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《じれったい》
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……なんだっただっけ、あれは?
おぼろげな記憶のなかでウツギはぼんやりとベッドに身を預けては虚ろげな顔をする。ちなみに楠は床に布団を敷いて眠っていた。
楠に対して申し訳なさも募ったが、それよりも自分がしでかしたことに対する罪悪感も大きかった。
楠が理由は知らぬが一生懸命に作ってくれたカレーの後に、自分に痴態を現わしてしまった。キスやハグくらいしか強請らないのに、素っ裸になった挙句に……楠自身と触れてしまった。
火傷するくらい熱くて堪らなかった。その後に尻のつぼみを解されたのだが、ひどいくらい気持ちが良く、また責め立てられてぞくりとした。
ひどく言われたことにこんなにも快感というものを覚えてしまうのがわからなかった。
「どうして、俺……」
楠とはこれからもキスしたいしハグもしたい。ただ、自分の淫らな姿を見せるのは羞恥心を勝ってしまうほど……全身が熱くなる。
ふと気づいた。そういえば、右目がドクドクとして熱いのだ。熱くて堪らない。
楠を起こさぬように洗面台に駆け寄り自分の右目を見る。右目は普段よりも充血をしていて激しく怒張しているような気がした。
逆に左目は白潤のままだ。白く透き通っている……が、少し充血をしている。
――瞳がドキドキを、鼓動を感じている。
ウツギはふと思った。この感覚を過ちを犯した自分が被害者である楠に言うべきか迷う。……だが決心をして、身に付けていない楠を揺すり起こした。
楠は「さみぃ……」そう言ってクーラーの温度を上げて上着を羽織ってから、意を決したようなウツギへ疑問を抱いた。ウツギはまっすぐに見つめた。
「昨日はすみませんでした。俺の不注意で、楠さんを巻き込んで……、あの、そうなってしまって」
引き締まってガタイの良い身体に視線を落とし紅潮させるウツギを見た楠は、ニヒルに笑っては華奢な彼を抱擁した。……右目がじくりと熱くなる。涙が出そうになる。
「大丈夫だよ。人間、間違いなんて起こすもんだ。――そう自分を責めるな」
優しい言葉にウツギの右目がじくりと緩む。
「……泣きそうです、嫌われたかと思ったから」
「こら、それぐらいで泣くな馬鹿」
「だって……」
涙を滲ませながら静かに泣きそうになるウツギに、楠はあやすように背中を擦る。薄い背中は自分のゴツイ背中とは違って薄くて細い。ウツギがいかに華奢なのかわかるほどだ。
そんな彼が痴態を見せたおかげで、自分が嫌われるのかと想像し、謝罪されたことに楠も同様の気持ちである。
自分も欲望が抑えきれずウツギ自身に手を出してしまった。挿入までは如何せん理性で止めさせたが、本当はウツギ自身を貫きたくて堪らない。
だがそうなってしまったら、ウツギをどういう目で見れば良いのかわからなくなる。ウツギは息子のような存在だ。血は繋がってはいないが、キスとハグをする仲が異常に良い息子のような存在である。
異端な存在ではあるが、そんな存在ウツギを愛している楠は一歩前に進めない。戸惑って進めない。
たとえそれがウツギを苦しめるにしても、それ以上の行為を及んでしまえば彼をもっと苦しませると思うのだ。
そのおかげでこの様だ。ウツギは羞恥を晒してしまったおかげで自分が卑猥な存在ではないかと苦しんでいるではないか。
――あのとき、キスなんてするんじゃなかった。それ以上も与えなければ良かった。
楠は反省し泣きじゃくるウツギの背中をぎゅっと抱き締める。――これ以上はしない。
「ウツギ、もうキスもやめようぜ。俺はこれ以上、お前を苦しめたくないんだ」
「い、……いや、です」
「なんでそうなる? 俺はお前が大好きだから言えるんだぜ? だからやめよう、なっ?」
するとウツギは息を絶えそうになるのをすぅっと息して、まっすぐに楠を見る。――覚悟を示されたような、そんな表情であった。瞳が白く閉ざされた。
「俺だって楠さんが好きなんです。愛しているんです」
「愛しているって、よくもまぁ歯の浮くようなセリフを……」
「愛しているからキスもハグも、それ以上のこともしたいんです。だって、――愛されているって実感できるから」
――楠の目が大きく開く。そうか、ウツギは愛情を欲していたのかと。愛情を欲するがあまり行為に及んでしまった。執着してしまったのだと。
確かに恋情に似たあのような行為も愛する者がする行為の一つだ。だがそれだけ知って、ウツギがセックスを愛している形と思ってしまえば……本人は意図せずともただの腰の緩い男になる可能性が高いと感じた。
……それだけなんとしてでも避けたい!
だから楠は腫れぼったい瞳でまだ無垢で純粋なウツギの肩を強く抱いた。
「俺の教育が悪かった!! お前に愛というのが情欲だけだと考えさせられると、俺も心配でならん!」
「楠、さん?」
急に楠がお父さん発言をするので戸惑いを隠せないウツギに、楠は思い立ったように「じゃあ今からお前の感情のコントロールを見てみよう!」なんて言いだし、抱擁していた力がするりと抜けたのと同時に……ウツギは甘いキスをした。
楠はひどく驚いた。
「俺で実験するのも良いですけれど、お留守にしないでくださいね」
白潤の瞳でべろりと舌を出す色っぽくなってしまったウツギに楠は肩を落とし「俺はそんな風に育ててしまったのか……」情けない声を上げていた。
おぼろげな記憶のなかでウツギはぼんやりとベッドに身を預けては虚ろげな顔をする。ちなみに楠は床に布団を敷いて眠っていた。
楠に対して申し訳なさも募ったが、それよりも自分がしでかしたことに対する罪悪感も大きかった。
楠が理由は知らぬが一生懸命に作ってくれたカレーの後に、自分に痴態を現わしてしまった。キスやハグくらいしか強請らないのに、素っ裸になった挙句に……楠自身と触れてしまった。
火傷するくらい熱くて堪らなかった。その後に尻のつぼみを解されたのだが、ひどいくらい気持ちが良く、また責め立てられてぞくりとした。
ひどく言われたことにこんなにも快感というものを覚えてしまうのがわからなかった。
「どうして、俺……」
楠とはこれからもキスしたいしハグもしたい。ただ、自分の淫らな姿を見せるのは羞恥心を勝ってしまうほど……全身が熱くなる。
ふと気づいた。そういえば、右目がドクドクとして熱いのだ。熱くて堪らない。
楠を起こさぬように洗面台に駆け寄り自分の右目を見る。右目は普段よりも充血をしていて激しく怒張しているような気がした。
逆に左目は白潤のままだ。白く透き通っている……が、少し充血をしている。
――瞳がドキドキを、鼓動を感じている。
ウツギはふと思った。この感覚を過ちを犯した自分が被害者である楠に言うべきか迷う。……だが決心をして、身に付けていない楠を揺すり起こした。
楠は「さみぃ……」そう言ってクーラーの温度を上げて上着を羽織ってから、意を決したようなウツギへ疑問を抱いた。ウツギはまっすぐに見つめた。
「昨日はすみませんでした。俺の不注意で、楠さんを巻き込んで……、あの、そうなってしまって」
引き締まってガタイの良い身体に視線を落とし紅潮させるウツギを見た楠は、ニヒルに笑っては華奢な彼を抱擁した。……右目がじくりと熱くなる。涙が出そうになる。
「大丈夫だよ。人間、間違いなんて起こすもんだ。――そう自分を責めるな」
優しい言葉にウツギの右目がじくりと緩む。
「……泣きそうです、嫌われたかと思ったから」
「こら、それぐらいで泣くな馬鹿」
「だって……」
涙を滲ませながら静かに泣きそうになるウツギに、楠はあやすように背中を擦る。薄い背中は自分のゴツイ背中とは違って薄くて細い。ウツギがいかに華奢なのかわかるほどだ。
そんな彼が痴態を見せたおかげで、自分が嫌われるのかと想像し、謝罪されたことに楠も同様の気持ちである。
自分も欲望が抑えきれずウツギ自身に手を出してしまった。挿入までは如何せん理性で止めさせたが、本当はウツギ自身を貫きたくて堪らない。
だがそうなってしまったら、ウツギをどういう目で見れば良いのかわからなくなる。ウツギは息子のような存在だ。血は繋がってはいないが、キスとハグをする仲が異常に良い息子のような存在である。
異端な存在ではあるが、そんな存在ウツギを愛している楠は一歩前に進めない。戸惑って進めない。
たとえそれがウツギを苦しめるにしても、それ以上の行為を及んでしまえば彼をもっと苦しませると思うのだ。
そのおかげでこの様だ。ウツギは羞恥を晒してしまったおかげで自分が卑猥な存在ではないかと苦しんでいるではないか。
――あのとき、キスなんてするんじゃなかった。それ以上も与えなければ良かった。
楠は反省し泣きじゃくるウツギの背中をぎゅっと抱き締める。――これ以上はしない。
「ウツギ、もうキスもやめようぜ。俺はこれ以上、お前を苦しめたくないんだ」
「い、……いや、です」
「なんでそうなる? 俺はお前が大好きだから言えるんだぜ? だからやめよう、なっ?」
するとウツギは息を絶えそうになるのをすぅっと息して、まっすぐに楠を見る。――覚悟を示されたような、そんな表情であった。瞳が白く閉ざされた。
「俺だって楠さんが好きなんです。愛しているんです」
「愛しているって、よくもまぁ歯の浮くようなセリフを……」
「愛しているからキスもハグも、それ以上のこともしたいんです。だって、――愛されているって実感できるから」
――楠の目が大きく開く。そうか、ウツギは愛情を欲していたのかと。愛情を欲するがあまり行為に及んでしまった。執着してしまったのだと。
確かに恋情に似たあのような行為も愛する者がする行為の一つだ。だがそれだけ知って、ウツギがセックスを愛している形と思ってしまえば……本人は意図せずともただの腰の緩い男になる可能性が高いと感じた。
……それだけなんとしてでも避けたい!
だから楠は腫れぼったい瞳でまだ無垢で純粋なウツギの肩を強く抱いた。
「俺の教育が悪かった!! お前に愛というのが情欲だけだと考えさせられると、俺も心配でならん!」
「楠、さん?」
急に楠がお父さん発言をするので戸惑いを隠せないウツギに、楠は思い立ったように「じゃあ今からお前の感情のコントロールを見てみよう!」なんて言いだし、抱擁していた力がするりと抜けたのと同時に……ウツギは甘いキスをした。
楠はひどく驚いた。
「俺で実験するのも良いですけれど、お留守にしないでくださいね」
白潤の瞳でべろりと舌を出す色っぽくなってしまったウツギに楠は肩を落とし「俺はそんな風に育ててしまったのか……」情けない声を上げていた。
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