最強の魔術師と最悪の召喚魔

ノイ

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1章 学園1

06 ハプニング2

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俺はレーナの勇姿を後ろでずっと見ていた。そして、その戦い方は素人のそれだった。多くの魔力を消費し、相当な威力を発揮する爆発魔法。彼女はそれを理性をなくしているパンダに撃った。はっきり言ってそれを撃った時は驚いたが、5発撃った内に最後の1発しか当たらなかったということが一番驚いた。
多くの魔力を持っている者でも完璧にコントロールできるとは限らない。まぁ、そのためにヴァレッヂ学園のような魔法学科のある学園に通うのだが。

「君たちっ!何をしているんですか?」

そう言いながら俺たちに近づいてくる女性がやってきた。眼鏡をかけた黒髪女性。彼女を見てそれが誰なのかすぐに分かった。
彼女の名前はリズ・マクラウド。
その格好はヴァレッヂ学園の制服のそれだった。そして、彼女は生徒会副会長ということもあり、良く新聞などで見る機会がある。だから、俺もすぐ分かった。

「げっ……逃げるぞ」

「ど、どうして?」

「あいつは生徒会だぞ?そして、俺たちは違法に戦ってる。バレたら退学だぞ」

「そ、それは困る」

「じゃあ、喋ってねーで走るぞ」

「う、うん」

俺たちは一生懸命走る。
リズの手には一本の刀が握られている。そして、リズは勢いよく一言、

「【斬火】」

リズが構えていた刀は赤く、輝く。そして、その方は彼女によって振られる。すると、勢いよく炎のそれが俺たちの方に飛んでくる。
剣や槍などから発さられるのは炎といっても実際はそれとはまた別なるもの。魔力でできている。なので、普通に使う炎とは威力もスピードも違う。

「やばいっ!飛んでくるぞ。避けろっ!」

「えっ……」

俺たちは左右に飛び込むように避ける。彼女の攻撃は俺とレーナの境に勢いよく斬り裂かれる。地面は土の中が見えるほどえぐられていた。
俺たちは倒れ込み、立ち上がることができない。これは……もう、逃げられない。

「生徒会副会長のリズです。学園まであなた方を拘束します」

「「は、はい……」」

俺たちの初めての戦争は失敗に終わった。それと、俺たちはきつめの手錠をつけられ、ヴァレッヂ学園に向かった。はぁ……なんて日だ。



###



俺たちは大きな荷台のついた車でヴァレッヂ学園に連れてこられた。手には手錠、目には目隠し。俺たちはどう考えても犯罪者のそれになっていた。まぁ、それも仕方のないことだと思う。勝手に魔法を使うのはこの国の法律によって禁止されている。俺は一切、魔法を使っていないのだが。

しばらくするとウィーンという車のエンジン音がパッと消え、バンっ!という扉が開いたような音がした。そして、押され俺たちは強制的に歩かされる羽目になった。俺たちは別に抵抗するわけでもなく、歩く。

俺たちはこの学園に来たという感動感もないまま、連れられていく。そして、しばらくすると椅子に座らせられる。そのあとは俺たちにつけてあった目隠しが外させられる。突然の光が入ってきた俺の目は目を瞑るほど眩しかった。

「では、幾つか質問しますので、答えてください」

「は、はい……」

俺はこの部屋を見渡す。そこはテレビで見たことのあるような警察の事情聴取室だった。そして、ここにはレーナはいない。

「あなた、名前は?」

「ナツ・ヴァーンです」

「そうですか。あなたはあの時、魔法を使いましたか?」

「いいえ」

「では、どうしてあの場にいたのですか?」

「えっ……と、ヴァレッヂ学園に向かう途中でした」

「なるほど……この学園の新入生なのですか?」

「はい」

「じゃあ、それなら知っていたでしょ?危険指定された場所に入るのもダメだって」

「ま、まぁ………」

「分かりました、あなたの処分は後に連絡します………」

このままでは退学ものだろう。その時だったその部屋に一つだけある内線の固定電話。その固定電話がこの部屋に大きく鳴り響く。
その音に気がついたリズリズは急いでその固定電話を手に取り、出る。

「はい……リズですが」

「私だ」

「が、学園長っ!何か御用でしょうか?」

「そこに一人の少年がいないかい?」

「は、はぁ……事情聴取をしている少年が一人、いますが」

「そうか……早速、問題を起こしたのか」

「ど、どういうことでしょうか……?」

「まぁ、いい。今からその男を学園長室まで連れてこい」

「し、しかしっ!」

「なんだ?私に逆らうらって捉えてもいいのか?」

「い、いえ……。了解しました。今すぐ向かいます」

リズはそう言うと固定電話を元あった場所へ戻す。そして、俺に問う。

「君は……何者だ?」

「何者って、言われても」

「あの方の知り合いかと聞いているんだ」

「さぁ……どうでしょう?」

「くっ……ふざけやがって」

リズは悔しそうな表情を俺に見せる。そして、俺に最後にいう。

「では、行きましょうか。学園長が待っています」

「はい………分かりました」

俺は『あの魔女』に文句を言われることを覚悟するしかなかった。
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