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透明な雨空‐2
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頑張りますと意気込んでいたあのときに比べたら、多少は成長できているはず。思い切ったことをできるくらいには。
「見てみて、りさぽん。こんな感じになったよ」
「おー。これか、いろはの渾身の最新作は」
今朝張り出したばかりのユズをりさぽんに見せるため、お昼休みに一階の吹き抜けスペースに来ていた。他の生徒も立ち止まって、興味深げにユズをスマホで撮っている。
『ユズ特別号 放送部部長・保科宏樹のラジオタイム!』
横書きのタイトルの下には、大きなQRコード。そして、放送室でマイクに向かう保科くんの写真と、概要説明の文章。
『今回はユズ特別企画! こちらのQRコードを読み取ると、三十分間のラジオ番組を聴くことができます。ぜひQRコードをスマホで撮って保存している、お好きなタイミングでお聴きください。パーソナリティは保科宏樹、構成作家は久住彩葉でお送りします』
この紙はただのポスターにすぎない。内容は、QRコードで飛べる音声に詰まっている。
保科くんの魅力――彼自身の声とトークを生かして、インタビューの文章ではなくラジオ音声という形にしてみた。構成作家というと仰々しいけれど、私は前回のインタビューを踏まえたうえでのざっくりした台本と、合間に挟んだコーナーのアイディア出しを担った。それと、このポスターの作成。
先月の朝、一からやり直したいという私のわがままを保科くんは快く受け入れてくれた。いい人なのに笑顔がうさんくさいとか言ってごめん保科くん。
ラジオ収録は、放送部が休みの日の放課後の放送室で行った。
「俺が話してるとき、久住さんもそばにいてね。本物の構成作家も、パーソナリティと一緒にラジオブースの中いることが多いから」
私は保科くんの斜め前の位置に座り、収録を見守った。台本は、この話をしてほしいという軽い支持程度のものだったから、うまく内容がまとまったのは完全に保科くんの力量だ。
りさぽんがQRコードを撮ってるあいだも、他の生徒のおしゃべりが耳に入ってくる。
「残りの休み時間で、聴けるとこまで一緒に聴こうよ」
「いいね、教室戻ろう!」
よし、みんな食いついてくれている。りさぽんは感心したようにうなずいた。
「よくやったねえ、いろは。これであれでしょ、桐谷のインタビューができるかどうかが決まるんでしょ」
「そういえば、そうだった。やってるうちに楽しくなって、忘れてた!」
どうすれば保科くんのよさを引き出せるか、そして聴いてくれる人に楽しんでもらえるかをずっと考えていたから桐谷くんのことが頭から抜け落ちていた。
「桐谷くんに、できたよって言ってこないと」
教室に向かおうと勢いよく真後ろを向くと、ちょうど吹き抜けにやってきた桐谷くんとぶつかりそうになった。
びっくりして、音にならない短い声が口から出る。
りさぽんは無言で私と桐谷くんを眺めると、棒読みで一気に話し出した。
「あーそういえば中間やばーい勉強しないとーじゃああとはふたりでどうぞー」
「ええ、りさぽん? ……行っちゃった。桐谷くん、こちら、新しいユズが完成しました。その、新聞ではないんだけれども」
「見てみて、りさぽん。こんな感じになったよ」
「おー。これか、いろはの渾身の最新作は」
今朝張り出したばかりのユズをりさぽんに見せるため、お昼休みに一階の吹き抜けスペースに来ていた。他の生徒も立ち止まって、興味深げにユズをスマホで撮っている。
『ユズ特別号 放送部部長・保科宏樹のラジオタイム!』
横書きのタイトルの下には、大きなQRコード。そして、放送室でマイクに向かう保科くんの写真と、概要説明の文章。
『今回はユズ特別企画! こちらのQRコードを読み取ると、三十分間のラジオ番組を聴くことができます。ぜひQRコードをスマホで撮って保存している、お好きなタイミングでお聴きください。パーソナリティは保科宏樹、構成作家は久住彩葉でお送りします』
この紙はただのポスターにすぎない。内容は、QRコードで飛べる音声に詰まっている。
保科くんの魅力――彼自身の声とトークを生かして、インタビューの文章ではなくラジオ音声という形にしてみた。構成作家というと仰々しいけれど、私は前回のインタビューを踏まえたうえでのざっくりした台本と、合間に挟んだコーナーのアイディア出しを担った。それと、このポスターの作成。
先月の朝、一からやり直したいという私のわがままを保科くんは快く受け入れてくれた。いい人なのに笑顔がうさんくさいとか言ってごめん保科くん。
ラジオ収録は、放送部が休みの日の放課後の放送室で行った。
「俺が話してるとき、久住さんもそばにいてね。本物の構成作家も、パーソナリティと一緒にラジオブースの中いることが多いから」
私は保科くんの斜め前の位置に座り、収録を見守った。台本は、この話をしてほしいという軽い支持程度のものだったから、うまく内容がまとまったのは完全に保科くんの力量だ。
りさぽんがQRコードを撮ってるあいだも、他の生徒のおしゃべりが耳に入ってくる。
「残りの休み時間で、聴けるとこまで一緒に聴こうよ」
「いいね、教室戻ろう!」
よし、みんな食いついてくれている。りさぽんは感心したようにうなずいた。
「よくやったねえ、いろは。これであれでしょ、桐谷のインタビューができるかどうかが決まるんでしょ」
「そういえば、そうだった。やってるうちに楽しくなって、忘れてた!」
どうすれば保科くんのよさを引き出せるか、そして聴いてくれる人に楽しんでもらえるかをずっと考えていたから桐谷くんのことが頭から抜け落ちていた。
「桐谷くんに、できたよって言ってこないと」
教室に向かおうと勢いよく真後ろを向くと、ちょうど吹き抜けにやってきた桐谷くんとぶつかりそうになった。
びっくりして、音にならない短い声が口から出る。
りさぽんは無言で私と桐谷くんを眺めると、棒読みで一気に話し出した。
「あーそういえば中間やばーい勉強しないとーじゃああとはふたりでどうぞー」
「ええ、りさぽん? ……行っちゃった。桐谷くん、こちら、新しいユズが完成しました。その、新聞ではないんだけれども」
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