海のモグラ

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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《私のお婿さんっ!》

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 仁田宅へ着くと、出迎えてくれたのは一馬と新顔であった。精悍で野性的な黒髪の青年は父親の仁田によく似ており、次男の啓二だと紹介された。
「兄貴から聞いています。あの馬鹿双子がご迷惑をおかけしました……。父さんが張り切って仕込んでいたので、良かったら食べて行ってください!」
「おい啓二! 言わんでも良いこと言うな!」
「はいはい」
 顔を赤らめて男性用のエプロンを着ている仁田に啓二は微笑んだ。
 それから双子も現れてモグラへ礼を告げていた。被疑者からの謝罪もあったし、学校側もお咎めはなかったそうだ。
「それは良かったよぉ。三重くんも甲斐くんも良かったね。でもこれから気を付けてねっ」
「おうよ!」
「はい!」
 二卵性双生児でも同じタイミングでなおかつ元気良く返事をする姿に、モグラはどうしてだが高校生の二人の頭を撫でていたのだ。
 五男は中学生のがく。六男、七男は小学五年生と三年生の男子で六華りっか七貴ななきである。三人とも発展途上だが端正な顔立ちをしていた。――つまり美形家族である。
 そして長女で唯一の女子の美波は海月にくっついて離れなかった。海月は自分よりも年下の子供に好かれていたことに冷や汗を掻く。
 海月は自分よりも幼い子供が苦手であった。扱いがわからないのである。
 だが美波は海月に興味津々で将来は美少女になるだろう顔を輝かせていた。海月は戸惑いを抱く。どうすればいいのだろうか。すると美波は太陽のような笑顔を見せた。
「占いやって!」
「は……はい?」
 当惑し、モグラに助けを求めているが彼は海月の視線に気が付かない。モグラは仁田の息子たちと戯れていた。
(とりあえず、やっておくか……。よくわかんないけど)
 海月は疲弊の息を吐き出した。しかたなく商売道具のカードからトランプを取り出し、シャッフルをしてから机の上に置いて掻き混ぜた。海月は爛々とした美波の瞳を無視しつつも心中で問いかける。
 ――この子が出会う運命の相手はいつごろか。どのくらいの時期に現れるか。
 真剣な視線でカードを見つめる海月の姿に幼いながらも美波は見惚れた。海月のミステリアスな雰囲気は兄たちの誰よりも美しく、儚げで、そして、……悲しそうだと思った。
 カードを五枚取り出し一枚をめくれば、ハートのAであった。……運命の相手はすぐそこだと示されていた。
「えっっ――――!???」
 あまりにも早すぎる展開に海月は驚き、先のカードをめくろうと二枚目に手を添える。すると美波の小さな手が重なった。海月はぎこちなくその手の先を少しずつ見つめていく。そして静かに美波と視線が合わさる。すると幼女は大輪の花のような笑みを見せた。
「わたし、お兄ちゃんのオヨメさんになる!」
「えっ……?」
「だってお兄ちゃん、かっこいいのに悲しそうなんだもん。――美波が幸せにしてあげる!」
 にっこりと微笑んだ天使にたじろぐ海月と興味本位で見ていたモグラや兄たちが驚いて目を見張る。
「……海月が、かぁ――」
「父さんっ、美波がぁ~~!!!!」
 言葉を失いかけているモグラはともかく、兄たちは鼻歌を歌いながら天ぷらを作っている仁田へ報告していた。仁田はすぐさま可愛らしい天使に駆け寄る。
「美波!!! お前、一目惚れしたのか!???」
 火を切ってにこにこしている美波へ駆け寄った父親の姿に、海月の保護者であるモグラは仲睦まじそうに微笑んでいた。だが海月は冷や汗を掻いてどんな言い訳をしようかを考えていたのだ。
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