教室50センチのラブレター

山野 綾夏

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緑薫る五月‐1

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「というわけで。私はこうして自分の理想の推しに対して罪を重ねましたとさ、ちゃんちゃん」

 持参したノートパソコンで学院誌の記事に誤字脱字がないかチェックしながら、私は先週の借り物競争の顛末を日本昔話風に語り終えた。
 桐谷くんの話を正直にできるのは、りさぽんの他だと生徒会役員だけだ。
 放課後の生徒会室は憩いの場になっていて、今日は二年生の 大八木 おおやぎあんちゃんと、私と同学年の 一条 いちじょう 美雲みくもがいた。

「いろは先輩、やばすぎですよ。よくそのお題で相手のとこ行きましたね」

「視界に入っちゃったんだもん」

 杏ちゃんは生徒会では会計だ。生徒会に入った当初は校則違反であるメイクをしていて、会長である美雲にしょっちゅう怒られていた。今は諦めたらしく、眉と爪をきれいに整える程度で落ち着いている。

「いろはにとっての桐谷くんは、あくまでも推し?」

 美雲が首をかしげて尋ねる。艶のあるストレートの黒髪もさらりと揺れた。

「うん、推しの範疇からは出ない。あと私、恋愛するならきゅるきゅるのかわいい系がいい!」

「あたし逆です。推しはかわいい系、リアルに恋するなら頼れる年上」

「わー杏ちゃん好きそう!」

 好きなタイプで盛り上がる私たちに、美雲はいまいちピンとこないようだった。
 ちょっぴりいたずらしたくなり、座ったまま椅子のキャスターを転がして美雲に近づく。

「会長~。なんかないの、芸能人でもリアルでも、好みの人は」

 美雲は薄い唇をむっと尖らせると、扉が閉まっていることを確認してから「ここだけよ」と声をひそめた。

「放送部の、部長の、保科くんは。かっこいいなって思ったり」

「へえ!」

「ほんとですか!」

「静かにしてください、いろはも杏も」

 美雲はむきになると敬語になる。顔は真っ赤になっていた。
 放送部の保科くんは、私と同じA組だ。唯一無二の朗らかさと爽やかさはみんなから好かれており、話もおもしろい。体育祭でも、保科くんの軽やかな放送は人気だった。
 

 
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