海のモグラ

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

文字の大きさ
19 / 49

《星に願う》

しおりを挟む
 満点の星空に目を躍らせながらモグラと共にバス停に向かっていた。空気が澄んでいて、しかも月も見え、星空も見えるなんて贅沢だなと海月は思いを巡らせる。そしてあることに気が付いた。
(……もしかしたら、モグラさんがこれを見せたかったから、……なんて)
 ふとのんびりと歩いているモグラを傍目に海月は内心で思いに耽った。
 仁田宅からバス停までは二十分ほどかかるが、バスは意外にもあるので育児で忙しい仁田に頼らずとも帰ることが可能なのだ。
 満点の星がまるでこちらにも飛び込んできそうだ。海月は吐息を漏らす。「また言っちゃいますけど奇麗ですね、星」
「本当に奇麗だよな~。さすがバスで一時間はかかるけれど、行ってよかったなって思うよ。……バスの交通量が多いのも、そうなのかな?」
「不便だから区民が訴えたんじゃないですか?」
「そうかもねぇ」
 間延びした様子で話し出す海月とモグラではあったが、ふとモグラがこちらを向いた。モグラの王子様のような顔立ちは、星空だときらめく星の王子さまのような雰囲気を醸し出される。……チャイナ服であるが。
「さっきの占い、どういう意味なんだろうね。三重くんと甲斐くんのこと」
「知りませんよ、そんなの。でも、なんかまたやらかすんじゃないですか? まぁ、俺のことに関わっているとは思いますけど……」
「だとしたら、油断大敵だな。海月、もう少し自分を大事にしろよ?」
 モグラのふとした言葉に海月は声を躊躇った。自分を大切にしろ――なんて、自分なんてと思ってしまう。自分のような人間は居なくていい。存在などしなくていいと思っているのに。
「……ありがとう、ござい、ます」
 でも、それでもこんなに心が温まるのはどうしてかを海月は自分の気持ちを把握できていない。心が灯ったような思いだというのに。
 海月は、満点の星空を見上げ心の中で祈る。目をぎゅっとつぶる。海月はこのとき、自分に本当の心が宿るようにと思ったのかもしれない。
 モグラは海月に手を伸ばした。「さぁ行こう」
「……はい」
 チャイナ服の王子に連れられて二人はバスに乗って帰ったとさ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

熱い風の果てへ

朝陽ゆりね
ライト文芸
沙良は母が遺した絵を求めてエジプトにやってきた。 カルナック神殿で一服中に池に落ちてしまう。 必死で泳いで這い上がるが、なんだか周囲の様子がおかしい。 そこで出会った青年は自らの名をラムセスと名乗る。 まさか―― そのまさかは的中する。 ここは第18王朝末期の古代エジプトだった。 ※本作はすでに販売終了した作品を改稿したものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます! 神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。 美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者! だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。 幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?! そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。 だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった! これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。 果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか? これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。 *** イラストは、全て自作です。 カクヨムにて、先行連載中。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...