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第一王子は第二王子の腹黒さを知っていたと見えて、自分の周りは確実に信頼できるもので固めており、どのみち第二王子の付け入る隙は与えていなかった。数週間後、第一王子の立太子が発表され、その後の第二王子がどうなったのかはシャルルの耳には入ってこなかった。
幸い、第一王子は分別のつく人物で、シャルルは結婚するまで王家に近づかないで欲しいと懇願された。王家には隠さなければならない秘密があるし、腹黒なのは認めると手紙にはあった。だが腹黒でなければ王族などやっていられないのは、政治に疎いシャルルにでもわかった。
シャルルはその願いを喜んで聞き入れ、協力は惜しまないと手紙で伝えた。シャルルに対して邪な考えを持たないのであれば、呪われることもないのだから安心して欲しいとまで書いたが、男というものは容姿に騙されやすく、うっかり絆されてしまっても怖いので、呪いが解けるまでは頼むから近づくなと泣かれた。
「傾国の美女ってのは、こういうことだったのか」
「ちがうと思いますよ、お兄様」
中身はすっかりささくれてしまったが、その後も母に似て豊満な体を持ち、父に似て容姿も美しいシャルルに騙される男は後をたたなかった。
そんなこんなで、あまり勉学に身も入らないまま、シャルルは3年生になってしまった。そこ、ここで告白されることもあったが、皆勝手に自爆していくため、周りは婚約者と仲を暖めているというのに、シャルルはいまだに一人、ランチを頬張っていた。正直者の女友達はたくさんできたが、近寄る男性はおらず、まるで高嶺の花のような扱いになってしまったシャルル。友人は皆婚約者と仲良く「はい、あーんして」などと甘やかな時間を繰り広げている。
はあ、とため息をついてランチを終えたところで、ふと顔を上げると、黒髪の青年と目があった。カフェテリアのトレイをガッシャン、と足元に落とし、じっとシャルルを見ている。
今年入った1年生だろうか。シャルルの噂を知らないと見える。カフェテリアにいた皆が静まり返った。中にはハラハラと見ているものもいるが、ほとんどが今度はどんな自白が聞けるかと、楽しみにしている感じもある。
シャルルは無視してカフェを出るか、それとも落ちた食器を拾うのを手伝うか迷った。下手に近づいて告白されてしまっては、この青年の未来に関わる。よく見ると、真面目そうで、きりりとした顔立ちに通った鼻筋、形のいい口元に、なんといっても夜の海のように澄んだ藍色の瞳に、シャルルは息を呑んだ。
さすが我が両親の血筋なだけある。シャルルは自分がイケメン好きなのだ、ということをここで初めて知ることになった。
『シャルル。人間の容姿はただの面の皮だ。表面でなく中身を見極めなければならない』
兄の言葉が突き刺さる。
(ですがお兄様)
シャルルはふと友人たちとの会話を思い出す。第一印象で、面の皮は55パーセントを占めるときいた。
幸い、第一王子は分別のつく人物で、シャルルは結婚するまで王家に近づかないで欲しいと懇願された。王家には隠さなければならない秘密があるし、腹黒なのは認めると手紙にはあった。だが腹黒でなければ王族などやっていられないのは、政治に疎いシャルルにでもわかった。
シャルルはその願いを喜んで聞き入れ、協力は惜しまないと手紙で伝えた。シャルルに対して邪な考えを持たないのであれば、呪われることもないのだから安心して欲しいとまで書いたが、男というものは容姿に騙されやすく、うっかり絆されてしまっても怖いので、呪いが解けるまでは頼むから近づくなと泣かれた。
「傾国の美女ってのは、こういうことだったのか」
「ちがうと思いますよ、お兄様」
中身はすっかりささくれてしまったが、その後も母に似て豊満な体を持ち、父に似て容姿も美しいシャルルに騙される男は後をたたなかった。
そんなこんなで、あまり勉学に身も入らないまま、シャルルは3年生になってしまった。そこ、ここで告白されることもあったが、皆勝手に自爆していくため、周りは婚約者と仲を暖めているというのに、シャルルはいまだに一人、ランチを頬張っていた。正直者の女友達はたくさんできたが、近寄る男性はおらず、まるで高嶺の花のような扱いになってしまったシャルル。友人は皆婚約者と仲良く「はい、あーんして」などと甘やかな時間を繰り広げている。
はあ、とため息をついてランチを終えたところで、ふと顔を上げると、黒髪の青年と目があった。カフェテリアのトレイをガッシャン、と足元に落とし、じっとシャルルを見ている。
今年入った1年生だろうか。シャルルの噂を知らないと見える。カフェテリアにいた皆が静まり返った。中にはハラハラと見ているものもいるが、ほとんどが今度はどんな自白が聞けるかと、楽しみにしている感じもある。
シャルルは無視してカフェを出るか、それとも落ちた食器を拾うのを手伝うか迷った。下手に近づいて告白されてしまっては、この青年の未来に関わる。よく見ると、真面目そうで、きりりとした顔立ちに通った鼻筋、形のいい口元に、なんといっても夜の海のように澄んだ藍色の瞳に、シャルルは息を呑んだ。
さすが我が両親の血筋なだけある。シャルルは自分がイケメン好きなのだ、ということをここで初めて知ることになった。
『シャルル。人間の容姿はただの面の皮だ。表面でなく中身を見極めなければならない』
兄の言葉が突き刺さる。
(ですがお兄様)
シャルルはふと友人たちとの会話を思い出す。第一印象で、面の皮は55パーセントを占めるときいた。
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