そして兄は猫になる

空想の世界

クロが帰って来たのは

タヌキの一宿の恩義だろうか？

それともあのタヌキ　
本当は神様だったんじゃないか？

神様が空から見てて、

《この家族、あんまり可哀想だから、一つぐらい願いを叶えてやろう》と

タヌキの姿を借りて下界にやって来て、クロを帰してくれて　それを確認してから帰って行った…みたいな。

だとすると、神様は結構お歳を召していらっしゃる方だな。

あのタヌキ　ボロボロだったもん。


　　いやもしかすると…


天界が飽きちゃって

姿を変えて下界に遊びに来たはいいが、寝床に困ってクロたちの小屋に入っちゃったから　

《これはお礼しとかないと神様の名が廃る》

と考えて
『はい、プレゼント！』ってクロを帰してくれたとか。

う～ん。

あまりにも偶然が重なり過ぎている。

しかも悪いことよりも、いい方に傾いている。

良いこと　それすなわち！


『だから神様でしょう』


…ってなってしまうわけで。


タヌキ＝神様
うん。間違いない！


私の頭の中は、勝手な空想でファンタジックに渦巻いていた。


本当はそんな奇跡って滅多にあるわけないし、猫にも帰巣本能ってのはあるから、自ら帰って来てもおかしくは無い。
ただ雄猫は意外と家を離れてしまうとよく聞くので、戻ってくるのは珍しいなぁと思う。

だからって　兄のアニバーサリーに限って戻って来るとか　出来過ぎでしょう？

う～ん…。

やっぱり神様なんじゃないかな。

そう言うことにしておこう！


だとしたら

『神様ありがとぉおおおおおおおおおおおおおお‼︎』



正直　私は茶トラの方が気に入ってた。
昔飼ってた猫も　茶トラだったから。
ニャン太と言う名前を付けて、いつも一緒に寝てたなぁ。
兄も猫好きだったし、よく奪い合った。

祖母は猫嫌いで、
「きしゃが悪い！」(気持ちが悪い)と言って
2階からニャン太を放り投げた事があったけど、そこはさすが猫。
10点満点の回転で無事着地。
けど、今思えば動物虐待だ。

クロに関して言えば、顔も黒すぎて(当たり前だけど)表情とかよく分からない。
眼はキツく感じるし　あまり可愛いと思わないのが本音。
夜になると　真っ黒過ぎて何処にいるのか分からない。
気がつくと　2階からキラーンと眼を光らせて　こっちを観察してたりする。


だけど悪い事ばかりじゃない。

日本で黒猫は　魔除けや商売繁盛をもたらすと言われ、縁起がいいとされてるようだ。

そう言えば、私の娘がデザイナーで、とある寿司屋さんの玄関に置いてあった大きな猫の像を、店のリニューアルに合わせて白から黒に塗り替えたら、ものすごく繁盛した事実がある。
実際に今でも行列ができるほどの人気だ。

う～ん…。

と言うことは
神様は縁起のいい黒猫を実家に送ってくれたことになる。

商売はしてないから魔除けなのかな。

神様すごいな。



まぁ慣れたら
黒も悪くないかも。