海のモグラ

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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《おもてなし》

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 美波の一目惚れ相手が変わり者の海月であったのにも驚愕と怒りが湧いて料理どころではなかったものの、仁田は渋々ながら調理を終えた。
 兄たちも半信半疑ではあるが、美波の一目惚れ相手の海月に興味を示したのは言うまでもない。
 人間嫌いの海月にとっては居場所の悪い空間にて仁田はテーブルに天ぷらや蕎麦、そしてあおさの味噌汁やブロッコリーのマヨネーズ和えなどたくさんの料理でもてなしてくれた。海月は人間のくせに人間のもてなしと言うのが掴めないでいる。
(……どうして俺を追い返さなかったんだろう。邪魔な存在なのに)
 モグラはともかく、自分を追い返せば良かったのにと内心感じていた。しかし目の前に出された料理に海月は首を捻る。自分たちが普段食している物とはかけ離れていたからだ。
「これ、なんですか……?」
 手を合わせる前にモグラへ尋ねた。モグラは親のように答えた。
「普通の家庭が食べる食卓の料理だよ。普段の俺たちの料理とは違うから戸惑うよね」
「はい。この丸いゴツゴツした物体とかなんですか? あと長細い棒とか……」
「……かき揚げにちくわ天なんだが」
 手を合わせて食していく仁田に海月も手を合わせてから恐々としてかき揚げを箸でつまんで口へ運んだ。まるで異質を食べる外国人のような反応である。
 だが、サクッとしていてジューシーでうまみのあるかき揚げに海月は目を見張っていた。「……美味しい」海月の口から勝手に零れていた。
 すると隣でくっついている美波もにっぱりと笑って「これも美味しいよ!」そう言ってぎこちない箸捌きで海老天を海月の口元へ寄せる。
 一瞬たじろいだが美波がぐいぐいと唇に押し付けるので仕方なく唇を開いた。
 プリっとしていてジューシーなうまみが広がる。特に尻尾に当たる部分は虫と類似していてかなり美味しい。
「あ、美味しいですね。それに、あっと……ありがとうございます」
「ううん! 美波は平気だよ」
 にこにこと微笑みながら海月に食べさせてあげている美波の姿を見て、父親と兄たちは呆然と見つめていた。そんな二人の様子を見てモグラは内緒話をするように仁田に話し掛ける。
「まぁ未来は変わると言うけれど、海月の婿は良いと思うよ。それは俺が保証してあげるよ」
 蕎麦を食し海老天を食べながら蕎麦湯を飲んでいるモグラはにっこりと笑っていた。仁田は少し驚いていたがそれから顔を和らげた。「まぁ、そのときが来たら……な」そう告げてブロッコリーのマヨネーズ和えを食べている。
「ほらっ、もっと食べてっ!」
「あ、はい」
 美波にぐいぐいと天ぷらを促されるまま食べ進めていく海月はかなり腹がいっぱいであった。
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