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シンファエルの憂い③
アルヴィーナが私の婚約者になって、初めての会合が城で開かれた。
私は浮かれて何日も前から何をしようか計画を立て、甘いお菓子もたくさん用意した。
気に入ってくれるといいな。
あのビュッフェテーブルでたくさん食べていたから、きっと今日もたくさん食べるだろう。
食べ終わったら母上のバラ園をエスコートして、楽団を呼んでコンサートを開いてもいいかもしれない。
そんな甘い考えは、初日から崩れ落ちることになる。
大雨だった。先週までいい天気だったのに、なんて運が悪いんだろう。
日を改めた方が良いのかなと思ったが、せっかくあの美しいアルヴィーナに会えるのだし、城の中でもお茶会はできる。
と思ったのに伯父上が来た。
「王子妃になるためには王子妃教育というものがあるのだから、アルヴィーナ嬢は遊びに来るわけではないのだよ」
「初日くらい、良いではないですか」
「これから6年のうちに王子妃としての教育を受けてもらわなければならないし、殿下が立太子されたら王太子妃としての教育もあるのです。一日とて無駄にはできません。殿下にも教育係が着きましたから、しっかり王太子としての心得を学んでください」
「お茶の時間くらいいいでしょう?」
「そうですね…。もちろん休憩時間はありますから、お茶を共にしたいのであれば、それまでに殿下はご自身の課題を終わらせてください」
「ええ……そんな」
そうしてアルヴィーナ嬢は登城したものの、教育係に攫われて帰る間際の30分しか私との時間が取れなかった。
そうしているうちに数週間がすぎて、久しぶりに時間を合わせることができた私は、剣技の授業をすっぽかしてアルヴィーナに会いに行った。
「ねえ、アルヴィーナ嬢。私たちは婚約者なのだから、もっとお互いを知る必要があるね」
「そう思うのでしたら、殿下。もっと精力的にお勉強をいたしましょうよ。今日の課題もまだ終えていませんよね?」
「勉強?いや……それより今日は天気もいいし、ピクニックに行かないか?」
「ピクニック?……それは森に行くということでしょうか?」
「森?いや、王宮の庭に四阿があるからそこで…」
「リンゴの木がありますか?」
「りんご?」
「キノコは?」
「きのこ?」
「毒草はどうでしょうか?薬草は?舌下蘭が我が領では見頃ですのよ。アレから取れる蜜はキラービーを引きつけて酔わせますの。そうしたら蜂蜜も手に入りますわね?」
「え?キ、キラービー?」
「まあ、この王国のどこにでもいる魔物でしてよ。森に入れば、そこら中にいますわよ?平民でも知っていますのに、ご存じありませんの?お手製の魔物図鑑を今度持って参りますわ。キラービーのハチミツはプルプルしたロイヤルゼリーの部分がお肌にも髪にも潤いを与えて、素晴らしいんですのよ。我が伯爵領ではお化粧品の新製品として開発中ですの。それに合わせて蜜蝋を使った保存紙の開発も進んでいまして、これで包めば鮮度が落ちないという謳い文句で……云々かんぬん」
アルヴィーナ嬢の話は全くチンプンカンプンだった。
リンゴからキノコになって、なんとからんの話からいきなりキラービーになってしまった。
キラービーって蜂の魔物?危険なんじゃないの?
ロイヤルゼリーってなんだ?
ポカンとしていると、母上がやってきて、ロイヤルゼリーの話を詳しく教えて欲しいとアルヴィーナ嬢を連れていってしまった。
なんなんだ?
それからと言うもの、アルヴィーナ嬢が来ると母上が連れていってしまい、私との時間は30分以下になった。
「母上!アルヴィーナ嬢は私の婚約者です。連れいて行かないでください!」
「シンファエル。ヴィーナちゃんは王子妃教育、王太子妃教育、そしてお妃教育というものをこれから何年もかけてこなさなければならないの。あなたがもっと自覚を持って勉強をしてくれるというのであれば、ヴィーナちゃんの負担も少しは減ると思うのだけど?」
ヴィーナちゃん?私はまだアルヴィーナ嬢と呼んでいるのに?
「な、…それとこれは別の話でしょう?」
「あなたもせめて、自分の妃を守れるほどの力をつけるべきだと思うのよ?」
「また剣の稽古の話ですか?」
「剣だけではなくて、魔法もそう。ヴィーナちゃんは剣も魔法も得意で水魔法、風魔法、火魔法を使えるの。あなたはどうかしら?」
「えっ……?わ、私は……」
そんなにたくさんの魔法が使えるなんて。
だって、アルヴィーナ嬢はまだ学園にも通っていない。
なんで魔法が使えるんだ?
私だって家庭教師からはまだ魔法の定義を学んでいるところなのに。
「わ、わかりました……。魔法の練習をしてきます」
魔法なんて。
使えればそりゃあ、楽しいかもしれないけど。
日常生活に必要ないじゃないか。
せいぜいハープを奏でるのに風魔法を使うくらいで、他にどこにも使うところなんかないのに。
私は浮かれて何日も前から何をしようか計画を立て、甘いお菓子もたくさん用意した。
気に入ってくれるといいな。
あのビュッフェテーブルでたくさん食べていたから、きっと今日もたくさん食べるだろう。
食べ終わったら母上のバラ園をエスコートして、楽団を呼んでコンサートを開いてもいいかもしれない。
そんな甘い考えは、初日から崩れ落ちることになる。
大雨だった。先週までいい天気だったのに、なんて運が悪いんだろう。
日を改めた方が良いのかなと思ったが、せっかくあの美しいアルヴィーナに会えるのだし、城の中でもお茶会はできる。
と思ったのに伯父上が来た。
「王子妃になるためには王子妃教育というものがあるのだから、アルヴィーナ嬢は遊びに来るわけではないのだよ」
「初日くらい、良いではないですか」
「これから6年のうちに王子妃としての教育を受けてもらわなければならないし、殿下が立太子されたら王太子妃としての教育もあるのです。一日とて無駄にはできません。殿下にも教育係が着きましたから、しっかり王太子としての心得を学んでください」
「お茶の時間くらいいいでしょう?」
「そうですね…。もちろん休憩時間はありますから、お茶を共にしたいのであれば、それまでに殿下はご自身の課題を終わらせてください」
「ええ……そんな」
そうしてアルヴィーナ嬢は登城したものの、教育係に攫われて帰る間際の30分しか私との時間が取れなかった。
そうしているうちに数週間がすぎて、久しぶりに時間を合わせることができた私は、剣技の授業をすっぽかしてアルヴィーナに会いに行った。
「ねえ、アルヴィーナ嬢。私たちは婚約者なのだから、もっとお互いを知る必要があるね」
「そう思うのでしたら、殿下。もっと精力的にお勉強をいたしましょうよ。今日の課題もまだ終えていませんよね?」
「勉強?いや……それより今日は天気もいいし、ピクニックに行かないか?」
「ピクニック?……それは森に行くということでしょうか?」
「森?いや、王宮の庭に四阿があるからそこで…」
「リンゴの木がありますか?」
「りんご?」
「キノコは?」
「きのこ?」
「毒草はどうでしょうか?薬草は?舌下蘭が我が領では見頃ですのよ。アレから取れる蜜はキラービーを引きつけて酔わせますの。そうしたら蜂蜜も手に入りますわね?」
「え?キ、キラービー?」
「まあ、この王国のどこにでもいる魔物でしてよ。森に入れば、そこら中にいますわよ?平民でも知っていますのに、ご存じありませんの?お手製の魔物図鑑を今度持って参りますわ。キラービーのハチミツはプルプルしたロイヤルゼリーの部分がお肌にも髪にも潤いを与えて、素晴らしいんですのよ。我が伯爵領ではお化粧品の新製品として開発中ですの。それに合わせて蜜蝋を使った保存紙の開発も進んでいまして、これで包めば鮮度が落ちないという謳い文句で……云々かんぬん」
アルヴィーナ嬢の話は全くチンプンカンプンだった。
リンゴからキノコになって、なんとからんの話からいきなりキラービーになってしまった。
キラービーって蜂の魔物?危険なんじゃないの?
ロイヤルゼリーってなんだ?
ポカンとしていると、母上がやってきて、ロイヤルゼリーの話を詳しく教えて欲しいとアルヴィーナ嬢を連れていってしまった。
なんなんだ?
それからと言うもの、アルヴィーナ嬢が来ると母上が連れていってしまい、私との時間は30分以下になった。
「母上!アルヴィーナ嬢は私の婚約者です。連れいて行かないでください!」
「シンファエル。ヴィーナちゃんは王子妃教育、王太子妃教育、そしてお妃教育というものをこれから何年もかけてこなさなければならないの。あなたがもっと自覚を持って勉強をしてくれるというのであれば、ヴィーナちゃんの負担も少しは減ると思うのだけど?」
ヴィーナちゃん?私はまだアルヴィーナ嬢と呼んでいるのに?
「な、…それとこれは別の話でしょう?」
「あなたもせめて、自分の妃を守れるほどの力をつけるべきだと思うのよ?」
「また剣の稽古の話ですか?」
「剣だけではなくて、魔法もそう。ヴィーナちゃんは剣も魔法も得意で水魔法、風魔法、火魔法を使えるの。あなたはどうかしら?」
「えっ……?わ、私は……」
そんなにたくさんの魔法が使えるなんて。
だって、アルヴィーナ嬢はまだ学園にも通っていない。
なんで魔法が使えるんだ?
私だって家庭教師からはまだ魔法の定義を学んでいるところなのに。
「わ、わかりました……。魔法の練習をしてきます」
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