鬼を治めるよーじ

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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《蛇を司る者》

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 ところ変わって、葉治のクラスメイトかつ友人である水澪みずみお 夜空よぞらは息を吐いていた。明日は嫌な体育祭の練習だ。体育なんてこの世からいなくなればいいと夜空は思っていた。彼は極度の運動音痴なのだ。
「はぁ~……、嫌だなぁ。僕、みんなの押し付けで500メートル走にも出る羽目にもなるしなぁ」
 夜空は栗毛色に染まった地毛を撫でてさらに息を吐き出す。運動は本当に嫌いだ。太っているわけではないが、走るだけでも飛躍するのも、武道でさえもなにもかも嫌いなのだ。うまくいったことがない。
 武道というのは体育の選択授業である剣道なんてかっこいいなと思ってやってみたが、全然うまくならなかった。逆に痛い思いをするだけだから苦痛で仕方がない。
 体育なんてこの世からなくなればいい。心の底から願って窓の外を見上げる。空は星々が散らばっていた。田舎ほどではないがきれいだなと思ってふとカメラで写真を
撮影する。
 夜空は写真を撮るのが好きだった。写真はそのシーンを切り抜いているようでその一瞬、一瞬を撮影するのが楽しくて仕方がなかった。体育祭での楽しみは、クラスメイト達の写真を撮ることかもしれないなとふと思った。
 そんな中で一眼レフを片手に夜の空を撮影しようとした。すると、星々が点滅するように光り輝いたのだ。「ん……? 飛行機か、何かかな?」
 夜空はカメラを構えたまま星を連射する。すると今度は星々が淡い雪のようにこちらへやってきたのだ。さすがにこれには夜空もひどく驚いた。
「なぁっ、んだぁ……? どうしてこっちに来る……ん――」
 だ? そう言おうとした瞬間、淡雪のような物体は徐々に姿かたちを変えていった。夜空が呆気に取られているがカメラは構えたままであった。
 カメラを構えてその姿を撮影する。無数の淡雪が徐々に人間の姿へ変化していき、髪が白くて美しい、着物を着た美しい美女となった。
 その瞬間を夜空は夢中でシャッターを切った。「あなたは……誰でしょうか?」
 自分のその声がひどく落ち着いていたのに驚いた。でも美しいその白銀の女は妖艶に笑んだかと思えば夜空を見た。「おぬしに渡したいものがあるんだ」
「えっと、僕に……ですか? あと、お姉さんの名前は?」
 美しい女は妖美に微笑んだ。その表情に夜空は心を掴まれる。
大蛇おろちという。我は蛇を司る鬼道丸様の御霊じゃ」
「鬼道丸様の、御霊? それって、よーじの神社の……」
 よーじの親友でもある夜空は妖艶に笑う大蛇へどうしてだが見惚れてしまった。自分より一回りは年齢のある美女がどうして自分の前に現れたのかがわからない。そんな夜空に大蛇は艶やかに笑む。「おぬしの名は?」
 すると夜空は生唾を呑んで自己紹介をした。「夜空……です。水に澪と書いて水澪 夜空、と言います」
「ほぉ、水澪……。これもなにかの因果かのぉ」
 そして大蛇は息を吐いたかと思えば「夜空と呼んでも構わぬか?」伺うような切れ長な瞳で向けるので夜空の心臓が跳ねた。夜空は首を赤べこのように振る。すると大蛇ははにかんだように笑んだ。
「そう嬉しそうに笑むものではない。我は災厄を招くものじゃ。まっ、今回ばかりはそなたに福を与えよう」
 そうすると大蛇は懐から手袋を取り出して嵌めた。そしてそこからなにかを差し出した。それは錆が付いた何かであった。夜空はシャッターを切る。「これは、何ですか?」
 夜空が問いかけると大蛇は忌々しげな表情をした。「……我の敵じゃ」
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