41 / 65
《訓練前にかつ丼》
しおりを挟む
今日の夕飯は半熟卵でだしが効いているかつ丼であった。とんかつも肉厚でさらに衣のだしが吸い込んでいるので美味である。それと豆腐とわかめの味噌汁にキュウリと大根の漬物であった。
「う、うまいなぁ~……」
きじが満足そうな顔をしてかつ丼を爆食している。小さな身体と口で頬張る姿に作った桃葉が嬉しそうな顔をしていた。それは一緒に食べている狼煙もそうであった。狼煙は初めてかつ丼を食べたらしく目を見張っている。「これは美味いなぁ……。初めて食べた」
「狼煙さんもかつ丼は初めてですか?」
「あぁ。俺は鬼道丸様のお付きの時はただの人語を操る狼だったからな。生肉を貪っていた」
夜空もかつ丼を美味しい美味しいと言っている中で狼煙に問いかければ、狼煙は思い出すように答えていた。夜空は狼の姿となる狼煙に興味を抱いたようだ。
「へぇ~っ。今でも狼の姿になれるんですか?」
「なれるっちゃなれるけど、この現代の日本では狼は絶滅したって聞いているからなぁ。だから人間の姿の方が多いな」
かつ丼を掻き込みながら咀嚼する狼煙に睦月が味噌汁を飲みながら狼煙へ尋ねた。「それでは狼煙様はいわゆる絶滅したニホンオオカミってことですか?」
「鬼道丸様の時はただのニホンオオカミだったんだけどな、鬼道丸様と共に鬼を倒すようになってからあやかしの力が付いて人語が操れるようになったんだ。まっ、坊ちゃんが白兎を飼っていた時には食べたくて仕方なかったけどな」
「……弥生を食おうとよく狙っていたよな、お前」
首にぶら下げている赤と白の数珠を大切そうに触れるきじに狼煙は最後に漬物を食べて手を合わせた。手を合わせたかと思えばまだかつ丼を食べているよーじと夜空へ声を掛ける。「ほらっ、お前ら行くぞ。満腹状態じゃ訓練はできないからな」
するとよーじが苦言を呈するように言葉を紡ぐ。
「でも狼煙さんはちゃんと食べたじゃないですか。さすがにかつ丼くらいは食べさせてくださいよ、美味いし」
「訓練を甘く見るなよ、よーじ。動く前に満腹の状態で動けば、最悪吐くぜ?」
先ほどの柔らかい口調とは打って変わり厳しめな表情と口調となる狼煙の言葉を聞き、背筋を伸ばした。それから静かに箸を置いて桃葉へ「ラップ持ってくる」などと言ってキッチンへ行ってしまう。
よーじの様子を見て夜空も箸を置いて「ごちそうさま、でした……」などと名残惜しそうにかつ丼を眺めていた。その様子を見て狼煙は意地悪げな顔をして睦月ときじへ視線を向けた。
「睦月と坊ちゃんはどうする? まぁ、坊ちゃんは憑依する側だからともかく、睦月は訓練相手として出てもらうぞ?」
狼煙が顎をしゃくると睦月はそれでもかつ丼を完食し、味噌汁も漬物まで食べてふぅと息を吐いた。「俺は平気です。逆に食べないと力が出なくて訓練の相手も務まりませんから」
「ふーん。余裕だなぁ。まっ、最初の訓練だからな。カラス天狗たるもの、初心者相手には加減も必要だからってか」
「そういうつもりはないんですけどね。まっ、兄貴はともかく大蛇を司る者は初めての戦闘ですから」
夜空の名前は相変わらず言わないようだ。だがそこまで夜空も睦月と接点がないので気にしないようにしている。
よーじがサランラップを持ってきて現れた。それから夜空にもラップをかけるかどうかの有無を尋ねると夜空は深く頷いた。「僕。昔に給食食べた後に全力で走ったら吐いちゃったことがあるから今回はやめておくよ……」でも名残惜しそうな夜空に桃葉が優しげな顔をした。
「夜空くん、泊っていけばいい。まぁ、この場所でしか泊まる場所がないけど」
「えっ、ほ、本当ですかっ!??? やったぁ~!」
夜空も泊まることになって狼煙の訓練が始まることになった。
「う、うまいなぁ~……」
きじが満足そうな顔をしてかつ丼を爆食している。小さな身体と口で頬張る姿に作った桃葉が嬉しそうな顔をしていた。それは一緒に食べている狼煙もそうであった。狼煙は初めてかつ丼を食べたらしく目を見張っている。「これは美味いなぁ……。初めて食べた」
「狼煙さんもかつ丼は初めてですか?」
「あぁ。俺は鬼道丸様のお付きの時はただの人語を操る狼だったからな。生肉を貪っていた」
夜空もかつ丼を美味しい美味しいと言っている中で狼煙に問いかければ、狼煙は思い出すように答えていた。夜空は狼の姿となる狼煙に興味を抱いたようだ。
「へぇ~っ。今でも狼の姿になれるんですか?」
「なれるっちゃなれるけど、この現代の日本では狼は絶滅したって聞いているからなぁ。だから人間の姿の方が多いな」
かつ丼を掻き込みながら咀嚼する狼煙に睦月が味噌汁を飲みながら狼煙へ尋ねた。「それでは狼煙様はいわゆる絶滅したニホンオオカミってことですか?」
「鬼道丸様の時はただのニホンオオカミだったんだけどな、鬼道丸様と共に鬼を倒すようになってからあやかしの力が付いて人語が操れるようになったんだ。まっ、坊ちゃんが白兎を飼っていた時には食べたくて仕方なかったけどな」
「……弥生を食おうとよく狙っていたよな、お前」
首にぶら下げている赤と白の数珠を大切そうに触れるきじに狼煙は最後に漬物を食べて手を合わせた。手を合わせたかと思えばまだかつ丼を食べているよーじと夜空へ声を掛ける。「ほらっ、お前ら行くぞ。満腹状態じゃ訓練はできないからな」
するとよーじが苦言を呈するように言葉を紡ぐ。
「でも狼煙さんはちゃんと食べたじゃないですか。さすがにかつ丼くらいは食べさせてくださいよ、美味いし」
「訓練を甘く見るなよ、よーじ。動く前に満腹の状態で動けば、最悪吐くぜ?」
先ほどの柔らかい口調とは打って変わり厳しめな表情と口調となる狼煙の言葉を聞き、背筋を伸ばした。それから静かに箸を置いて桃葉へ「ラップ持ってくる」などと言ってキッチンへ行ってしまう。
よーじの様子を見て夜空も箸を置いて「ごちそうさま、でした……」などと名残惜しそうにかつ丼を眺めていた。その様子を見て狼煙は意地悪げな顔をして睦月ときじへ視線を向けた。
「睦月と坊ちゃんはどうする? まぁ、坊ちゃんは憑依する側だからともかく、睦月は訓練相手として出てもらうぞ?」
狼煙が顎をしゃくると睦月はそれでもかつ丼を完食し、味噌汁も漬物まで食べてふぅと息を吐いた。「俺は平気です。逆に食べないと力が出なくて訓練の相手も務まりませんから」
「ふーん。余裕だなぁ。まっ、最初の訓練だからな。カラス天狗たるもの、初心者相手には加減も必要だからってか」
「そういうつもりはないんですけどね。まっ、兄貴はともかく大蛇を司る者は初めての戦闘ですから」
夜空の名前は相変わらず言わないようだ。だがそこまで夜空も睦月と接点がないので気にしないようにしている。
よーじがサランラップを持ってきて現れた。それから夜空にもラップをかけるかどうかの有無を尋ねると夜空は深く頷いた。「僕。昔に給食食べた後に全力で走ったら吐いちゃったことがあるから今回はやめておくよ……」でも名残惜しそうな夜空に桃葉が優しげな顔をした。
「夜空くん、泊っていけばいい。まぁ、この場所でしか泊まる場所がないけど」
「えっ、ほ、本当ですかっ!??? やったぁ~!」
夜空も泊まることになって狼煙の訓練が始まることになった。
0
あなたにおすすめの小説
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』
本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」
かつて、私は信じていた。
優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な──
そんな普通のお兄ちゃんを。
でも──
中学卒業の春、
帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、
私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった!
家では「戦利品だー!」と絶叫し、
年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、
さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!?
……ちがう。
こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない!
たとえ、世界中がオタクを称えたって、
私は、絶対に──
お兄ちゃんを“元に戻して”みせる!
これは、
ブラコン妹と
中二病オタク姫が、
一人の「兄」をめぐって
全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──!
そしていつしか、
誰も予想できなかった
本当の「大好き」のカタチを探す、
壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密
藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。
そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。
しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。
過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる