海のモグラ

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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《火実のニワトリ譚》

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 モグラの命令で火実はニワトリの姿のまま占いの業務に励み、客寄せで付き合わせるようになった。
 すると三重と甲斐は連日のように火実に会う為に占いの館に来店するようになり、勝手に火実をモフっては触りまくっている。
 聞いたところによると、二人は動物好きで特に鳥類が好きらしい。ニワトリも学校で飼っているらしいので仲良く飼育員係としてなるぐらいだ。
 しかし双子だけではない。双子の話に興味を惹かれた美波も、父親に連れてもらって来店するようになったのだ。
「この……人間ども! 俺にやすやすと触れるんじゃない!!」
「嫌だぁ。俺、火実のこの可愛さにメロメロだもん」
「火実さん可愛いよね~! 火実さんは人間の姿よりこっちの方がいいよ」
「この……双子め!」
 三重と甲斐に撫でられ続け嫌な態度を取りつつもまんざらでもなさそうな火実ではあるが、美波の占いをしている海月に苦言を呈した。
「おい、海の供物! 俺を本来の姿に戻せ!」
 海月は首さえも向けずにカードを切っている。「いや、今は忙しいので無理ですし、モグラさんから人間に戻すなって言われているので無理です」
「なんだと、海の供物のくせして!」
「供物じゃなくて海月です。……言わないと一生ニワトリにさせますよ?」
 海月がカードを切りながらウキウキしている様子の美波を占う。婿決めに関しては相変わらずハートのAのままで現状維持というままだ。――つまり、海月が婿として決まる確率が高いとされている。
 海月はロリコンではない。さすがに小学一年生に欲情するほどの変態ではない。海月自身もまだ若い方ではあるが、さすがに同学年くらいの三重や甲斐などの方が良い。馬が合うのだ。
(あれ……馬が合う? 俺は、モグラさんだけが味方……だったのに)
 海月は自身を振り返る。今まで味方がモグラしか居なかった。だが今は美波や仁田や三重や甲斐といった人間が自分に関わってくる。
 自分はモグラさん以外一生人間などと触れ合うことなどないと思ったのに……なんとなくそう思っていれば、火実を撫で終えた双子は項垂れているモグラへ声を掛けに行った。双子の目を忍び、火実は海月に駆け寄る。美波の天真爛漫な瞳が輝いた。
「うわぁ~ニワトリさんだ~! コケコッコー!!!」
「おぉ……食ったらうまそうだな」
「人間ごときが俺を食うな、馬鹿者」
「お、しゃべった! すげぇっ!」
 仁田が驚いて火実をじっと見つめていれば、その視線を翻し鋭い瞳をしたニワトリはカードをしまい込む海月に向ける。
「くも……じゃなかった、海月よ。お前は供物として素質もあるし、生気を感じさせない。だから生きている意味がわからないのではないか?」
「あぁ、よくわかりましたね。さすがは神様だ」
「神? 海月、どういうことだ?」
 仁田が間に割り込んで茶を啜る。今日は冷たいウーロン茶を淹れた。最近は温暖化のせいか暑くて堪らない。火実は右翼を広げて海月に指し示す。
「貴様はなんの為に生きてきた? あの変人モグラが助けたから生きてきたのか? ……だから俺を支配下に置いて、生きているのか」
「……そうですね。俺は、自分がどうして生きているのか、それがわかりません」
 海月はウーロン茶を一口飲んだ。苦みのなかにほどよい甘さが広がった。だがキレもある。
「だったら供物として、俺じゃなくとも海の神に捧げれば良い。……人間は勝手だ。神が罰を与えたから供物として人間を捧げると約束をしたのだ。本来であれば、人間一人では足りないぐらいなのに」
「おいおい。どういうことだニワトリ? 三重や甲斐から聞いているけどよ、お前らは一体どういう存在だ?」
「俺は火の神で今は火実だ。まぁ良い。……神がどんな存在なのか、モグラが教えていないようだから教えてやろう」
 火実はその代わりなどと言って呑気に欠伸をしているモグラに視線を向けた。
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