海のモグラ

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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《真相を暴く》

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 シャワーを浴び終えてドライヤーで髪を乾かしてから部屋着に着替えた海月が最初にしたことは、とりあえず食べるということであった。ミミズの酢漬けとご飯をよそって一心不乱に食べていく。
 その姿に楓は今でも眠っているモグラに向けて起きるように呼び掛ける。「ちょっと、海月が少しおかしいのよ。起きなさいよっ!」
「んぅ……、ミミズゥ……」
 だが起きずに夢の中で妄想を繰り広げているモグラに楓は疲弊を吐いた。それから火実に視線を向ける。ちなみに火実は人間の姿に戻っていた。
「どうします、火の神様? 海月、なんかおかしくありませんか?」
「あ、あぁ……。まぁ、そうだな」
 小声で話し掛ける楓となにか心当たりがあるような火実ではあるが、気品あるモグラこと海竜が海月の前に出る。それから訝しげに海月の瞳を捕らえた。
「貴様はどこまで知っている? あの荒れた大海原に飛び込んだぐらいだ。なにか掴んだのではないか?」
 海月は完食して手を合わせごちそうさまと告げた。「掴みましたよ。海の供物は本来、感情を失わせて供物として捧げられることぐらい」
 それは楓を驚かせたが、火実や海竜は周知していた様子であった。そんな様子の中で海月は話していく。
「あなたたちが供物を捧げるという名目は変わりません。ですが、人間には感情があります。恨みや憎しみ、悲しみなどのものです。だから海の供物となった者には、それらの感情を奪うのでしょう? 素材に余計な感情は要らない。だから、代々、海の供物になった者たちは憎しみなどの負の感情も喜びなどの正の感情も欠如する……と俺は仮定しました」
 海月は食器を片していきながら次の言葉を乗せる。「だって、金の神は絶対的な存在ですもんね」海月の言葉に驚いている二人と事情がわかっている様子の一匹に海月は話していく。
「金の加護を持つ者は、神さえも使役できる力を持ちます。それが神々の約束だとある人から聞きました。俺はその時、不意に思ったんです。じゃあ、どうして海の供物は海の神に食べられなければ、神々に捧げなければならないのか。ふと考えたことは、金の加護を持つ者を危険視しているから……だと俺は思いました」
 海月の淀みのない口調に火実は舌を巻いた。やはり、海と対話をして感情を思い起こさせたからか、普段よりも饒舌になっている。だが、得意げというより迷いのない口調だ。
 そんな海月は敵であった海の神の海竜に話している。海竜はなす術もなくその言葉を受け入れている様子であった。その反応に海月はにこりと笑んで続きを話した。
「金の加護を持つ者に感情を与えてしまえば、神々どころか人間たちを使役させてしまう。だから感情を奪った。……ですかね? 海竜さん?」
 海竜はぐっと堪えてから身体を震わせた。「……そうだ」
 その一言で海月は満足したようだ。だが彼は神や人間を使役しようなんて思っていないと告白する。だが、ただしと付け加えた。
「本来は海の神……いえ、金の神というべきでしょうか? その方に俺の加護を授けたい。――ですよね、モグラさん」
 眠っていたはずのモグラがびくりとした。それから起き上がる。海月はその様相を見て真剣な顔をした。
「あなたは本来、神だった。だけど、なんの神か俺には予測しか出来ません。でも、あの言葉を聞いて確信しました。――あなたは、堕落した神じゃない。自ら汚名を被って人間界に堕ちた、……金の神だ」
 海月の言い切った様子の口調にモグラは少し笑んだ。そしてくるりと回り、人間の姿になる。その顔は少し切なげであった。
「どーしてわかったのって聞きたいけど、……俺の失言がいけなかったね」
 水でも土でもない、――金の神はそれでも笑んでいた。
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