鬼を治めるよーじ

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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《二人の力を》

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 手元が揺れて湯呑に入っているぬるくなった茶が震えた。桃葉と狼煙の話を聞いてよーじはわかってしまったのだ。――知りたくもなかった父親の死の真相を。
 それでもよーじは茶を一気飲んで紡ぐ。「……親父はそれに目が眩んで、死んだ、のか?」
 きじが目を見張る。しかし睦月や夜空はその真相に辿り着かなかったようで首を横にした。しかしきじはぼそっと呟くのだ。「じゃあ、よーじの父上が亡くなったのは、おらや兄者のせい……か?」すると桃葉が首を横に振った。
「鬼治丸様たちのせいではありません。その欲に目が眩んだ馬鹿息子のせいです。だからわしは葉治を次期当主にしたかった。よーじには昔から不思議な力があったのだから」
「俺に不思議な力があるってなんだよ、じいちゃん?」
「葉治、お前には昔から予兆をする力があった。それはわしと同じ力だ」
「えっ、マジ……?」
 自分が普段から感じていたことがまさか祖父である桃葉と同じ力があるとよーじは思いもしなかった。しかし桃葉は昔を語るように生きていた頃の葉治の父親の話をする。
「あいつは葉治が幼い時から予兆する力に目覚めていることを恐れていた。本来であればその力は自分が受け継ぐはずだったからな。しかし、神職に就いてもその願いは叶わなかった。わしはあいつに幼い頃から話してしまったんだよ。神職に就けば、百済宗の当主となれば鬼を治めるほどの力を持てるかもしれない、などと腑抜けた話を……。わしがあいつを、あの馬鹿息子を思ってやってしまった罪だ」
「じいちゃん……」
 過去の父親の死の真相と自分の不思議な能力がまさか引き継がれた百済家の能力とは思いも依らなかった。そして予兆する能力と憑依する身体を持ったよーじに狼煙は言葉を紡ぐ。
「俺はまだよーじの朱印にはなれない。早太の件もあるからな。でもそれだけじゃない。……鬼道丸様の動向も気になる。あの人はもう既に人間に憑依して誰かと戦闘を起こすかもしれない。それは鬼道丸様に加担した早太もそうだ」
 早太という存在にきじ以外は皆が傾げいていたものの、きじは言葉を吐く。
「兄者を慕っている神のみ使いの一体でイノシシなんだ。そして本名は猪早太。早太はあのあやかしの中でも最恐とうたわれている鵺を打ち取った猛者で狼煙とも仲が良かったんだ」
「え、じゃあ狼煙さんとは今でも仲が良いってことですか?」
 夜空の明るい声に狼煙は残念そうに首を振った。すると睦月が話に加わる。
「じゃあ、きじ様と味方として繋がっているのは俺たちで、早太様は鬼道丸様のお付きの、あの……敵側になっているというわけですか?」
「味方とか敵とか、まぁそう言った方が早いから良いか。そういうわけだ。そしてここで、百済宗の予兆の力と神のみ使いと憑依できるよーじと夜空の身体のこと。そして、クシナの余雫剣を踏まえての相談がここからだ」
 ずいっと狼煙がよーじと夜空を見やって二人に告げる。「よーじと夜空には鬼道丸様を祠に納めるのを手伝って欲しいんだ」そしてさらに言葉を続けた。
「それとあやかし退治な。さぁてっ、二人には忙しく働いてもらうからなっ!」
 よーじが「はい……?」そう腑抜けた顔をした。夜空が「へっ……?」そう困惑した表情を見せた。
 そんな二人にきじも睦月も狼煙を見やって息を吐いた。
「狼煙、急展開過ぎるぞお前は……」
 きじがさらに息を吐いて睦月も同様に示したのであった。しかし狼煙は快活そうにしていたのであった。「さぁて、飯が終わったら早速、訓練するぞ~!」
 睦月がげんなりとした表情を見せる。「さすがに素人じゃ無理ですよ、狼煙様……」
「いやっ、平気だって! 睦月は心配性だなぁ」
 あはは~などと笑う狼煙の姿にきじはどうしてだが距離が縮まったように思えた。
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