株を上げたいんですよ。……バカ息子もおだててしまえば、火の神様の供物に捧げられますしね」
まるでどこか企んでいるかのような瞳に海月は唾を飲んだが、モグラは負けない。モグラは余裕そうな笑みを見せた。
「そんなの言われてもねぇ。――ねぇ、海月?」
「まぁ、そうですよね……」
急に話を振られて困惑する海月ではあるが男はふっと微かに笑んだ。
「君みたいな神もどきに、海の供物などふさわしくない」
モグラは静かになったかと思えば口端を綻ばせた。それから男に対し嘲るような口調で話す。
「ふ~ん。口ぶり的に俺のこと、知っているみたいだね。……じゃあ狙いは海月か」
「まぁそういうことになりますね。火の神様以外にも神々の方々が海の供物はまだなのかと言っていますよ。――相当、絶品に育っているようだと」
弁護士はひらりと翻せば瞬く間に大きな鳥となった。禍々しい炎を体内に宿し海の供物である海月に向かって大きな鳥は突進してくる。海月は己の身体に衝撃が走りそうな感覚を得た。――それは、食われる恐怖だ。
モグラが海月の前に立つ。そして水の泡沫に浮かべた土を張り巡らさせた。
「土よ水よ、……我の力を示せっっ!!!」
そう示したモグラが土の壁を火の鳥に向けて放つ。土のシールドだ。……だが火の鳥はその土を焼き尽くしてしまった。火の鳥は嘲るが、――モグラは動じない。
「ふははははっ! 海を統べると言われたモグラも大したことがないな! これであれば、わざわざ火の神……いや、火の鳥様が出る幕もあるまい」
「……余裕な口ぶりの弁護士は嫌われるよ」
真剣な表情を浮かべたモグラは海月をわざと引き寄せた。海月は驚く。だが、モグラは軽く片目を閉じた。――次の術を放つ。
「土よ、……我に道を示せ!」
すると地面に見事な穴が空いたかと思えば、どこまでも続くトンネルとなる。そのトンネルのようなものに、二人は落ちて行った。
「うわぁっっっっーーーー!!??」
海月はわけがわからず土の中へ滑り込んでしまう。どうしてだが汚れないのが不思議である。
「ど、どういうことですかっ、モグラさんっ!」
問いかける海月にモグラはどこまでも続くトンネルを掘り進めながら、発した。「火は土にとって相性が最悪なんだよ」その言葉に海月はこの永遠に続くトンネルが絶望への入り口ではないかと顧みた。まるで海の底に沈められたような思いだ。
しかし、モグラは振り返り、拭い去る。永遠などないかのように。
「――だから不意打ちをする」
「えっ!?」
一筋の光が見えたかと思ったら、モグラは火の鳥の背後に来ていた。海月を傍らに担ぎながら、モグラは土と水を併せ持った大きく振りかぶって回し蹴りをお見舞いする。
ドゴンッッッ! などと音がして火の鳥が唸りだした。するとモグラは左足を軸にして立つ。そして放つ。
「水よ、……我に示せっ!」
その声と共に右足から唸る竜のような水を噴出させた。そこから不意打ちを狙って先ほどの攻撃を受けて弱っている火の鳥に向けて放ったのだ。
唸る水の竜は回転し、火の鳥へ浴びせていく。まるで相手の急所を撃ち抜くような鋭い回転率だ。
「うがぁぁぁっっ、あぁっっっぁっ……――――!!!!」
燃え盛っていた火の鳥は次第に火力が弱まり、火の鳥は赤いインコとなってしまった。小さな眼鏡にスーツを着ている珍妙だが可愛らしいインコに海月は唖然としてしまう。だがモグラはわかっているようにインコの足を持って釣り上げて、意地悪く笑った。
「火の神……いや、本来の火の鳥に伝えろ。海月に用事があるのなら、俺に直々に来いって。――隷属に頼るくらいのひよっている神に海月は渡さねぇってよっ!」
インコを宙ぶらりんにしてから手を離す。「ギィヤァー!!!」なんて珍妙に鳴いて赤いインコは空を羽ばたいていしまった。
海月はその様子を見てどうしてだが心が安堵してしまった。別に食べられても良いと思っていたこの命なのに。しかし、涙など出ない。ただ、ひたすらに呆然と見やる。
「飛んじゃった……」
羽ばたくインコに海月がモグラに抱えられた状態で海月が放心すれば、モグラが地面に下ろしてくれた。モグラがこんなに怪力だとは思いもしなかった。
モグラは安心させるように笑んだ。海月の本当の心を見透かすように。
「さて。火のインコも去ったし、あの奥さんには適当な理由を付けて俺たちが勝ったってことにしよう」
「えっ、それで大丈夫なんですか?」
「だって仁田さんの双子はきちんと謹慎処分受けて謹慎しているのに、向こうはカツアゲして暴力したくせに謹慎中にも関わらずに遊び惚けているのはおかしいじゃん。そこらへんで遊んでいるだろうから、写真でも撮って見せちゃえば示談には持ち込めなくても謝罪で済むでしょうよ」
悪戯に微笑んだモグラは家に居る被疑者の母親に探りを入れて息子の居場所を突き留め、ゲームセンターでたむろっている息子の写真をちゃっかり撮影して提示をした。
「あなたの息子さんは反省の色がまっったく、見えていないようですよねぇ?」
焦心している様子の被疑者の息子と母親、そして父親ににっこりとモグラが写真を提示して伺う。特に父親は焦った様子だ。
「こ、これは……その……、あの――」
「向こうのお子さんは、きちんと、きちんと謹慎処分をしているというのに……。これだと分が悪いですよねぇ?」
にこやかだが詰め寄るような探りを入れるモグラに海月は絶対にこの人は敵に回したくないとふと考える。それから数日が経ち――
「うちの息子がっ、たいへんっ、申し訳ありませんでしたっ!」
「どうか、訴訟にするのは……! きちんと反省させますので!」
「……すんませーん」
被疑者家族は手土産を持って仁田の家族へ謝罪をしたのだ。それに関して仁田たち家族はさぞ驚愕したという。
「そちら側が謝罪をしてくれませんかね? こちらは火の神を敬っている家庭を重んじていますから株を上げたいんですよ。……バカ息子もおだててしまえば、火の神様の供物に捧げられますしね」
まるでどこか企んでいるかのような瞳に海月は唾を飲んだが、モグラは負けない。モグラは余裕そうな笑みを見せた。
「そんなの言われてもねぇ。――ねぇ、海月?」
「まぁ、そうですよね……」
急に話を振られて困惑する海月ではあるが男はふっと微かに笑んだ。
「君みたいな神もどきに、海の供物などふさわしくない」
モグラは静かになったかと思えば口端を綻ばせた。それから男に対し嘲るような口調で話す。
「ふ~ん。口ぶり的に俺のこと、知っているみたいだね。……じゃあ狙いは海月か」
「まぁそういうことになりますね。火の神様以外にも神々の方々が海の供物はまだなのかと言っていますよ。――相当、絶品に育っているようだと」
弁護士はひらりと翻せば瞬く間に大きな鳥となった。禍々しい炎を体内に宿し海の供物である海月に向かって大きな鳥は突進してくる。海月は己の身体に衝撃が走りそうな感覚を得た。――それは、食われる恐怖だ。
モグラが海月の前に立つ。そして水の泡沫に浮かべた土を張り巡らさせた。
「土よ水よ、……我の力を示せっっ!!!」
そう示したモグラが土の壁を火の鳥に向けて放つ。土のシールドだ。……だが火の鳥はその土を焼き尽くしてしまった。火の鳥は嘲るが、――モグラは動じない。
「ふははははっ! 海を統べると言われたモグラも大したことがないな! これであれば、わざわざ火の神……いや、火の鳥様が出る幕もあるまい」
「……余裕な口ぶりの弁護士は嫌われるよ」
真剣な表情を浮かべたモグラは海月をわざと引き寄せた。海月は驚く。だが、モグラは軽く片目を閉じた。――次の術を放つ。
「土よ、……我に道を示せ!」
すると地面に見事な穴が空いたかと思えば、どこまでも続くトンネルとなる。そのトンネルのようなものに、二人は落ちて行った。
「うわぁっっっっーーーー!!??」
海月はわけがわからず土の中へ滑り込んでしまう。どうしてだが汚れないのが不思議である。
「ど、どういうことですかっ、モグラさんっ!」
問いかける海月にモグラはどこまでも続くトンネルを掘り進めながら、発した。「火は土にとって相性が最悪なんだよ」その言葉に海月はこの永遠に続くトンネルが絶望への入り口ではないかと顧みた。まるで海の底に沈められたような思いだ。
しかし、モグラは振り返り、拭い去る。永遠などないかのように。
「――だから不意打ちをする」
「えっ!?」
一筋の光が見えたかと思ったら、モグラは火の鳥の背後に来ていた。海月を傍らに担ぎながら、モグラは土と水を併せ持った大きく振りかぶって回し蹴りをお見舞いする。
ドゴンッッッ! などと音がして火の鳥が唸りだした。するとモグラは左足を軸にして立つ。そして放つ。
「水よ、……我に示せっ!」
その声と共に右足から唸る竜のような水を噴出させた。そこから不意打ちを狙って先ほどの攻撃を受けて弱っている火の鳥に向けて放ったのだ。
唸る水の竜は回転し、火の鳥へ浴びせていく。まるで相手の急所を撃ち抜くような鋭い回転率だ。
「うがぁぁぁっっ、あぁっっっぁっ……――――!!!!」
燃え盛っていた火の鳥は次第に火力が弱まり、火の鳥は赤いインコとなってしまった。小さな眼鏡にスーツを着ている珍妙だが可愛らしいインコに海月は唖然としてしまう。だがモグラはわかっているようにインコの足を持って釣り上げて、意地悪く笑った。
「火の神……いや、本来の火の鳥に伝えろ。海月に用事があるのなら、俺に直々に来いって。――隷属に頼るくらいのひよっている神に海月は渡さねぇってよっ!」
インコを宙ぶらりんにしてから手を離す。「ギィヤァー!!!」なんて珍妙に鳴いて赤いインコは空を羽ばたいていしまった。
海月はその様子を見てどうしてだが心が安堵してしまった。別に食べられても良いと思っていたこの命なのに。しかし、涙など出ない。ただ、ひたすらに呆然と見やる。
「飛んじゃった……」
羽ばたくインコに海月がモグラに抱えられた状態で海月が放心すれば、モグラが地面に下ろしてくれた。モグラがこんなに怪力だとは思いもしなかった。
モグラは安心させるように笑んだ。海月の本当の心を見透かすように。
「さて。火のインコも去ったし、あの奥さんには適当な理由を付けて俺たちが勝ったってことにしよう」
「えっ、それで大丈夫なんですか?」
「だって仁田さんの双子はきちんと謹慎処分受けて謹慎しているのに、向こうはカツアゲして暴力したくせに謹慎中にも関わらずに遊び惚けているのはおかしいじゃん。そこらへんで遊んでいるだろうから、写真でも撮って見せちゃえば示談には持ち込めなくても謝罪で済むでしょうよ」
悪戯に微笑んだモグラは家に居る被疑者の母親に探りを入れて息子の居場所を突き留め、ゲームセンターでたむろっている息子の写真をちゃっかり撮影して提示をした。
「あなたの息子さんは反省の色がまっったく、見えていないようですよねぇ?」
焦心している様子の被疑者の息子と母親、そして父親ににっこりとモグラが写真を提示して伺う。特に父親は焦った様子だ。
「こ、これは……その……、あの――」
「向こうのお子さんは、きちんと、きちんと謹慎処分をしているというのに……。これだと分が悪いですよねぇ?」
にこやかだが詰め寄るような探りを入れるモグラに海月は絶対にこの人は敵に回したくないとふと考える。それから数日が経ち――
「うちの息子がっ、たいへんっ、申し訳ありませんでしたっ!」
「どうか、訴訟にするのは……! きちんと反省させますので!」
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