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《木の蝶》
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火実は神々の存在を教えたというのに、今日もニワトリの姿で海月の手伝いをしていた。今日は出張占いで海月のお供として手伝いに入らされたのだ。
「おい、海月。……俺はいつになったら、本来の姿に戻れる?」
「えー……。いつでしょう? でも火実さんはニワトリの方が可愛いですよ」
一通りの客を捌いて休憩を取ってから再開し、片づけをしている海月に火実は焦っていた。この姿から解放されたいようだ。
「人間の姿だったら片付けだって手伝えるぞ? 本来の姿になれば、背中に乗せて飛んでやっても良い」
「人間の時の姿はごついおっさんですし、本来の姿は焼けるように熱いじゃないですか。……俺を食べる魂胆が丸見えです」
さっさと片づけを終えて、商売道具を背負って火実を担いで歩く海月の姿に火実は舌打ちを打つ。そんな火実を尻目に海月は歩いていく。すると火実はこんなことを紡ぎ出したのだ。
「貴様が、いや……海月が俺に食べないように命令をすれば、俺は食べることはない」
「あ、そうなんですか?」
海月は火実を抱えながら身体を鼻に寄せて息を吸った。鳥というのは餌によって匂いというものが違うらしい。
今の火実はミミズも与えているがキビやアワも与えているので太陽のような香りがした。筋肉マッチョ姿の親父の匂いを嗅いでいたらただの変態であるが、可愛らしいニワトリの姿であればノープロブレムだ。
海月は少し考え込む。火実が少し、いやかなり期待している様子であった。――だがしかし。
「また今度にしますね」
冷静な声で放った発言に火実は両翼をガクンと落としてしまった。少し可哀そうかなと思いつつも本店へと向かった。海月はモグラ以外の話は信用しないでいるのだ。
本店に向かうと、モグラがふて腐れて机に突っ伏している。どうやら客の足は遠のいてしまったようだ。
「なんだよ~海月と火実かよ~。あぁぁぁーーーー、暇すぎるぅっっっ!!!」
「海月は占いのセンスがあるのに、モグラにはないのだな」
「うっさい、客寄せニワトリ」
「黙れ、無能モグラ」
バチバチと火花をあげる一人と一匹に海月は慣れたように「喧嘩はやめて占いの支度をしますよ」モグラを働かせようと向かった時であった。
一匹の蝶が瞬いた。鮮やかで奇麗な黒縁に新緑の蝶だ。優雅に飛来する姿はまるで天からの使いのような存在感があった。
「……蝶?」
海月はどうして蝶が迷い込んできたのだろうかとふと思った。そしてその蝶になんとなく触れようとした。しかし、――モグラは海月を庇うように羽ばたく蝶の前に立った。そして不敵に笑う。
「おい、今度は木の隷属か? ……どういう用件だ?」
ニヒルに微笑むモグラに蝶は宙を泳いで、一人の少女に変貌した。
半袖の緑のタータンチェックにへそ出しの黒のミニスカート。すらりと伸びたむっちりとした脚にニーハイソックスとショートブーツを履きならし、長い黒髪を振り乱させた……ツリ目の少女は勝気な様子であった。
「あたしと勝負して。――そこのニワトリと一緒に供物として捧げてあげるわ、神もどきのモグラさん」
挑戦状を叩き込む彼女へモグラはそれでも微笑みを絶やさないのだ。
「おい、海月。……俺はいつになったら、本来の姿に戻れる?」
「えー……。いつでしょう? でも火実さんはニワトリの方が可愛いですよ」
一通りの客を捌いて休憩を取ってから再開し、片づけをしている海月に火実は焦っていた。この姿から解放されたいようだ。
「人間の姿だったら片付けだって手伝えるぞ? 本来の姿になれば、背中に乗せて飛んでやっても良い」
「人間の時の姿はごついおっさんですし、本来の姿は焼けるように熱いじゃないですか。……俺を食べる魂胆が丸見えです」
さっさと片づけを終えて、商売道具を背負って火実を担いで歩く海月の姿に火実は舌打ちを打つ。そんな火実を尻目に海月は歩いていく。すると火実はこんなことを紡ぎ出したのだ。
「貴様が、いや……海月が俺に食べないように命令をすれば、俺は食べることはない」
「あ、そうなんですか?」
海月は火実を抱えながら身体を鼻に寄せて息を吸った。鳥というのは餌によって匂いというものが違うらしい。
今の火実はミミズも与えているがキビやアワも与えているので太陽のような香りがした。筋肉マッチョ姿の親父の匂いを嗅いでいたらただの変態であるが、可愛らしいニワトリの姿であればノープロブレムだ。
海月は少し考え込む。火実が少し、いやかなり期待している様子であった。――だがしかし。
「また今度にしますね」
冷静な声で放った発言に火実は両翼をガクンと落としてしまった。少し可哀そうかなと思いつつも本店へと向かった。海月はモグラ以外の話は信用しないでいるのだ。
本店に向かうと、モグラがふて腐れて机に突っ伏している。どうやら客の足は遠のいてしまったようだ。
「なんだよ~海月と火実かよ~。あぁぁぁーーーー、暇すぎるぅっっっ!!!」
「海月は占いのセンスがあるのに、モグラにはないのだな」
「うっさい、客寄せニワトリ」
「黙れ、無能モグラ」
バチバチと火花をあげる一人と一匹に海月は慣れたように「喧嘩はやめて占いの支度をしますよ」モグラを働かせようと向かった時であった。
一匹の蝶が瞬いた。鮮やかで奇麗な黒縁に新緑の蝶だ。優雅に飛来する姿はまるで天からの使いのような存在感があった。
「……蝶?」
海月はどうして蝶が迷い込んできたのだろうかとふと思った。そしてその蝶になんとなく触れようとした。しかし、――モグラは海月を庇うように羽ばたく蝶の前に立った。そして不敵に笑う。
「おい、今度は木の隷属か? ……どういう用件だ?」
ニヒルに微笑むモグラに蝶は宙を泳いで、一人の少女に変貌した。
半袖の緑のタータンチェックにへそ出しの黒のミニスカート。すらりと伸びたむっちりとした脚にニーハイソックスとショートブーツを履きならし、長い黒髪を振り乱させた……ツリ目の少女は勝気な様子であった。
「あたしと勝負して。――そこのニワトリと一緒に供物として捧げてあげるわ、神もどきのモグラさん」
挑戦状を叩き込む彼女へモグラはそれでも微笑みを絶やさないのだ。
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