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綺麗なものが好きなくせに、全然綺麗好きじゃない王子の矛盾
「さあ、まずは服を脱ぎましょうか」
数日後、俺は宰相と書面のやりとりをし、王子をアルヴィーナの好みの男に仕上げることをメインとして、1年以内に騎士と魔導士の中からアルヴィーナに忠誠を誓える男を側近として選定することを約束した。
そもそも俺は26歳で殿下は16歳という若さだ。側近は歳の近い騎士や魔導士を候補に挙げた方が先々有利になるし、アルヴィーナにとっても扱いやすいだろうと思う。
その上で、再教育に必要な処置に国王をはじめ王妃も宰相も口出しをしないことを前提とし、一年で形にならなければ、俺にできることはないとして手を引く。
いわば「手の施しようがありません」と見放すことになるため、その後の処分は王家に任せることにする。
宰相は廃嫡も考えていると言っていたが、この国大丈夫なんでしょうかね?
そして俺は王家の秘密は他言しないこと、私利私欲で王子を教育しない事、週に一回の報告をすることなど魔法契約を結んだ。
魔法契約は神聖魔法契約と同様に破れば罰則がつきまとう絶対契約になる。神聖魔法は神殿を通し婚姻や家の取り決めなどに使うのに対し、魔法契約は個人の取り決めに使われる。今回の件については、国王と王妃、宰相を相手に俺個人が結んだ契約である。一年以内に形なれば、俺が望むものを望むことができるというものだ。国はあげないよ、と念を押されたが、そんなもんいるかってーの。
一週間の謹慎を受けた殿下は、大人しく自分の部屋に閉じこもっていたようで、部屋の扉を開けた途端にモワッと体臭が風に乗り、入り口にいた俺の鼻に付いた。
扉の手前で護衛をしていた騎士達もグゥッとうなり顔を背ける。
く…くせえ。
アルヴィーナのいう通り、この男の体臭は絶対いただけない。アンモニア臭とそれを誤魔化すための香水が、風呂嫌いな王子の体臭と混ざり合って吐きそうになる。
あ、騎士の一人が廊下にあった飾り壺に吐いた。
もう一人は魂が抜けたような顔になってそっぽを向いている。
うん、わかる。貰いゲロするタイプなのね。
この体臭は、ほとんど毒ガスである。
俺は躊躇わず空気清浄の魔法をかけて、爽やかオーシャン・ブリーズの香りの粒を散りばめてやった。目に見えてほっとする騎士を横目に俺も一息ついた。
ふう。
よくまあ、これに寄ってくる女がいたモンだ。侯爵家の例の令嬢の鼻はどうなってるんだ?ほんとにこの体を受け入れたのか?おかしな侯爵令嬢用の特訓とかあるのか?もしかして。
伯爵領にある遊郭の情婦ですら立ち入り禁止を言い渡すレベルだろう、これ。
ともかく、この部屋には自動浄化システムでも作るか。
まずは綺麗なものが好きなくせに、全然綺麗好きじゃない王子の矛盾をまずは直さねば。
俺を見て後ずさる王子に、俺はますます笑顔を貼り付けた。
逃げてんじゃねぇよ。俺だっててめえのヌードなんか見たかねえけど、仕方ねえんだよ。
「さ、とっとと脱いでください」
俺はずいっと一歩、部屋に足を踏み入れた。
「な、なぜだ」
「臭いからです」
「く、臭い、だと?わ、私は王子だぞ!?」
「ええ。王子であろうとも臭いものは臭いんです。どれだけ風呂に入ってないんですか?そのうち股間にハエが湧きますよ」
「ハエ!?」
「ええ、あいつらは垢とか排泄物とか大好きですからね。その辺を食料にして下手したら大事なソコも食われちゃうかもしれませんネェ。妙に魔物化して巨大な蝿になったらどうします?」
青ざめた王子は、大慌てで素っ裸になった。
冗談なんだが、知識の浅い王子は本気に取ったようだった。
ひとまず上半身だけでよかったんだが、まあいっか。
いやそれにしても汚ねえ。パンツも見たくねえ。
王子の体はマダラ状に垢がこびりつき、元の肌の色も定かではない。伯爵領に昔あった貧民街の大人でもこんなのは見たことがなかった。おそらくたまにゴシゴシ垢を落として、でも完全に落とさないからマダラになっていったんだと思う。カビとか生えてんじゃないだろうか。ゴブリンも逃げ出す汚さだな、おい。
王城から感染症発生とかなったら、笑えない冗談だ。
これは持ってきたヘチマタワシでも一度の洗浄じゃ厳しいかもしれない。下手したら皮膚ごと削げ落ちるかもしれねえ。
「よくもまあ、ソコまで垢をためましたね。皮膚病と、病原菌の検査もするべきですが……。ひとまず私のもってきたヘチマタワシでも無理そうなんで《洗浄》」
「ウヒィ!!?」
仕方なく、洗浄魔法をかける。
洗浄魔法は完全に汚れが落ちるわけではなく、プレウォッシュと呼ぶもので、本格洗いの前の水洗いみたいなものだ。 こびりついた汚れを浮かせるだけの役割を果たす。
数日後、俺は宰相と書面のやりとりをし、王子をアルヴィーナの好みの男に仕上げることをメインとして、1年以内に騎士と魔導士の中からアルヴィーナに忠誠を誓える男を側近として選定することを約束した。
そもそも俺は26歳で殿下は16歳という若さだ。側近は歳の近い騎士や魔導士を候補に挙げた方が先々有利になるし、アルヴィーナにとっても扱いやすいだろうと思う。
その上で、再教育に必要な処置に国王をはじめ王妃も宰相も口出しをしないことを前提とし、一年で形にならなければ、俺にできることはないとして手を引く。
いわば「手の施しようがありません」と見放すことになるため、その後の処分は王家に任せることにする。
宰相は廃嫡も考えていると言っていたが、この国大丈夫なんでしょうかね?
そして俺は王家の秘密は他言しないこと、私利私欲で王子を教育しない事、週に一回の報告をすることなど魔法契約を結んだ。
魔法契約は神聖魔法契約と同様に破れば罰則がつきまとう絶対契約になる。神聖魔法は神殿を通し婚姻や家の取り決めなどに使うのに対し、魔法契約は個人の取り決めに使われる。今回の件については、国王と王妃、宰相を相手に俺個人が結んだ契約である。一年以内に形なれば、俺が望むものを望むことができるというものだ。国はあげないよ、と念を押されたが、そんなもんいるかってーの。
一週間の謹慎を受けた殿下は、大人しく自分の部屋に閉じこもっていたようで、部屋の扉を開けた途端にモワッと体臭が風に乗り、入り口にいた俺の鼻に付いた。
扉の手前で護衛をしていた騎士達もグゥッとうなり顔を背ける。
く…くせえ。
アルヴィーナのいう通り、この男の体臭は絶対いただけない。アンモニア臭とそれを誤魔化すための香水が、風呂嫌いな王子の体臭と混ざり合って吐きそうになる。
あ、騎士の一人が廊下にあった飾り壺に吐いた。
もう一人は魂が抜けたような顔になってそっぽを向いている。
うん、わかる。貰いゲロするタイプなのね。
この体臭は、ほとんど毒ガスである。
俺は躊躇わず空気清浄の魔法をかけて、爽やかオーシャン・ブリーズの香りの粒を散りばめてやった。目に見えてほっとする騎士を横目に俺も一息ついた。
ふう。
よくまあ、これに寄ってくる女がいたモンだ。侯爵家の例の令嬢の鼻はどうなってるんだ?ほんとにこの体を受け入れたのか?おかしな侯爵令嬢用の特訓とかあるのか?もしかして。
伯爵領にある遊郭の情婦ですら立ち入り禁止を言い渡すレベルだろう、これ。
ともかく、この部屋には自動浄化システムでも作るか。
まずは綺麗なものが好きなくせに、全然綺麗好きじゃない王子の矛盾をまずは直さねば。
俺を見て後ずさる王子に、俺はますます笑顔を貼り付けた。
逃げてんじゃねぇよ。俺だっててめえのヌードなんか見たかねえけど、仕方ねえんだよ。
「さ、とっとと脱いでください」
俺はずいっと一歩、部屋に足を踏み入れた。
「な、なぜだ」
「臭いからです」
「く、臭い、だと?わ、私は王子だぞ!?」
「ええ。王子であろうとも臭いものは臭いんです。どれだけ風呂に入ってないんですか?そのうち股間にハエが湧きますよ」
「ハエ!?」
「ええ、あいつらは垢とか排泄物とか大好きですからね。その辺を食料にして下手したら大事なソコも食われちゃうかもしれませんネェ。妙に魔物化して巨大な蝿になったらどうします?」
青ざめた王子は、大慌てで素っ裸になった。
冗談なんだが、知識の浅い王子は本気に取ったようだった。
ひとまず上半身だけでよかったんだが、まあいっか。
いやそれにしても汚ねえ。パンツも見たくねえ。
王子の体はマダラ状に垢がこびりつき、元の肌の色も定かではない。伯爵領に昔あった貧民街の大人でもこんなのは見たことがなかった。おそらくたまにゴシゴシ垢を落として、でも完全に落とさないからマダラになっていったんだと思う。カビとか生えてんじゃないだろうか。ゴブリンも逃げ出す汚さだな、おい。
王城から感染症発生とかなったら、笑えない冗談だ。
これは持ってきたヘチマタワシでも一度の洗浄じゃ厳しいかもしれない。下手したら皮膚ごと削げ落ちるかもしれねえ。
「よくもまあ、ソコまで垢をためましたね。皮膚病と、病原菌の検査もするべきですが……。ひとまず私のもってきたヘチマタワシでも無理そうなんで《洗浄》」
「ウヒィ!!?」
仕方なく、洗浄魔法をかける。
洗浄魔法は完全に汚れが落ちるわけではなく、プレウォッシュと呼ぶもので、本格洗いの前の水洗いみたいなものだ。 こびりついた汚れを浮かせるだけの役割を果たす。
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