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第4章:聖地アードグイ編
第82話:不安な旅立ち
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「というわけだから、今からそっち行くわ」
アイザックが伝達石を使って、クルトとミヤコに連絡を入れた。ミヤコを救世主のように掲げ、それまで虐げられてきたグレンフェールの住人たちは、ルノーに従い町おこしを始めた。
何はともあれ、まずは生活を立て直さなければ。勢いだけで国は変わらない。独自の生産力、防御力を高め、権力に対抗できるだけの人員を集める。ルノーは住民と討伐隊に指示を出した。その場にいた討伐隊員や戦士、冒険者はそれぞれ小さな町村に話すべく旅立っていった。
ルブラート教については、まだ話す時ではないとアイザックが口止めをした。モンファルトがルブラート教に集中していた方が、都合がいい。その間、ミヤコたちが聖地を浄化する時間ができるからだ。それがどのくらいかかるのかは、わからないが。
サトクリフについては、アイザックが監視をすることで落ち着いた。
「絶対にミヤさんに危害を加えないようにしてくださいよ、アイザックさん」
「バーカ。俺がそんなヘマするかよ。それに嬢ちゃんはハルクルトが絶対守るだろ」
「本当なら、俺がついて行きたかったのに」
「アッシュたちと連絡を取り合う必要もあるからな。お前の方が適任なんだよ、悪いな」
「わかってるっス。それから、できればガーネット・サトクリフをこちら側に引っこ抜いてくださいね」
「あいつ、使えると思うか?」
「腐っても聖騎士隊長ですからね。軍師のお墨付きでしょうし、強いっス。幸い王子を嫌ってるみたいだし、アッシュと似たようなタイプと見ました。あの鼻持ちならない矜持さえ崩せればなんとかなるっス」
「そうか。くそ真面目なやつらは苦手なんだが、まあやってみるよ」
「頼んます」
ルノーとしては、サトクリフに旅の間に考えを変えてもらい、寝返ってもらいたいところだが、それもアイザックの手腕にかかってくる。一つ懸念が残るのは、サトクリフがハルクルトの元婚約者、マリゴールドと繋がっていることだ。ハルクルトを怒らせなければいいが。ルノーは眠れる赤獅子を起こしてくれるな、と願うばかりであった。
*****
伝達石の反応が無くなったところで、ミヤコが青ざめながらクルトに聞いた。
「反乱軍って……なんか話が大きくなってるね?」
「早かれ遅かれ、こうなることはわかっていたんだ。ミヤを巻き込むつもりはなかったんだが」
「あはは。私もやりたい放題やっちゃったし、仕方ないね」
クルトが眉をハの字にして、ミヤコの手を取った。
「必ず、守るから…」
「うん。期待してる」
ミヤコが速攻でそういうと、クルトは瞬きをして、ぷっと吹き出した。
「言うようになったな」
「へへ。慣れですね。クルトさんが強いのわかってるし。このショールもあるし。それに、アイザックさんもルノーさんも覚悟を決めて前に進み始めたんだもの。私がここで尻込みしてちゃ、みんなに迷惑かかるしね」
「みんなも、この不毛な生活を変えようと頑張ってる」
「うん。早く瘴気を全部無くして、魔獣や瘴気の恐怖をなくさないとね」
クルトは、眩しげに都を見つめるとギュッと抱きしめた。
「ミヤの強さには、感服するよ」
「じゃあ、私がクルトさんを守らないとね」
「はは。期待してるよ」
『キャーーーーー』
森の方から精霊たちが大はしゃぎで飛んでくるのを見て、ミヤコが目を丸くした。
「シロウ!」
白マロッカのシロウがカポカポと近づき、ミヤコに鼻面を寄せた。
「来てくれたのね!ありがとう」
『ブルル』
『キャーー!』
精霊たちも嬉しそうに飛び回り、クルトとミヤコに張り付いた。
「わ、みんなも。いっぱい助けてくれてありがとうね。みんなのおかげで街も村もアイザックさんもルノーさんも無事だったよ。本当にありがとう!」
『キャーーーー!』
「ミヤコ」
次いで、祖母のキミヨが森から出てきた。
「おばあちゃん」
「大変だったわね。本当に無事でよかったわ。哲也たちは納得してくれた?」
「うん。クルトさんは脅されてたけど」
ぷぷっと笑って肘でクルトを突つく。
「そう。よかったわ。それでこれからなんだけど」
クルトは、ざっと現状をキミヨに話し、サトクリフがミヤコを王宮に献上しようと画策していること、モンファルトが王の座を狙っていることなどもかいつまんで話をした。
「革命が起こります。僕たちは愛し子と薬師聖女の教えに従い、国を立て直したい。ルノーがグレンフェールから指揮を摂り、僕たちが聖地を浄化したのち、王都で落ち合うよう予定を立てるつもりです」
「わかったわ。本来なら、精霊は人間の営みに口を出すべきではないのだけど、今回は別よ。大精霊ともあろうものが、ことごとく人間であるあなたたちに助けられているんですもの。指をくわえて傍観しているわけにはいかないわ。そもそも、これはアルヒレイトの失態。あの人にも絶対責任を取らせるから、こっちは任せてちょうだい!」
キミヨはムン、と胸を張り鼻息荒くミヤコたちに約束をした。
「黙って孫娘をいいようにされるものですか!」
『キャーー!!』
精霊たちも同意のようだった。
「森の恵みを持ってきたの。先は長いでしょ」
キミヨは精霊を使って貢物のように薬草や果物、苗や球根を積み上げた。その中にはなぜかペットボトルのイオンドリンクや、日本酒、各種チューハイも含まれていた。
「ちょ…おばあちゃん、これ、どこから…」
「やあねえ。ちょくちょく向こうにも帰ってるから、哲也にお願いしてるのよ。ミヤコがお供えにおいてくれたでしょ?あれ以来ハマっちゃって」
「エエェ…」
逆にクルトは、目をキラキラさせながらキミヨに礼を告げて、いそいそと空間魔法に収納していた。よほど気に入っているのだと思う。まあ、回復薬と思えば当然か、とミヤコは肩をすくめた。
キミヨが精霊王と話をつけてくると言って去った後、ようやくアイザックと聖騎士のガーネット・サトクリフが転移魔法で緑の砦前までやってきた。
*****
「は、初めまして。真木村都です」
「む…マ、マキ…?」
「あ、ミヤで、いいです」
ガーネット・サトクリフは背の高い女性だった。聖騎士の鎧兜はつけておらず、冒険者のような格好をしているが、長身な上、豊かな亜麻色の髪をポーテールに結いあげ、前髪はポンパドールにして髪の毛が顔にかからないようにしている。
気の強さは顔に出ているものの、きりりとした切れ長の目を囲む、亜麻色の長い睫毛、通った鼻筋と薄い唇が、気品を帯びている。胸元を編み上げにしたラフな生成りのシャツに、焦げ茶色のぴったりしたパンツが無駄のない長い足を象ってスタイルの良さを強調していた。
———うわ、ものすごい美人!
こっちの人はなんでこうも美形なのか。ミヤコはコンプレックスに押しつぶされそうになって、視線を外した。
「そうか。貴女が、聖女か」
「違います」
ミヤコは速攻できっぱりと言い放った。これだけは誤解のないようにしておかないと、聖女だの女神だのにまた祭り上げられてしまう。その上、サトクリフはミヤコを王宮に連れて帰ろうと画策しているのだ。
「しかし、数々の奇跡を成し遂げたと聞いたが」
「奇跡じゃないです。私が使うのは、皆さんの使う魔法のようなもので、精霊の力を借りているだけです」
「……ふむ。謙虚なのだな」
「えー……そういうわけでもない、と思うんですが…」
どちらかというと、図々しいのでは、と思いクルトをちらりと見上げた。目があったクルトはにこりと軽く微笑み、ミヤコの肩に手を回し、自分の方に引き寄せた。
「え、ちょっと、クルトさん?」
「さあ、挨拶も済ませたし、とっとと出かけようか」
クルトの顔には、作り物の笑顔が張り付き、サトクリフの視線を牽制した。
「ハルクルト…マリゴールド様がよろしくとおっしゃってました」
「それはどうも」
「マリゴールド様」
確か、クルトの元婚約者だった人だ。アッシュの奥さんになったんじゃなかったっけ?子供がいるとか言ってたような。
「ただの知り合いだよ、ミヤ。軍師のコマだ」
クルトはそういうとミヤコを連れて踵を返し、さっさとミヤコを抱き上げるとシロウに乗せた。聞く耳すら持ちたくなさそうで、ミヤコにも聞かせたくないという態度が丸わかりだ。笑顔なのだが、目が怖い。
「あ、あの?クルトさん?」
知っていることだから気にしなくてもいいのに、と狼狽えるミヤコを見てサトクリフは勘違いをしたようだ。ニヤリと綺麗な顔を歪め、口早に説明に入った。
「やあ、ミヤさんはご存知ないんですね?マリゴールド様はハルクルト元隊長の婚約者です。ハルクルトが怪我で隊を退くまではそれはもう仲睦まじく、」
「間違えるな。元・婚約者だ。現・アッシュ・バートンの正妻でね。子供もいるらしい。誰の子かは知らんがね。あぁ、もちろんミヤは知ってるよ。まあ、名前までわざわざ覚える必要はなかったから、言ってないかもしれないがね」
クルトはそういうとミヤの後ろからシロウにまたがった。
「無駄口は走りながら聞こう。さあ、出発だ」
そういうと、後ろを振り返りもぜずクルトはシロウを促した。
「……おーい。俺のことは完璧無視かよ」
アイザックが呆れたように、自分のマロッカの尻を叩いて後に続いた。
その後ろから無言で睨みつけるサトクリフの視線を感じながら、アイザックは心の中でため息をついた。
———こりゃ、前途多難だぜ。くそ、ルノーに代わって貰えば良かった。
気楽な方を先手で選んだつもりだったアイザックだったが、今回ばかりは貧乏くじを引いたと舌を打った。
アイザックが伝達石を使って、クルトとミヤコに連絡を入れた。ミヤコを救世主のように掲げ、それまで虐げられてきたグレンフェールの住人たちは、ルノーに従い町おこしを始めた。
何はともあれ、まずは生活を立て直さなければ。勢いだけで国は変わらない。独自の生産力、防御力を高め、権力に対抗できるだけの人員を集める。ルノーは住民と討伐隊に指示を出した。その場にいた討伐隊員や戦士、冒険者はそれぞれ小さな町村に話すべく旅立っていった。
ルブラート教については、まだ話す時ではないとアイザックが口止めをした。モンファルトがルブラート教に集中していた方が、都合がいい。その間、ミヤコたちが聖地を浄化する時間ができるからだ。それがどのくらいかかるのかは、わからないが。
サトクリフについては、アイザックが監視をすることで落ち着いた。
「絶対にミヤさんに危害を加えないようにしてくださいよ、アイザックさん」
「バーカ。俺がそんなヘマするかよ。それに嬢ちゃんはハルクルトが絶対守るだろ」
「本当なら、俺がついて行きたかったのに」
「アッシュたちと連絡を取り合う必要もあるからな。お前の方が適任なんだよ、悪いな」
「わかってるっス。それから、できればガーネット・サトクリフをこちら側に引っこ抜いてくださいね」
「あいつ、使えると思うか?」
「腐っても聖騎士隊長ですからね。軍師のお墨付きでしょうし、強いっス。幸い王子を嫌ってるみたいだし、アッシュと似たようなタイプと見ました。あの鼻持ちならない矜持さえ崩せればなんとかなるっス」
「そうか。くそ真面目なやつらは苦手なんだが、まあやってみるよ」
「頼んます」
ルノーとしては、サトクリフに旅の間に考えを変えてもらい、寝返ってもらいたいところだが、それもアイザックの手腕にかかってくる。一つ懸念が残るのは、サトクリフがハルクルトの元婚約者、マリゴールドと繋がっていることだ。ハルクルトを怒らせなければいいが。ルノーは眠れる赤獅子を起こしてくれるな、と願うばかりであった。
*****
伝達石の反応が無くなったところで、ミヤコが青ざめながらクルトに聞いた。
「反乱軍って……なんか話が大きくなってるね?」
「早かれ遅かれ、こうなることはわかっていたんだ。ミヤを巻き込むつもりはなかったんだが」
「あはは。私もやりたい放題やっちゃったし、仕方ないね」
クルトが眉をハの字にして、ミヤコの手を取った。
「必ず、守るから…」
「うん。期待してる」
ミヤコが速攻でそういうと、クルトは瞬きをして、ぷっと吹き出した。
「言うようになったな」
「へへ。慣れですね。クルトさんが強いのわかってるし。このショールもあるし。それに、アイザックさんもルノーさんも覚悟を決めて前に進み始めたんだもの。私がここで尻込みしてちゃ、みんなに迷惑かかるしね」
「みんなも、この不毛な生活を変えようと頑張ってる」
「うん。早く瘴気を全部無くして、魔獣や瘴気の恐怖をなくさないとね」
クルトは、眩しげに都を見つめるとギュッと抱きしめた。
「ミヤの強さには、感服するよ」
「じゃあ、私がクルトさんを守らないとね」
「はは。期待してるよ」
『キャーーーーー』
森の方から精霊たちが大はしゃぎで飛んでくるのを見て、ミヤコが目を丸くした。
「シロウ!」
白マロッカのシロウがカポカポと近づき、ミヤコに鼻面を寄せた。
「来てくれたのね!ありがとう」
『ブルル』
『キャーー!』
精霊たちも嬉しそうに飛び回り、クルトとミヤコに張り付いた。
「わ、みんなも。いっぱい助けてくれてありがとうね。みんなのおかげで街も村もアイザックさんもルノーさんも無事だったよ。本当にありがとう!」
『キャーーーー!』
「ミヤコ」
次いで、祖母のキミヨが森から出てきた。
「おばあちゃん」
「大変だったわね。本当に無事でよかったわ。哲也たちは納得してくれた?」
「うん。クルトさんは脅されてたけど」
ぷぷっと笑って肘でクルトを突つく。
「そう。よかったわ。それでこれからなんだけど」
クルトは、ざっと現状をキミヨに話し、サトクリフがミヤコを王宮に献上しようと画策していること、モンファルトが王の座を狙っていることなどもかいつまんで話をした。
「革命が起こります。僕たちは愛し子と薬師聖女の教えに従い、国を立て直したい。ルノーがグレンフェールから指揮を摂り、僕たちが聖地を浄化したのち、王都で落ち合うよう予定を立てるつもりです」
「わかったわ。本来なら、精霊は人間の営みに口を出すべきではないのだけど、今回は別よ。大精霊ともあろうものが、ことごとく人間であるあなたたちに助けられているんですもの。指をくわえて傍観しているわけにはいかないわ。そもそも、これはアルヒレイトの失態。あの人にも絶対責任を取らせるから、こっちは任せてちょうだい!」
キミヨはムン、と胸を張り鼻息荒くミヤコたちに約束をした。
「黙って孫娘をいいようにされるものですか!」
『キャーー!!』
精霊たちも同意のようだった。
「森の恵みを持ってきたの。先は長いでしょ」
キミヨは精霊を使って貢物のように薬草や果物、苗や球根を積み上げた。その中にはなぜかペットボトルのイオンドリンクや、日本酒、各種チューハイも含まれていた。
「ちょ…おばあちゃん、これ、どこから…」
「やあねえ。ちょくちょく向こうにも帰ってるから、哲也にお願いしてるのよ。ミヤコがお供えにおいてくれたでしょ?あれ以来ハマっちゃって」
「エエェ…」
逆にクルトは、目をキラキラさせながらキミヨに礼を告げて、いそいそと空間魔法に収納していた。よほど気に入っているのだと思う。まあ、回復薬と思えば当然か、とミヤコは肩をすくめた。
キミヨが精霊王と話をつけてくると言って去った後、ようやくアイザックと聖騎士のガーネット・サトクリフが転移魔法で緑の砦前までやってきた。
*****
「は、初めまして。真木村都です」
「む…マ、マキ…?」
「あ、ミヤで、いいです」
ガーネット・サトクリフは背の高い女性だった。聖騎士の鎧兜はつけておらず、冒険者のような格好をしているが、長身な上、豊かな亜麻色の髪をポーテールに結いあげ、前髪はポンパドールにして髪の毛が顔にかからないようにしている。
気の強さは顔に出ているものの、きりりとした切れ長の目を囲む、亜麻色の長い睫毛、通った鼻筋と薄い唇が、気品を帯びている。胸元を編み上げにしたラフな生成りのシャツに、焦げ茶色のぴったりしたパンツが無駄のない長い足を象ってスタイルの良さを強調していた。
———うわ、ものすごい美人!
こっちの人はなんでこうも美形なのか。ミヤコはコンプレックスに押しつぶされそうになって、視線を外した。
「そうか。貴女が、聖女か」
「違います」
ミヤコは速攻できっぱりと言い放った。これだけは誤解のないようにしておかないと、聖女だの女神だのにまた祭り上げられてしまう。その上、サトクリフはミヤコを王宮に連れて帰ろうと画策しているのだ。
「しかし、数々の奇跡を成し遂げたと聞いたが」
「奇跡じゃないです。私が使うのは、皆さんの使う魔法のようなもので、精霊の力を借りているだけです」
「……ふむ。謙虚なのだな」
「えー……そういうわけでもない、と思うんですが…」
どちらかというと、図々しいのでは、と思いクルトをちらりと見上げた。目があったクルトはにこりと軽く微笑み、ミヤコの肩に手を回し、自分の方に引き寄せた。
「え、ちょっと、クルトさん?」
「さあ、挨拶も済ませたし、とっとと出かけようか」
クルトの顔には、作り物の笑顔が張り付き、サトクリフの視線を牽制した。
「ハルクルト…マリゴールド様がよろしくとおっしゃってました」
「それはどうも」
「マリゴールド様」
確か、クルトの元婚約者だった人だ。アッシュの奥さんになったんじゃなかったっけ?子供がいるとか言ってたような。
「ただの知り合いだよ、ミヤ。軍師のコマだ」
クルトはそういうとミヤコを連れて踵を返し、さっさとミヤコを抱き上げるとシロウに乗せた。聞く耳すら持ちたくなさそうで、ミヤコにも聞かせたくないという態度が丸わかりだ。笑顔なのだが、目が怖い。
「あ、あの?クルトさん?」
知っていることだから気にしなくてもいいのに、と狼狽えるミヤコを見てサトクリフは勘違いをしたようだ。ニヤリと綺麗な顔を歪め、口早に説明に入った。
「やあ、ミヤさんはご存知ないんですね?マリゴールド様はハルクルト元隊長の婚約者です。ハルクルトが怪我で隊を退くまではそれはもう仲睦まじく、」
「間違えるな。元・婚約者だ。現・アッシュ・バートンの正妻でね。子供もいるらしい。誰の子かは知らんがね。あぁ、もちろんミヤは知ってるよ。まあ、名前までわざわざ覚える必要はなかったから、言ってないかもしれないがね」
クルトはそういうとミヤの後ろからシロウにまたがった。
「無駄口は走りながら聞こう。さあ、出発だ」
そういうと、後ろを振り返りもぜずクルトはシロウを促した。
「……おーい。俺のことは完璧無視かよ」
アイザックが呆れたように、自分のマロッカの尻を叩いて後に続いた。
その後ろから無言で睨みつけるサトクリフの視線を感じながら、アイザックは心の中でため息をついた。
———こりゃ、前途多難だぜ。くそ、ルノーに代わって貰えば良かった。
気楽な方を先手で選んだつもりだったアイザックだったが、今回ばかりは貧乏くじを引いたと舌を打った。
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