瞬風雷刃の勇者 ~忘れた記憶~

ノイ

文字の大きさ
3 / 16
1章 イグニドル

3話 『なりかけ勇者』

しおりを挟む
「……ということだ。分かったか?」


シーンとしていた部屋一室。国王は全ての説明を終えたかのように肩を落とす。


その説明に長々と話す姿に俺以外の3人は目をキラキラさせながら見ていた。


しかし、俺は前にもこの話を聞いたことがある。二度目の話は辛い。


「う……分かったけど、つまり何が言いたいん?」


国王が説明を終え、まず最初に声を出したのはさっきまで特に何も反応していなかった北上楓夏《きたうえ ふうか》だった。


彼女は元気がショートカット。


男勝りな性格だが、これまた男子には中々の人気という。


余計、俺の立ち位置が分からなくなっていく。


だが、はっきり言ってそこまで頭が良くない。


そして、知英美や光朗と仲がいい。


俺だけ仲間ハズレ感半端ない。


国王は肩を落としている。


それもこれも楓夏のせいだ。


頑張って説明をしたのに楓夏はほとんど理解していない。


「分かった。じゃあ、この都市の名前が【イクニドル】といい、魔法という力が存在することと、他にも種族がいるということだけ覚えとけばいい」


もうどうでも良くなったかのように国王は言い放つ。


しかし、国王は一番重要なことを言っていないことに楓夏以外は気がついていているようだった。


「……で、私たちは何をすればいいん?」


そして、それを口に出したのは意外にも楓夏だった。


そのことについて俺たちは驚きを隠せない。


一番分かっていなそうだったのに。


国王は咳払いをして答える。


「あ、あぁ……言ってなかったな。勇者の役割はいざという時に国同士の仲介人として働いてもらう」

「仲介人……ですか?」


この世界には『人間族』『エルフ族』『獣族』『精霊族』『魔族』『神族』の6種族が存在している。


その6種族はそれぞれ得意な魔法がある。


しかし、魔法の傾向が違う以前に考え方すら何もかもが違う。


つまり、抗争が起こりえるということだ。


「あぁ……現在、人間族は関係ないのだが、魔族と神族が抗争状態に陥っているんだ」

「なるほど……」


この世界にまた呼ばれた理由がなんとなく分かった。


光朗は国王に向けて幾つかの質問をし始める。


そのことから、受ける気があると推測できた。


「質問……いいですか?」

「おっ、いいぞ」

「俺たちが戦えるだけの力はどうするんですか?」

「あぁ……大丈夫だ。プロの指導者をつける。他にないか?」

「あっ、はい」


次に口を開いたのは知英美だった。


「質問か?」

「はいっ、ステータス的なのってどうやれば見れるんでしょうか?」

「あ、あぁ……まだ、言ってなかったな。魔法というのは想像が命だ。頭の中で唱えてみろ。まあ、口に出してもいいが」


俺たちはステータスを頭の中で唱えてみた。


すると、頭の中には徐々に文字が刻まれていく。


最初の頃と同じ反応。


実際、頭の中で唱える魔法なんてこの世界にはステータスを見る時ぐらいしか使わない。


NAMAE・NAGAMINE TOMOHIRO


LEVEL・1


HIT POINT(HP)・1000
MAGIC POINT(MP)・100


EXPERIENCE POINT(EXP)・0
NEXT・10


STRENGTH(STR)・15
DEXTERITY(DEX)・20
VITALITY(VIT)・23
INTELLIGENCE(INT)・30
AGILITY(AGI)・100
MIND(MIND)・32
LUCK(LUK)・13


【魔法属性】風
【魔法】風の初級魔法(ウィンド・ファクター)


【アビリティー】風雷瞬風 LEVEL1・必要MP 50


【武器】なし
【武具】異世界の服


【称号】勇者、冒険者、異世界人、平凡人、風使い


当然ながら魔法属性もランダムで決まる。


そして、ステータスは必ず最初からになっていた。


これは、認証システムがないということが理由なのだ。


「うっわ、すげー。なんか変な感じ」


知英美が感心しながら突っ立っている。


普通に考えたら変な境遇なのだが、俺は何も興味を持つことができない。


「国王陛下っ、そろそろお時間なのですが……」

「もうそんな時間か? 分かった。最後に問おう。この申し入れを受けてもらえるかな?」

「……最後に質問いいか?」


光朗は最後に質問を提示する。


「ここから、元の世界に帰ることはできないの?」


国王は考え込んだ結果答える。


「あぁ……すまないが、返す事が出来ない。そもそも、召喚方法は分かっていても帰還方法が……曖昧でな」


国王は申し訳なさそうにしている。


しかし、俺は知っていた。


帰れないということは正しいが、帰還方法が分からないというのは全くのデタラメなのだ。


現に一度、俺は帰ってるし。


「そうですか……分かりました。俺はこの申し入れを受けます。みんなは?」


光朗は俺たちに聞いてくる。


「私もやるっ!」


次に答えたのは楓夏だった。


「じゃあ………私もやる」


そして、最後は知英美が答える。


そのあとは当然ながらそこにいた全員が一斉に俺の方を見る。


そして、俺は決意を決めて、


「俺は……勇者なんてやらないから」


全員が凍りついた。


ここにいた人誰一人俺が断るなんて想像もしていなかっただろう。


「ど、どうしてっ……何が不満なんだ?」


国王が俺に疑問をぶつけてくる。


俺はそれに対して、


「不満とかじゃないんですよ。せっかく異世界に来たんです。楽しまなきゃ損ということですよ」


この場にいた全員が俺の言葉に理解していなかった。


「しかしっ、本当に……やってもらえないのか?」

「勇者が4人もいらないでしょ? 3人で十分だ」


後ろには襖がある。俺はそっちの方を向いて歩く。


「じゃあな。おっさん………」


俺はその言葉を残してその部屋を去った。


国王はその背中を見ながら、一言つぶやく。


「なるほどな……そういうことか。5年ぶりか。トモヒロ」


側近であるマイラはその言葉の意味がわからなかったが国王に対して問うことはできなかった。


そして、俺についていた称号がピロローンと音を立てて変化する。


【称号】なりかけ勇者、冒険者、異世界人、平凡人、風使い

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

夫が勇者に選ばれました

プラネットプラント
恋愛
勇者に選ばれた夫は「必ず帰って来る」と言って、戻ってこない。風の噂では、王女様と結婚するらしい。そして、私は殺される。 ※なろうでも投稿しています。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

不貞の末路《完結》

アーエル
恋愛
不思議です 公爵家で婚約者がいる男に侍る女たち 公爵家だったら不貞にならないとお思いですか?

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...