なんでも押し付けてくる妹について

里見知美

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第4話

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 さてその頃、シェリルはというと。

「アレックス様ぁ!お待ちになってぇ。私、またお姉さまにぃ!」
「ねえ、シェリル嬢。いい加減そんなにコロコロ太っていてお姉さまに虐められてるなんて、わけないよね?」
「えっ、コロコロ……っ!?」
「だって、ほら。こちらにいるエマニュエル嬢こそが、酷い目に遭ってるって言う風貌だよ。みてごらんよ、こんなに痩せ細ってしまって、制服ですら体に合っていないし、よく見ればつぎはぎだらけだ」

 とある伯爵家の庶子だと言うエマニュエル嬢は、真っ赤になって俯いてしまっている。確かに、彼女はやせすぎだし、髪も後ろで束にまとめただけ、制服も丈が短く、縫い代が下された跡がはっきり見える。実際のところ、伯爵夫人とその息子に蔑ろにされていると言う噂と、平民として暮らしていた癖が抜けていないからだと言う噂もある。

 俯いて震えている割に、視線だけはギラギラとアレックスを注視しているところを見ると、こちらも色々思惑がありそうな気もするが。現状から助け出してくれるなら誰でもいいと思っているのか、藁にも縋りたいと思っているのか、或いは玉の輿を狙ってザマァをしようとしているのか。

 しかし、アレックスと呼ばれた美しい件の留学生は、他人の痛みがわからない、けど頭の良いクズなナルシストだったので。

 そんな彼女たちの視線も思惑もきっちり理解している上で、別にエマニュエルに手を差し出そうなどとは思っていなかった。いかにも虐められていますな風貌で学院にきて、かわいそうにと思われたいのかな、それとも救ってくれる王子様を夢見ているのかな、と考えるくらいで。だからこそ、ただの比較対象としてシェリルの前に連れてきた。

「君たち、虐められているとか虐げられているとか、悲しそうに被害者ぶってるけど、学院生でしょ。ここには法律家の先生もいるし、生活指導のカウンセラーもいる。教師や専門家には相談した?出るとこ出れば、家庭内暴力や虐待の疑いがある場合、そう言った保護制度の適用もこの学院にあるよね?そもそも配給されている制服を色々飾り立てたり継ぎはぎしたりって校則違反でしょ。学院内生活態度で内申点減点されてるって知らないの?」
「「えっ!?」」

 周りに集まって来ていたギャラリーのほとんどは、うんうんと頷いている。中には青ざめて、慌ててかけていく生徒もいたが。留学生にも教えられる事実である。

 余談ではあるが、女生徒を侍らせているアレックスも実は減点対象になっているのだが、自分のことは気がつかないらしい。これは自国への報告書にまとめられている為、帰ったら地獄が待っているのだが、知らぬが仏である。

 まともな学生達は、学院へは将来への希望する勉強のためか、繋がりを持つために通っている。一年生のうちは一般常識学科全般を受けるものの、二年生に上がってからは、専門学科へ進む人がほとんである。二年生で普通学科に通っている人たちは、「私まだ世間一般の貴族常識を知らないんです」と暗に言っているもので、自慢できることではない。大きな顔で通っているのは、将来の方針を立てていないやる気のない人間か、既に道が決まっていて、横のつながりを求めている人たちばかりだ。

 シェリルは普通科の二年生である。明らかに考えてもみなかった事を言われて、素でキョトンとしてしまった。

 そう言われてみれば、フローネは経営学科で領地経営かなんかを学んでいたような気がする。三年生になってからは、薬学が必要でとか、なんちゃらを覚えなくてはと忙しくしていた。でもあまり真剣に聞いていなかったからよく覚えていない。他にも色々ユニットを取っていた気がする。

 母親にも色々言われていたが、自分は次女だから家を継ぐわけでもないし、嫁に出される身だから別に勉強とか必死になる必要はないと思っていた。

 可愛くて、優しげで、おしゃれでいれば自ずとお相手は見つかるからと。美しくて豊満な体を持つ自分なら、上を目指して、王子様とか、公爵子息とか、選びたい放題だと。

 考えてもみれば、どこで公爵子息とかと出会ったかしら。と言うか、伯爵位より上の人たちに出会ったことがない、気がする。まだ二年生だからと活動圏は広げていなかったし、会えていないだけでどこかにいると信じていたけど。

 それまでは、ダリルを婚約者として添えておけば、お姉さまの歯軋りする姿が見れるし、時が来たらダリルなんてあくせく働く平民じみた子爵家のカスを捨ててもっと上を目指して、と。それで、美しいアレックス様に乗り換えようとして。脈アリだと信じて。

 この学院に、高位貴族がいないと言う事をシェリルは知らなかった。伯爵位でも序列の高い家は王都ロイヤルカレッジに通っているからだ。いないのだから出会えるはずもない。下位貴族の人間が大臣や宰相の職を得ることはない。せいぜい補佐までだ。社会に出ればまたチャンスはあるかもしれないが。

 学ぶべきことが違うし、出会いの場も全く噛み合わない。全ての貴族が集まるのなんて、年に一度の王宮での年始年末のパーティくらいだろう。それも婚約者のいない未婚の男女は呼ばれないのが常である。

 兎も角、シェリルはアレックスを愕然として見つめた。彼が自分の王子様になって、あれこれ貢いでくれることはないと理解した。そしてつい先日、シェリルはダリルを捨てた。お姉さまにのだ。

 そして自分には、婚約者がいない。

「え、?」




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