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《盤上に立ちあがれっ!》
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降り立った少女は自信満々な様子で言い放った。モグラに勝ち目などないかのような余裕釈然とした態度を取っている。
「あたしは木風。木の神さまの右腕で隷属よ。……供物を渡したくなかったら、あたしと勝負して」
「ふ~ん。木の神の隷属にこ~んな可愛い子が居たとはね」
モグラの甘いルックスで爽やかな微笑みに、木風は顔を紅潮させてしまう。どうやらモグラの顔や容姿が好みのようだ。
「か、勘違いしないで! そんな安い言葉であたしを惑わすなんて百年早いわっ、このモグラの分際でっっ!!!」
「俺の動物フォルムは特別可愛いよ。見る?」
「そんな話はどうでもいいのよ!」
確かにどうでもいいなと敵に同情する海月に木風は目線を向けてきた。その戒めるような視線に海月はたじろいだ。
「そこの供物。……あんたはとんでもないことをしたわ。あの野性的で逞しくて筋肉質で……あんな神々しい神、火の神さまを自分の支配下に置くなんて!」
「おぉ娘。やっぱり俺は神々しいか」
「えっ、ニワトリが……喋った?」
「ニワトリじゃない。俺は火の神だ」
木風は呆気に取られてしまった。どういう反応をすれば良いのかわからない様子だ。近寄って、海月に抱かれているニワトリこと火実を凝視したかと思えば、なんと鼻で笑ったのだ。
「はっ、ニワトリが火の神さまなわけないじゃない。火の神さまはそんな滑稽な姿じゃないわ。ふざけないでよ」
火実は一声鳴いたかと思えば海月へ抗議する。「おい、海月! 俺を人間の姿にしろ! 今すぐに!」
「えー……。それはちょっと」
「火実を戻さなくていいよ。こんな隷属ごとき、俺が倒せるからさ。――火実に借りを作りたくないしね」
モグラが木風の挑戦を受けて立つことにした。その爽やかだがニヒルに微笑む姿に木風は頬を染めるものの「じゃあ、挑戦を受けてもらうわね」右ポケットに仕舞ってあるカードの束を手にした。モグラが目を見張った。
「それって、俺が開発したカードたち」
「そう。あなたが作って売ってある、”占い”もできるカードよ」
木風が不敵に微笑めばモグラは冷や汗を垂らした。それは海月もそうだ。モグラは占いがまったくもって的中しない。ここで占いの勝負をしようなんて言われら……。今度は海月が先導に立った。
「ちょっと待ってください。その勝負は俺が受けます」
「駄目よ。この勝負はそこに居る神もどきのモグラが受けるんだから。条件を変えることは許さない」
「そ、そんな……」
勝ち目がないじゃないかなどと思っている海月にモグラも同じ心情であろう。前に立っている海月の袖を引っ張って泣き出しそうな顔をしていた。それは木風にもわかったらしい。
「ふ~ん。あたしの勝負を受けたのが運の尽きのようね。まぁ、あたしは地区チャンピオンだもん。それに、あたしの力は隷属イチよ」
占いで隷属イチだなんて圧倒的に不利ではないかなどと思っている海月ではあるが、本当に泣き出しそうなモグラへ息を吐き海月は自身のカードを差し出した。モグラが本当に申し訳なさそうな顔をしているのを、勇気づけたかった。
「モグラさん。そんな顔しないでください。……やらない後悔より、やる後悔でしょ? 俺はやって後悔した方が供物として捧げられる前に、悔いがないですから」
「……うぅ。くらげぇ~」
「ほらほら、そんな顔しないで下さい。木風さんが待っていますよ」
「うん。……頑張る」
モグラの肩を叩いて自身の商売道具を託せば、海月は勝負に勝った顔をしている木風へ質問を投げかける。どんな占いかによってはモグラの戦況を変えられるアドバイスができると思ったからだ。だが木風はあどけない顔で首を横に傾げていた。
「占いってなんのこと? これで”対戦”するのよ」
「……対戦、ですか?」
「あなた、このカードの使い手なのに知らないの? このカードは占いでも使用できるけど、カードゲームとしても使えるの。全国大会でもあるぐらいよ?」
「…………モグラさん?」
するとモグラは思い出したように顔を見上げた。
「確かにこのカードを開発した時に、カードゲームも使えるよって言ったような……」
「え、あなた、このカードの開発者!??」
「うん。そのカードたちは俺が昔に作ったんだけど……。ふ~ん、全国大会まであったんだ~。俺、そのカードゲームからほとんど手を引いて部下に任せているからさ」
なんだ言ってくれても良いのになどとモグラはにやけた。今度はモグラが優位に立ったのだ。
モグラがこのゲームの創造主だ。どんな相手であっても負けることなどないというような自信に満ち溢れている。
しかし海月はモグラの多方面な顔にさらに驚愕した。弁護士の次は開発者だったとは。底がしれないなと思い至る。
「なっ、ず、ずるい! あんたがゲームの開発者なんて知らないわよ!」
「だって昔のことだし、今はお金に余裕あるしね~。俺、ミミズには固執するけれどお金には固執しないからさ」
「無益なのか馬鹿なのかわからないわよっ! ……ふんっ。だったら、特別ルールにしてあげる。――あたしが勝てるようなルールをね」
すると木風は海月たちに再び指さした。それから放つ。
「ルールの盤上に立ち上がれ!!」
その瞬間、海月たちは暗転したように地面に吸い込まれてしまう。皆は困惑した。
「な、なんですかこれっ!?」
「どういうことだ、モグラっ!?」
「俺だって知らないよぉっ!」
皆それぞれ混同している状態で地面の中へ吸収されていったのだ。
「う……ん……?」
海月が瞳を開ければ譜面のような盤上と目の前には艶やかな大きな蝶が居た。鮮やかな蝶は緑色と金色の縁が施されている。しかし、海月が一言。
「食べる場所、なさそうだな」
「お前は木の隷属に取り込まれたというのに呑気だな」
「火実さん。どうしてわかるんですか?」
火実を地面に置けば、呆然としているモグラに向けて蹴りを入れていた。「痛っ!」
横に倒れるモグラにニワトリの火実はふんぞり返って「馬鹿者」一声鳴いた。
「聞いたことがあるんだ。木の神の隷属で人間界に溶け込み、あらぬ方法で供物を捧げている隷属が一体居る……と。あの娘がもしかしたら、その隷属かもしれない」
火実は空間に取り込まれたことに対し、モグラへ鋭い視線を向けたのだ。
「あたしは木風。木の神さまの右腕で隷属よ。……供物を渡したくなかったら、あたしと勝負して」
「ふ~ん。木の神の隷属にこ~んな可愛い子が居たとはね」
モグラの甘いルックスで爽やかな微笑みに、木風は顔を紅潮させてしまう。どうやらモグラの顔や容姿が好みのようだ。
「か、勘違いしないで! そんな安い言葉であたしを惑わすなんて百年早いわっ、このモグラの分際でっっ!!!」
「俺の動物フォルムは特別可愛いよ。見る?」
「そんな話はどうでもいいのよ!」
確かにどうでもいいなと敵に同情する海月に木風は目線を向けてきた。その戒めるような視線に海月はたじろいだ。
「そこの供物。……あんたはとんでもないことをしたわ。あの野性的で逞しくて筋肉質で……あんな神々しい神、火の神さまを自分の支配下に置くなんて!」
「おぉ娘。やっぱり俺は神々しいか」
「えっ、ニワトリが……喋った?」
「ニワトリじゃない。俺は火の神だ」
木風は呆気に取られてしまった。どういう反応をすれば良いのかわからない様子だ。近寄って、海月に抱かれているニワトリこと火実を凝視したかと思えば、なんと鼻で笑ったのだ。
「はっ、ニワトリが火の神さまなわけないじゃない。火の神さまはそんな滑稽な姿じゃないわ。ふざけないでよ」
火実は一声鳴いたかと思えば海月へ抗議する。「おい、海月! 俺を人間の姿にしろ! 今すぐに!」
「えー……。それはちょっと」
「火実を戻さなくていいよ。こんな隷属ごとき、俺が倒せるからさ。――火実に借りを作りたくないしね」
モグラが木風の挑戦を受けて立つことにした。その爽やかだがニヒルに微笑む姿に木風は頬を染めるものの「じゃあ、挑戦を受けてもらうわね」右ポケットに仕舞ってあるカードの束を手にした。モグラが目を見張った。
「それって、俺が開発したカードたち」
「そう。あなたが作って売ってある、”占い”もできるカードよ」
木風が不敵に微笑めばモグラは冷や汗を垂らした。それは海月もそうだ。モグラは占いがまったくもって的中しない。ここで占いの勝負をしようなんて言われら……。今度は海月が先導に立った。
「ちょっと待ってください。その勝負は俺が受けます」
「駄目よ。この勝負はそこに居る神もどきのモグラが受けるんだから。条件を変えることは許さない」
「そ、そんな……」
勝ち目がないじゃないかなどと思っている海月にモグラも同じ心情であろう。前に立っている海月の袖を引っ張って泣き出しそうな顔をしていた。それは木風にもわかったらしい。
「ふ~ん。あたしの勝負を受けたのが運の尽きのようね。まぁ、あたしは地区チャンピオンだもん。それに、あたしの力は隷属イチよ」
占いで隷属イチだなんて圧倒的に不利ではないかなどと思っている海月ではあるが、本当に泣き出しそうなモグラへ息を吐き海月は自身のカードを差し出した。モグラが本当に申し訳なさそうな顔をしているのを、勇気づけたかった。
「モグラさん。そんな顔しないでください。……やらない後悔より、やる後悔でしょ? 俺はやって後悔した方が供物として捧げられる前に、悔いがないですから」
「……うぅ。くらげぇ~」
「ほらほら、そんな顔しないで下さい。木風さんが待っていますよ」
「うん。……頑張る」
モグラの肩を叩いて自身の商売道具を託せば、海月は勝負に勝った顔をしている木風へ質問を投げかける。どんな占いかによってはモグラの戦況を変えられるアドバイスができると思ったからだ。だが木風はあどけない顔で首を横に傾げていた。
「占いってなんのこと? これで”対戦”するのよ」
「……対戦、ですか?」
「あなた、このカードの使い手なのに知らないの? このカードは占いでも使用できるけど、カードゲームとしても使えるの。全国大会でもあるぐらいよ?」
「…………モグラさん?」
するとモグラは思い出したように顔を見上げた。
「確かにこのカードを開発した時に、カードゲームも使えるよって言ったような……」
「え、あなた、このカードの開発者!??」
「うん。そのカードたちは俺が昔に作ったんだけど……。ふ~ん、全国大会まであったんだ~。俺、そのカードゲームからほとんど手を引いて部下に任せているからさ」
なんだ言ってくれても良いのになどとモグラはにやけた。今度はモグラが優位に立ったのだ。
モグラがこのゲームの創造主だ。どんな相手であっても負けることなどないというような自信に満ち溢れている。
しかし海月はモグラの多方面な顔にさらに驚愕した。弁護士の次は開発者だったとは。底がしれないなと思い至る。
「なっ、ず、ずるい! あんたがゲームの開発者なんて知らないわよ!」
「だって昔のことだし、今はお金に余裕あるしね~。俺、ミミズには固執するけれどお金には固執しないからさ」
「無益なのか馬鹿なのかわからないわよっ! ……ふんっ。だったら、特別ルールにしてあげる。――あたしが勝てるようなルールをね」
すると木風は海月たちに再び指さした。それから放つ。
「ルールの盤上に立ち上がれ!!」
その瞬間、海月たちは暗転したように地面に吸い込まれてしまう。皆は困惑した。
「な、なんですかこれっ!?」
「どういうことだ、モグラっ!?」
「俺だって知らないよぉっ!」
皆それぞれ混同している状態で地面の中へ吸収されていったのだ。
「う……ん……?」
海月が瞳を開ければ譜面のような盤上と目の前には艶やかな大きな蝶が居た。鮮やかな蝶は緑色と金色の縁が施されている。しかし、海月が一言。
「食べる場所、なさそうだな」
「お前は木の隷属に取り込まれたというのに呑気だな」
「火実さん。どうしてわかるんですか?」
火実を地面に置けば、呆然としているモグラに向けて蹴りを入れていた。「痛っ!」
横に倒れるモグラにニワトリの火実はふんぞり返って「馬鹿者」一声鳴いた。
「聞いたことがあるんだ。木の神の隷属で人間界に溶け込み、あらぬ方法で供物を捧げている隷属が一体居る……と。あの娘がもしかしたら、その隷属かもしれない」
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