教室50センチのラブレター

山野 綾夏

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緑薫る五月‐3

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 私が広報として初めてユズの準備に取り掛かり始めたのは一年生の、冬の足音が段々と大きくなってきた頃だった。中学のときに使っていたマフラーどこにやったっけ、と思いながら生徒会室で昔の新聞を読みあさりながらくしゃみをしていた。
 歴代のユズは、学内ニュースをまとめつつ生徒からのお便りも募集しているものや、学内の日常を切り取った写真をメインにして文章は少しだけのものなど作り手の個性が出ていた。参考としてひとつずつ読みながらも、私は生徒へのインタビュー形式にしようと決めていた。
 昔から、雑誌でも新聞でもウェブサイトでもインタビュー記事というものが好きだったのだ。その人が持つ信念や大切な思い出が丁寧に掘り下げられて、新たな一面を知れるのがたまらない。

「あれ、久住。頑張ってるな」

 当時の生徒会長が扉を開けて入って来て、慌てて机の上に広げていた新聞をかき集めた。

「ごめんなさい、散らかってて!」

「全然散らかってないよ。あと、片付けのできなさでは俺は誰にも負けない」

 会長は大口を開けて、物が積み重なった自分の席を指さしながらあっはっはと笑った。

「学内新聞、方向性決まりそうか?」

「はい。完全に私の好みなんですが、インタビュー形式にしたくて。その号につき誰かひとりをピックアップして話聞いていくっていう感じです」

「おお、いいじゃん。楽しそう!」

 会長は目を輝かせると両手の親指をたてた。この人の豪快さと実直さにはたまに気圧されるけれど、ほっとする部分も多い。

「最初の相手は誰にするんだ」

「それ、悩み中なんですよね。部活で活躍してる上級生の先輩とかがいいかなとも思うんですが、いきなり行くのもハードル高くて」


「まあ、最初は同級生とやったほうが気が楽そうだな。一条はどうだ?」

「一条さんですか」

 五人いる生徒会のうち、一年生は私と一条さんの二人だ。しっかり者で冷静で、まだ少しとっつきにくい。内部生で、附属中にいたときは生徒会長をやっていたとのことだった。

「ああ。生徒会同士で協力しやすいし、いいんじゃないか」

「んー……。そうですね。お願いしてみようと思います」

 生徒会選挙でも、当選を確実視されるほど目立っていた一条さん。
 新聞にしたら、結構みんな興味を持ちそうな予感。次に生徒会で会ったときお願いしようと決意した。
 会長が外を見て身を乗り出す。

「お、見ろ久住、サッカー部が練習試合してるぞ。三対三で競ってる」

「どっちも三点は激アツですね。――くしゅん!」

 会長が窓を開けると間から隙間風が入ってきて、私はまたくしゃみした。

「そういえば、ちょっと昔の代だけど俺が気に入ってるユズがあるんだよ。この人が担当した最後の号の編集後記が、本当にいい文で」

 会長が渡してくれた新聞に目を落とした。

『次はー、××駅ー、お出口は右側です』

「くしゅん!」

 二年前のことをぼんやり思い返していたら、電車のアナウンスに合わせてくしゃみが出た。次の駅が、保科くんから指定されたカフェのある駅だ。急行は通過してしまう目立たない駅のため、降りるのは初めてだ。
 
 
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