死神の誤算と策略、私の運命はもう変わらない

陵月夜白(りょうづきやしろ)

文字の大きさ
19 / 26

第十八章 母の涙

しおりを挟む
第十八章一話 母の涙

 ハンバーグの皿が空になり、店員が静かに下げていったあと、二人のテーブルには紅茶とデザートが運ばれてきた。
 温かいアップルパイにアイスクリーム。母はレモンのシフォンケーキを選び、フォークで少しだけ切って口に運ぶ。
「……このケーキ、見た目よりさっぱりしてるわ。あんたも食べる?」
 「いらねぇよ、甘いの苦手って知ってるだろ」
「ふふ、そうだった。昔っから、生クリームはダメだったね」
 「子どもの頃、ショートケーキの上のイチゴだけ食って、クリームぐちゃぐちゃにしたの、怒られた記憶あるわ」
「そりゃ怒るでしょ。こっちは誕生日だからって、張り切って買ったのに。
でも、怒ったあとで泣いたのよ、あたし」
 「……え?」
「嬉しくてね。イチゴだけでも嬉しそうに食べてるの見て、ああ、生きてるだけでいいやって、思ったの」
 言われてみれば――
そんなことがあった気がした。いや、記憶は曖昧だ。ただ、母の声に、そのときの暖かさが宿っていた。
 「……俺、ほんとガキだったな」
「そりゃあんた、ガキだったんだから当然でしょ」
 冗談のようなやり取りに、二人の間に自然と笑いが生まれる。

カップから立ちのぼる湯気が、静かに二人を包み、夜のぬくもりに染めていた。
 そのまましばらく、昔話が続いた。
小学校で骨折したときの話、中学の三者面談で居眠りして先生に注意された話、近所の猫を拾ってきて内緒で風呂場に隠してた話――
 母は思い出すたびにけらけらと笑い、陸翔も久しぶりに心から笑っていた。
懐かしくて、少し照れくさくて、それでも心地よい時間だった。
 けれど。
会話が途切れたほんの一瞬の沈黙に、母はふと真顔に戻り、湯気の向こうからじっと陸翔を見つめてきた。

「……でもさ、あんた」
その声色が変わった。
それは、さっきまでの柔らかさとは違う。何かを見抜くような、射抜くようなまなざしだった。
 「……なに」
「最近、あんたの口ぶりが変なんだよね」
 「は?」
「さっきから話してて、なんとなく、ひっかかる言い方が多いの。
“今、言っとかないと一生言わない気がする”とか、“今の自分が”とかさ」
陸翔の手が、紅茶のカップの取っ手からすっと離れる。
 「べつに変じゃねぇだろ。普通のこと言っただけだし」

「そう? あたしには、あんたが――何かヤバいことに首突っ込んでるようにしか思えない」
真正面からぶつけられたその言葉に、陸翔は一瞬、息を止めた。
 「……何言ってんだよ。違うって」
「違うならいい。……でも、隠してるでしょ」
 「違うってば。……かあちゃん、勘ぐりすぎ」
「ふぅん……」
母は目を細めた。
 まるで昔、イタズラをしたのを隠していた幼い陸翔を見つけたときのような表情だった。
「勘ぐりなんかじゃないよ。わかるの、母親だから。あんたの声の出し方も、目の動きも、昔と同じ」
陸翔は黙って、視線を逸らした。
やばい、と思った。
(まずい。余計なこと言ったか? 口調、気をつけてたつもりだったのに……)
焦りが腹の奥に広がっていく。
そのとき、母が静かに言った。
「……いいかい、リク」
 「……なに」

「たとえあんたが何かしようとしてても、それがあんたの人生だ。
あんたがどう生きるかは、あたしが決めることじゃない。あたしも好きに生きてきたし、あんたにも好きにしていいって、ずっと思ってきた」
少し間を置いて、言葉が続く。
「だけど――
人様に迷惑かけたり、誰かを傷つけるようなことをするくらいなら、あんたが勝手に首くくった方がマシだよ」
 その言葉は優しい声で語られたのに、ナイフのように鋭かった。
「やんちゃくらいは笑って許す。でも、悪いことだけはやめておくれ。……どうか、お願いだから」
陸翔は、どうしようもない動揺を感じた。
紅茶はもう冷めかけていて、口をつけることすらできない。

 「……俺は……悪いことなんて、してねぇよ。これからも、する気はねぇ。
……俺はかあちゃんの子だよ。信じてくれよ……頼むから」
それは言い訳ではなく、願いだった。
揺れていた声を、母は黙って聞いていた。
しばらくの沈黙のあと、母の目尻に、そっと光るものが浮かんでいた。
「……バカだね、あんたはほんとに。……昔から、不器用なくせに強がるとこだけ、私に似ちゃって」
 そっと目を拭って、母は微笑んだ。
その笑顔に、陸翔は心の奥を掴まれたように感じた。
 その日、彼が少しだけ未来を信じてみようと思えたのは――
あの、涙の笑顔のせいだったかもしれない。


第十八章二話 選択の先

 ホテルのロビーは夜の静けさに包まれていた。
チェックインカウンターの照明は控えめで、足元に敷かれたカーペットが歩くたびにわずかに沈んだ。
エレベーターの前に立つ母。
 口数は少なかったが、どこか満たされたような穏やかな表情をしていた。
陸翔は、その横に立ち、そっと言った。

 「……明日はチェックアウト11時だから。ゆっくりしてから帰りなよ。
ここ、朝ごはんも付いてるし。バイキングだったかな、たしか」
「へぇ、バイキングなんて久しぶりだわ。……一人で食べるの、ちょっとだけ寂しいけどね」
母はそう言って小さく笑った。
 「……俺は、見送れないけど。大丈夫、だよね?」
その言葉に、母は一瞬こちらを見上げ、それからふっと息を吐いた。
「大丈夫よ。心配しなくていい。……今日は、本当にありがとう」
 「……いや」
「リクも……ちゃんと親孝行できるようになったんだね。
びっくりしたけど、嬉しかったよ。
こうして外で会って、話して、ご飯食べて――こんな時間、何年ぶりだったかしら」
 「……やめろよ、そういうの。こんなの、親孝行なんかじゃねぇし」
照れ隠しのように、陸翔は少し俯いた。
けれど、母はその様子を見つめたまま、優しく、それでいてはっきりと告げた。

「リク。……お前は、まだ“選べる”んだよ」
陸翔は顔を上げた。
「どんな理由があっても、誰に何を言われても――
“どう生きるか”は、自分で決めなきゃいけない。
……だから、しっかり選びな。自分の人生を」
その言葉は、どこまでも静かだった。
怒りでも涙でもなく、ただ、真っ直ぐだった。
 エレベーターが静かに到着し、扉が開く。
母はゆっくり時間を拒否するかのように一歩中へ入った。
「……おやすみ、リク」
 「……ああ」
母の背中が見えなくなりかけたそのとき、陸翔は何かを言いかけた。
けれど声にはならなかった。
扉が、音もなく、静かに閉まる。
 その瞬間だった。

陸翔の目に、ひとすじ、大粒の涙があふれた。
ぽたり、ぽたりと落ちる雫が、足元のカーペットに吸い込まれていく。
感情が堰を切ったようにこぼれ落ち、陸翔は拳を固く握る。
誰にも見られていないのに、背を向けてしまいたいような、
誰かに抱きしめられたいような、
そんな複雑でどうしようもない気持ちが胸に渦巻いていた。
それでも、ひとつだけ確かなことがあった。

母は、自分を信じてくれた。
何も聞かず、何も責めず、ただ――「選べ」と言ってくれた。
陸翔は、ゆっくりとエレベーターの扉を見つめたまま、
ぽつりと呟く。
 「……俺は、ちゃんと選ぶよ。――絶対に」
その言葉が、夜のロビーに静かに響いた。

仁科陸翔 死亡推定日時まで あと1日


第十八章三話 静寂の午前(決行当日)

 目が覚めたのは、午前5時12分だった。
 目覚ましは6時に設定していたが、それを待たずに、陸翔の身体は勝手に覚醒した。
 (寝た、のか?)
 眠気はなかった。夢も記憶もない。ただ、深い深い水底から浮上したあとのような鈍い倦怠感が、身体の奥に沈んでいた。
 古いアパートの天井。剥がれかけた壁紙。薄明かりの差し込む窓。
 世界は異様なほど静かで、まるで音がすべて消え失せたようだった。
 起き上がり、冷えきった床に素足を置く。
 (今日――俺は死ぬ)
 死神が告げた“期限”。それが、とうとう来た。
 だが、恐怖はなかった。
 ただ、身体の深部にしみ込んだ“納得”のような感覚だけがあった。
 まるでこの朝は、はるか昔から決まっていた儀式の一幕だったかのように。
 ……けれど。
 頭の片隅に、昨夜の声が蘇る。
 ――「陸翔。お前はまだ“選べる”。しっかり選びな、自分の人生を」
 母の声。エレベーターの扉が閉まる直前に残された、静かな願い。
 思い出しただけで、胸の奥がわずかに揺れた。
 
 7時過ぎ。
 カップラーメンに湯を注ぎながら、テレビのニュースをぼんやり眺める。
 >「今日の東京は、日中15度前後まで気温が上がる見込みです。日差しは穏やかで、絶好のお出かけ日和――」
 その言葉に、陸翔は鼻で笑った。
 (“お出かけ日和”、ね……)
 向かう先は、目黒の裏通り。
 目的は、“自由を得るための強盗”。
 ――そして、その果てにあるかもしれない、“死”。
 母に言えなかったことが、頭の奥に引っかかる。
 (本当は全部、言いたかったかもしれない。……いや、言えなかったからこそ、あの人は気づいたんだ)
 準備はすでに整っていた。
 リュックの中には、手袋、バラクラバ、マスク、予備の靴、着替え。
 コンビニで買ったレッドブルと栄養バー。
 ひとつひとつ確認しながら、ふと手が止まる。
 ――母がレストランでくれた、紙ナプキンに包まれた飴玉。
 懐かしい苺ミルクのやつ。
 (……なんで、こんなもん入ってんだよ)
 捨てることもできず、そっとポケットにしまった。
 
 午前9時。アパートの外に出る。
 日曜の朝。世界はまだ眠っている。
 空は晴れ、風は冷たいのに、陽射しだけが妙にあたたかかった。
 (……昨日も、こうだったな)
 母とレストランを出たあと、見上げた夜空。
 ホテルの前で、背中越しに「選べ」と言われた瞬間の、あの空気。
 それを思い出すたび、陸翔の足は少しだけ重くなった。
 (選べ、か――)
 
 公園のベンチに座り、他のメンバーの到着時刻までの空白を潰す。
 ふと、背後に気配を感じ、何度も振り返った。
 誰もいない。……けれど。
 (まるで、見られてる気がする)
 視線の主はきっと“死神”――
 だが、その視線すら、今はどこか“遠慮がち”に感じた。
 
 時計の針は10時を過ぎていた。
 スマホを取り出し、スケジュールアプリを開く。
 > 17:00 突入
 > 17:03 撤退
 > 17:10 逃走終了
 > 19:00 全員連絡確認
 たった数行。その“5分”のために、自分の人生のすべてが詰め込まれている。
 (……でも)
 もう一人の自分が囁く。
 (逃げようと思えば、今でも逃げられる)
 ここから離れて、電車に乗って、誰も知らない街へ――
 母の言葉を胸に抱いて、やり直すことだって、もしかしたら……
 (でも)
 すぐに別の声が脳裏に響く。
 ――「無駄だったな、仁科陸翔」
 “あの死神”の冷たい声。
 どんな逃亡にも、どんな選択にも、嘲笑の眼差しが付きまとう。
 
 午前11時過ぎ、陸翔は喫茶店に入った。
 食欲はなかった。
 コーヒーを一杯注文し、ただ湯気を見つめた。
 「今日死ぬ」と知っている人間が座っているだけで、店内の空気が重たくなる。
 そう感じたのは、ただの錯覚だろうか。
 ……それとも、誰かが、本当に自分の“終わり”を見透かしているのか。
 
 店を出て、駅のホームに立つ。
 電車が通過する。風が鼓膜を押しつぶすような圧をかける。
 (ここで、全部終わらせることもできる)
 白線の一歩先。足を踏み出せば、それで終わる。
 だが、陸翔はその場に立ち尽くしたまま、通過する電車を見送った。
 ――選ばなかった。
 いや、“まだ選びきれなかった”。
 
 午後12時。
 LINEに「全員集合、予定通り」とマコトから連絡が入る。
 短い文面。それだけで、心拍がひとつ跳ねた。
 (……行くしか、ないのか)
 心の底に残った“もうひとつの選択肢”を押し殺して、
 陸翔はゆっくり歩き出した。
 
 アジトへ向かう道すがら、陽の光は、やけに穏やかだった。
 昨日と同じ、穏やかな晴天。
 何もかもが、ただの“日曜の昼”のように見えた。
 けれど今日という日は、確実に――
 “特別な終点”を迎える。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

あやかし帝都の婚姻譚 〜浄癒の花嫁が祓魔の軍人に溺愛されるまで〜

鳴猫ツミキ
キャラ文芸
【完結】【第一章までで一区切り】時は大正。天羽家に生まれた桜子は、特異な体質から、家族に虐げられた生活を送っていた。すると女学院から帰ったある日、見合いをするよう命じられる。相手は冷酷だと評判の帝国陸軍あやかし対策部隊の四峰礼人だった。※和風シンデレラ風のお話です。恋愛要素が多いですが、あやかし要素が主体です。第9回キャラ文芸大賞に応募しているので、応援して頂けましたら嬉しいです。【第一章で一区切りで単体で読めますので、そこまででもご覧頂けると嬉しいです】。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

Emerald

藍沢咲良
恋愛
教師という仕事に嫌気が差した結城美咲(ゆうき みさき)は、叔母の住む自然豊かな郊外で時々アルバイトをして生活していた。 叔母の勧めで再び教員業に戻ってみようと人材バンクに登録すると、すぐに話が来る。 自分にとっては完全に新しい場所。 しかし仕事は一度投げ出した教員業。嫌だと言っても他に出来る仕事は無い。 仕方無しに仕事復帰をする美咲。仕事帰りにカフェに寄るとそこには…。 〜main cast〜 結城美咲(Yuki Misaki) 黒瀬 悠(Kurose Haruka) ※作中の地名、団体名は架空のものです。 ※この作品はエブリスタ、小説家になろうでも連載されています。 ※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。 ポリン先生の作品はこちら↓ https://manga.line.me/indies/product/detail?id=8911 https://www.comico.jp/challenge/comic/33031

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました

香木陽灯
恋愛
 伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。  これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。  実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。 「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」 「自由……」  もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。  ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。  再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。  ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。  一方の元夫は、財政難に陥っていた。 「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」  元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。 「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」 ※ふんわり設定です

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された皇后を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

処理中です...