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第2章:西獄谷編
閑話:月読巫女と精霊王1
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次章に入る前の小話です。
ミヤコのおばあちゃん君代の若かりし頃と、精霊王の出会いを書きました。
すみません、3話ほど続きます。
==========
「君代さん!あなたはいつもそうやって!」
ああ、うるさい。
「いい加減木登りなど止めて、少しは巫女らしくしたらいかが?」
真木村家は代々巫女として神に仕える家系だ。女として生まれたからには神に仕えるようにと育てられ、人生のレールを敷かれる。
私はそんな家系が大嫌いだった。
「姉さまたちがいらっしゃるんだから、一人くらい出来が悪くても神様は見逃してくれますよ」
「そういう問題じゃありませんでしょ!降りてらっしゃい!」
「姉さま!空はこんなにも広く青く、鳥は自由に空を舞い、風も気ままに吹き荒れるというのに、なぜ私は敷かれたレールの上を汽車のように進まなくてはならないの?このままここから飛び降りて神様に召された方が自由でいいと思わない?」
「なんてことを言うの!」
こんな会話は日常茶飯事で、いざ飛び降りてみればほんの一瞬体が軽くなった気はしても、すぐに現実に引き戻されてしまう。私はため息をついて、猿のようにキーキー文句を言うお姉様方について日々の試練を受けるため白い着物に着替えた。ああ、面倒くさい。
そろそろ神降ろしの祈祷の日。
私は神様に対して、特に何の感情も持っていないというのに。
だいたい、祈祷したってそうそう神様が降りて来るワケないじゃない。わざわざ呼び寄せて、何をお願いするっているのかしら。そもそも下賤な人間の祈りなんて、叶える価値もないでしょうに。健康になりますようにとか、商売繁盛しますようにとか。食事と運動を適度にやって努力する方がよっぽど効果があると思うけど?商売だって、買う人の立場に立って考えればいいのよ。頭使いなさいよ。何で神頼みにするのよ。そんな高位の神様を呼ぶくらいなら、たわしの神様を呼んで風呂釜磨きをしてもらった方がよっぽど助かるわ。だって私の仕事だもの!
すました顔をして正座をし、心の中で言いたい放題。邪を払えって言われても、私には無理だわ。邪な考えばかり浮かんでくるんだもの。私は普通の煩悩だらけの人間なのよ。巫女なんてムリムリ。
禊を終えてしょぼい食事を済ませた後でようやく解放され、私はいつもの神木に登り、夜空に浮かぶ三日月を見つめた。
「アルヒレイトに会いたい…」
♢
いつだったか、私はこの神木の上で人でないモノに会ったことがある。まだ10歳くらいの子供だった頃だ。あの日も躾の時間が嫌で、練習をすっぽかしてこの木に登って隠れていた。眼下で姉様たちが必死になって私を探しているのをニヤニヤしながら見ていた。
「何がそんなに面白い?」
「ん~。みんなが私を探してるから」
「ここにいるとは言わないのか?」
「言うわけないじゃん。隠れてるのに……って誰?!」
太い枝に体を預け寝転んだ状態で足をぶらぶらさせていたら、隣から声が聞こえた。少し会話をしてはた、と気づく。ここは木の上で、素知らぬ男性が私の隣で同じように下を眺めて不思議そうにしている。
「アルヒレイトという」
「あ、ある?」
「ア ル ヒ レ イ トだ。ヌシは?」
「き、キミヨ」
「キミヨか」
「あんた、誰?」
「今、名乗ったではないか」
「そ、そうじゃなくて。あんた何?誰?」
アルヒレイトと名乗った人はふむ、と考えるように顎に手を当て私を見た。
「人には見えぬか?」
人には見えぬか?
人に見えてたけど、そんなことを言われたら違うのかと思うじゃない?だいたいどこから出てきたのよ、この人。よく見れば、緑の髪の毛だしすごい器量良しだし。なんだかキラキラ眩しいんだけど。
「神様?」
「違うな」
よかった。これで神です、とか言ったら今までの不信心で地獄に落とされるかもしれなかった。ドキドキ。
「人間ではないよね。妖?」
「あやかし?」
「ええと、妖怪とか動物の霊とか、人でないもの?」
アルヒレイトはまたふむ、と考え込んだ。
「少し、違う、かな?俺は、ほらあれだ。ヌシらのいう霊魂みたいなものだ」
「幽霊か」
「よくわからんが、まあそんなものだ」
「祓ってあげようか?」
「祓う?」
「ああ、ええと。浄化するってこと。何かあって、肉体から離れた後もこの地に残っているのだから、何か無念でもあるの?」
「無念?いや。それに浄化なら俺もできるぞ」
みろ、と言ってアルヒレイトは手を振った。
すると、木々が震えるように葉を鳴らし、周囲に漂っていた黒いものがふっと消えた。
「今のは、何?!」
なんか見えた!
黒いモヤモヤしたもの。
私がぎょっとして起き上がると、アルヒレイトが笑った。
「瘴気だ。それを払っただけだ」
「瘴気?」
「ああ、悪い気だ。不安や不満、他を害しようという気が澱んでできる。この樟はなかなかきれいな気に満ちているから、この辺りにはあまりないがな」
「やっぱり、神様?」
アルヒレイトは呆れたように私を見つめた。
「さあ。俺は神に会ったことはないからな。どういうものかよく知らんが」
気がつけば姉様たちは諦めて、どこかへ行ってしまったようだ。
いつの間にか辺りは静かになって、虫の声だけが聞こえた。
「お前の気がきれいで見に来たんだが…。俺と一緒に来るか?」
「それって求婚?」
「求婚?」
「私と一緒になりたいと言ってるの?」
「一緒になりたい?いや。うん。そうなのかな?別に従属になる必要はないが」
どうも話がうまくかみ合わない。とりあえずわかったのは、この人に見えるコレは人間じゃないということと、悪い霊ではないということだ。それと私好みの器量良し。髪の色は変だけど。でも幽霊と結婚は無理な気がする。だけどここから連れ出してくれるなら、それでもいいか。
「またの機会にしてほしい」
「そうか。またの機会はいつがいいかな」
「えっ…。そ、それじゃあ10年後ぐらいにまた」
「わかった。俺は時間の流れに疎いが、10年くらいを目処にまたここで会おう」
アルヒレイトはそういうと、言葉の通り空気に溶けた。私は目をまん丸に開いて思わず手を伸ばし、そこに残った光の雫に手を触れようとしたが無駄に終わった。
それから私は毎日神木に登って、アルヒレイトを待った。
10年なんて言わなければよかった。明日また会おうとか、週一くらいで会えば良かったのに。だけど結婚とか考えられなかったし。まだ10歳だったし?嫁とか言われても、ねえ?
でも5年も経って、15の誕生日を過ぎたあたりで考えた。アルヒレイトのあの顔は、ものすごく好みであれ以外みんなシケて見える。結婚するのなら、アルヒレイトがいい。連れ出してくれるのならどこでもいいし。
結局、姉様が月読の巫女に選ばれて、私の特訓は意味のないものになった。まあ、それもわかっていたことだけれど。だから、私たち余りっ子は、しかるべき人と結婚をして子を産み、真木村の血を続けていかなければならない。
万が一姉様に何かあった時のために。そして私の子供たちも巫女としての教育を受けさせる。それが永遠に続くのかと思うとため息しか出ない。
馬鹿馬鹿しい。
神様なんてどんなに祈ったって出てこないのに。
自由になりたい。こんなしがらみからとっとと抜け出して、好きな人と好きなことをやってみたい。
♢
「そろそろ10年経ったかな?」
ぼんやりそんなことを思い出していたら不意に横から声がした。ビクッとしてみると、当時と変わらない風貌のアルヒレイトが横に座って私の顔を覗き込んでいた。
「あ、アルヒレイト?」
「そうだが。キミヨは少し背が伸びたのかな」
私は16歳になっていた。
10年にはまだ4年ほど早いが、アルヒレイトが来てくれた。相変わらずキラキラした顔で、ちっとも年を取っていない。霊魂だから当然か。
「まだ10年は経ってないけど。……また会えて嬉しい」
「そうか。あまり深く眠ってしまうとあっという間に時間がすぎるからな。うたた寝をする前に出てきて良かった」
「ちょっと待って。アルヒレイト、全然変わってないんだけど、どういうこと?」
「俺は時間に左右されないからな。そうか、キミヨは時間に左右されるんだったな」
「年を取ったってこと?失礼ね。きれいになったくらいの嘘つきなさいよ」
「嘘ではなくて、きれいになったと思うぞ。以前よりお前の気は眩しいくらいだ」
にっこりと笑うアルヒレイトは記憶の中のものより眩しい。私は思わず視線をそらして俯いた。
やっぱりアルヒレイトは霊魂なのだ。だから歳をとらない。
「会いたいというつぶやきを拾ったから、来てみたんだが。そろそろ準備はできたか?」
「私をどこに連れて行くつもり?」
「俺の住んでいるところだ。お前と同じ人間もいる。だがどうもうまくいっていなくてな」
「アルヒレイトのいる国?」
「うん。キミヨの波長と合うと思うんだが」
「波長…」
「もともと、キミヨの気の波長に惹きつけられて、俺はここに引き寄せられたからな。俺んとこのチビどもと同じ波長を持っているから迷子が出たのかと思ってきてみたら、キミヨだった」
「チビってあなた、子供がいるの?」
「こども?いや…あいつらは生まれたての気の塊みたいなものだ」
「ふうん?あなた奥さんがいるとかじゃないの」
「俺はいつも一人だよ」
きょとんとして彼は言う。いつも一人なんて、寂しくないのかしら。
「そうなの?それじゃあつまんないわね」
「そうだな。時間は永遠にあるし、時たま人間とも話すが…キミヨがいたら楽しいかも知れんな」
「じゃあ、ちょっとだけ、付き合ってあげるわ」
「それはありがたい」
アルヒレイトはニカッと笑うと私の腰に手を回して闇夜に溶けた。
ミヤコのおばあちゃん君代の若かりし頃と、精霊王の出会いを書きました。
すみません、3話ほど続きます。
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「君代さん!あなたはいつもそうやって!」
ああ、うるさい。
「いい加減木登りなど止めて、少しは巫女らしくしたらいかが?」
真木村家は代々巫女として神に仕える家系だ。女として生まれたからには神に仕えるようにと育てられ、人生のレールを敷かれる。
私はそんな家系が大嫌いだった。
「姉さまたちがいらっしゃるんだから、一人くらい出来が悪くても神様は見逃してくれますよ」
「そういう問題じゃありませんでしょ!降りてらっしゃい!」
「姉さま!空はこんなにも広く青く、鳥は自由に空を舞い、風も気ままに吹き荒れるというのに、なぜ私は敷かれたレールの上を汽車のように進まなくてはならないの?このままここから飛び降りて神様に召された方が自由でいいと思わない?」
「なんてことを言うの!」
こんな会話は日常茶飯事で、いざ飛び降りてみればほんの一瞬体が軽くなった気はしても、すぐに現実に引き戻されてしまう。私はため息をついて、猿のようにキーキー文句を言うお姉様方について日々の試練を受けるため白い着物に着替えた。ああ、面倒くさい。
そろそろ神降ろしの祈祷の日。
私は神様に対して、特に何の感情も持っていないというのに。
だいたい、祈祷したってそうそう神様が降りて来るワケないじゃない。わざわざ呼び寄せて、何をお願いするっているのかしら。そもそも下賤な人間の祈りなんて、叶える価値もないでしょうに。健康になりますようにとか、商売繁盛しますようにとか。食事と運動を適度にやって努力する方がよっぽど効果があると思うけど?商売だって、買う人の立場に立って考えればいいのよ。頭使いなさいよ。何で神頼みにするのよ。そんな高位の神様を呼ぶくらいなら、たわしの神様を呼んで風呂釜磨きをしてもらった方がよっぽど助かるわ。だって私の仕事だもの!
すました顔をして正座をし、心の中で言いたい放題。邪を払えって言われても、私には無理だわ。邪な考えばかり浮かんでくるんだもの。私は普通の煩悩だらけの人間なのよ。巫女なんてムリムリ。
禊を終えてしょぼい食事を済ませた後でようやく解放され、私はいつもの神木に登り、夜空に浮かぶ三日月を見つめた。
「アルヒレイトに会いたい…」
♢
いつだったか、私はこの神木の上で人でないモノに会ったことがある。まだ10歳くらいの子供だった頃だ。あの日も躾の時間が嫌で、練習をすっぽかしてこの木に登って隠れていた。眼下で姉様たちが必死になって私を探しているのをニヤニヤしながら見ていた。
「何がそんなに面白い?」
「ん~。みんなが私を探してるから」
「ここにいるとは言わないのか?」
「言うわけないじゃん。隠れてるのに……って誰?!」
太い枝に体を預け寝転んだ状態で足をぶらぶらさせていたら、隣から声が聞こえた。少し会話をしてはた、と気づく。ここは木の上で、素知らぬ男性が私の隣で同じように下を眺めて不思議そうにしている。
「アルヒレイトという」
「あ、ある?」
「ア ル ヒ レ イ トだ。ヌシは?」
「き、キミヨ」
「キミヨか」
「あんた、誰?」
「今、名乗ったではないか」
「そ、そうじゃなくて。あんた何?誰?」
アルヒレイトと名乗った人はふむ、と考えるように顎に手を当て私を見た。
「人には見えぬか?」
人には見えぬか?
人に見えてたけど、そんなことを言われたら違うのかと思うじゃない?だいたいどこから出てきたのよ、この人。よく見れば、緑の髪の毛だしすごい器量良しだし。なんだかキラキラ眩しいんだけど。
「神様?」
「違うな」
よかった。これで神です、とか言ったら今までの不信心で地獄に落とされるかもしれなかった。ドキドキ。
「人間ではないよね。妖?」
「あやかし?」
「ええと、妖怪とか動物の霊とか、人でないもの?」
アルヒレイトはまたふむ、と考え込んだ。
「少し、違う、かな?俺は、ほらあれだ。ヌシらのいう霊魂みたいなものだ」
「幽霊か」
「よくわからんが、まあそんなものだ」
「祓ってあげようか?」
「祓う?」
「ああ、ええと。浄化するってこと。何かあって、肉体から離れた後もこの地に残っているのだから、何か無念でもあるの?」
「無念?いや。それに浄化なら俺もできるぞ」
みろ、と言ってアルヒレイトは手を振った。
すると、木々が震えるように葉を鳴らし、周囲に漂っていた黒いものがふっと消えた。
「今のは、何?!」
なんか見えた!
黒いモヤモヤしたもの。
私がぎょっとして起き上がると、アルヒレイトが笑った。
「瘴気だ。それを払っただけだ」
「瘴気?」
「ああ、悪い気だ。不安や不満、他を害しようという気が澱んでできる。この樟はなかなかきれいな気に満ちているから、この辺りにはあまりないがな」
「やっぱり、神様?」
アルヒレイトは呆れたように私を見つめた。
「さあ。俺は神に会ったことはないからな。どういうものかよく知らんが」
気がつけば姉様たちは諦めて、どこかへ行ってしまったようだ。
いつの間にか辺りは静かになって、虫の声だけが聞こえた。
「お前の気がきれいで見に来たんだが…。俺と一緒に来るか?」
「それって求婚?」
「求婚?」
「私と一緒になりたいと言ってるの?」
「一緒になりたい?いや。うん。そうなのかな?別に従属になる必要はないが」
どうも話がうまくかみ合わない。とりあえずわかったのは、この人に見えるコレは人間じゃないということと、悪い霊ではないということだ。それと私好みの器量良し。髪の色は変だけど。でも幽霊と結婚は無理な気がする。だけどここから連れ出してくれるなら、それでもいいか。
「またの機会にしてほしい」
「そうか。またの機会はいつがいいかな」
「えっ…。そ、それじゃあ10年後ぐらいにまた」
「わかった。俺は時間の流れに疎いが、10年くらいを目処にまたここで会おう」
アルヒレイトはそういうと、言葉の通り空気に溶けた。私は目をまん丸に開いて思わず手を伸ばし、そこに残った光の雫に手を触れようとしたが無駄に終わった。
それから私は毎日神木に登って、アルヒレイトを待った。
10年なんて言わなければよかった。明日また会おうとか、週一くらいで会えば良かったのに。だけど結婚とか考えられなかったし。まだ10歳だったし?嫁とか言われても、ねえ?
でも5年も経って、15の誕生日を過ぎたあたりで考えた。アルヒレイトのあの顔は、ものすごく好みであれ以外みんなシケて見える。結婚するのなら、アルヒレイトがいい。連れ出してくれるのならどこでもいいし。
結局、姉様が月読の巫女に選ばれて、私の特訓は意味のないものになった。まあ、それもわかっていたことだけれど。だから、私たち余りっ子は、しかるべき人と結婚をして子を産み、真木村の血を続けていかなければならない。
万が一姉様に何かあった時のために。そして私の子供たちも巫女としての教育を受けさせる。それが永遠に続くのかと思うとため息しか出ない。
馬鹿馬鹿しい。
神様なんてどんなに祈ったって出てこないのに。
自由になりたい。こんなしがらみからとっとと抜け出して、好きな人と好きなことをやってみたい。
♢
「そろそろ10年経ったかな?」
ぼんやりそんなことを思い出していたら不意に横から声がした。ビクッとしてみると、当時と変わらない風貌のアルヒレイトが横に座って私の顔を覗き込んでいた。
「あ、アルヒレイト?」
「そうだが。キミヨは少し背が伸びたのかな」
私は16歳になっていた。
10年にはまだ4年ほど早いが、アルヒレイトが来てくれた。相変わらずキラキラした顔で、ちっとも年を取っていない。霊魂だから当然か。
「まだ10年は経ってないけど。……また会えて嬉しい」
「そうか。あまり深く眠ってしまうとあっという間に時間がすぎるからな。うたた寝をする前に出てきて良かった」
「ちょっと待って。アルヒレイト、全然変わってないんだけど、どういうこと?」
「俺は時間に左右されないからな。そうか、キミヨは時間に左右されるんだったな」
「年を取ったってこと?失礼ね。きれいになったくらいの嘘つきなさいよ」
「嘘ではなくて、きれいになったと思うぞ。以前よりお前の気は眩しいくらいだ」
にっこりと笑うアルヒレイトは記憶の中のものより眩しい。私は思わず視線をそらして俯いた。
やっぱりアルヒレイトは霊魂なのだ。だから歳をとらない。
「会いたいというつぶやきを拾ったから、来てみたんだが。そろそろ準備はできたか?」
「私をどこに連れて行くつもり?」
「俺の住んでいるところだ。お前と同じ人間もいる。だがどうもうまくいっていなくてな」
「アルヒレイトのいる国?」
「うん。キミヨの波長と合うと思うんだが」
「波長…」
「もともと、キミヨの気の波長に惹きつけられて、俺はここに引き寄せられたからな。俺んとこのチビどもと同じ波長を持っているから迷子が出たのかと思ってきてみたら、キミヨだった」
「チビってあなた、子供がいるの?」
「こども?いや…あいつらは生まれたての気の塊みたいなものだ」
「ふうん?あなた奥さんがいるとかじゃないの」
「俺はいつも一人だよ」
きょとんとして彼は言う。いつも一人なんて、寂しくないのかしら。
「そうなの?それじゃあつまんないわね」
「そうだな。時間は永遠にあるし、時たま人間とも話すが…キミヨがいたら楽しいかも知れんな」
「じゃあ、ちょっとだけ、付き合ってあげるわ」
「それはありがたい」
アルヒレイトはニカッと笑うと私の腰に手を回して闇夜に溶けた。
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