十二輝の忍神 ーシノビガミ― 第一部

陵月夜白(りょうづきやしろ)

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33 迫られる決断

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第十四話 迫られる決断

「金之助、このままじゃ――あいつ殺られるぞ」
 鉄之介の声が、歯噛みの間から漏れた。

 大槌を握り直しながら、円の中心を睨み据える。
「どうすんだ。助けるか?」

 金之助は喉の奥で息を詰めた。
武蔵の巨刃は、もう“遊び”じゃなくなっている。

 一太刀ごとに清十郎の逃げ場を削り、浅い傷を積み上げ、呼吸の間合いまで奪っていく。

 清十郎はまだ立っている。
立っているが、刃の線はすべて潰され、攻め手が消え、次の一歩が“耐える一歩”に変わり始めている。

「……うん」
金之助が低く答える。

「生身でよく耐えてる。
 でも、限界が近い」
声に出した瞬間、不安が胸の中で形になる。

 武蔵の力は圧倒的だ。
あの重さに真っ向から抗える人間は少ない。

 しかも、斬られても斬られても――
懐から干し肉をむさぼるだけで、肉が塞がる。
 食で回復する珠の力。
削っても削っても“元へ戻る身体”。
 常識の剣では削り切れない。
手がつけられない。

 金之助は無意識に懐へ手を伸ばした。
 巾着の中の寅の珠に、そっと指を添える。

 熱い。
布の上からでも分かるほど、熱が掌へ刺さる。

 まるで生きた心臓だ。
どくん、どくん、と鼓動し、さっきよりも速く、さっきよりも“焦って”脈を打っている。

 朱と橙の光が布越しに滲み、金之助の指先を薄く染めた。
「……寅が、動きたがってる」

 金之助の呟きに、鉄之介が目を細める。
「あの男の元に、行きてぇのか」

「……たぶん」
金之助は円の中心を見る。

 武蔵の太刀が、また清十郎の肩を掠めた。
 清十郎の身体がわずかに揺れる。
踏ん張っているが、足の滑りが“守りの滑り”に変わっている。

 ――あのままじゃ、押し潰される。
金之助の胸が、辰の熱で焼ける。
 それに呼応するように、寅がさらに強く震えた。

 どく、どく、どくん。

 “いまだ”
 “渡せ”
 “宿れ”
音にならない声が、掌を叩く。
 
 助けなければ、清十郎が折れる。
金之助は歯を食いしばる。
掌の中の熱が、さらに増した。

 鉄之介が短く言う。
「……考えてる暇ねぇぞ」

 円の中心で、武蔵が踏み込む。
 清十郎の逃げ道が一段狭くなる。
金之助は、寅の鼓動を握り締めたまま、次の一拍で何をするか――腹の底で決めようとしていた。

「とにかく俺が行く」
鉄之介が吐き捨てるように言い、地を蹴って円の中心へ踏み込んだ。

 武蔵の巨体の前に、真正面から立ちはだかる。
 その背後で、清十郎はようやく膝を折った。

 片膝をつき、肩で息をしている。
浅い傷が幾筋も走り、灰に落ちた血が黒い。

「待ちな、木偶の坊!」
鉄之介が吼えた。

 大槌を肩に担ぎ、武蔵を睨み抜く。
「卑怯とは思わねえか!」

 武蔵が唇を歪め、鼻で笑う。
「うるせえ。
 お前はすっこんでろ」

 大鉞が、上から落ちた。

 どんッ!!
鉄之介は大槌で受け止める。

 衝撃が地面へ沈み、石畳が鳴った。
火花が散り、二人の影がぶつかり合う。

「あいつは珠遣いでもなんでもねえんだ!」
鉄之介が歯を剥く。
「ちったぁ手加減しやがれ!」

「うるせぇんだよ」
武蔵が押し返す。

 鉄之介が押し返す。
ぶおんッ!! どんッ!! がきんッ!!

 巨漢ふたりの戦いが、また始まった。
 力と力が正面で噛み合い、広場の空気が潰れて裂ける。

 金之助は円の端へ抜け、清十郎の方へ駆け寄った。
「大丈夫ですか」

 清十郎は片膝をついたまま顔を上げる。
旅笠の陰の目が鋭く光った。
「寄るな」

 短い。
拒絶というより、間合いを守る癖の硬さだ。

 金之助は半歩だけ距離を置いて止まった。
「……すまない。助けたかった」

 清十郎は答えない。
荒い息を一度整えようとして――その瞬間だった。

 どくん。
金之助の懐で、寅の珠が弾けた。

 巾着が内側から押し広げられる。
熱が掌へ突き刺さる間もなく、寅の珠が、ふわりと自ら飛び出した。

 朱の光。
辰と似た色だが、明らかに違う。

 橙に近い、燃えるような明るさが芯に宿り、灰の空気を揺らすほど眩く脈打っている。

 珠は宙に浮かび、
清十郎の目の前で、ぴたりと止まった。

 鼓動の高さも、距離も、まるで最初からそこに来ると決めていたみたいに正確だ。

 どくん、どくん。
寅の脈が、空気そのものに響く。

 清十郎の胸の奥の何かが、その拍に引き寄せられるようにざわめいた。

 清十郎の瞳が丸くなる。
「……なに…?」
言葉が遅れるほど、珠の光は強い。

 刃より危うく、火より鮮やかに、
“器を選ぶ目”で清十郎を見据えている。

 金之助は息を呑んだ。
――寅が勝手に出た。
しかも、清十郎の前で止まった。

 武蔵と鉄之介の轟音が背後で弾ける。

 だがその音が遠く感じるほど、
寅の珠の橙朱は、清十郎の顔を照らしていた。

 清十郎は意味を知らない。
けれど本能が、その鼓動の危うさと重さだけは理解し始めていた。

 寅の珠は、眩いほどの光を放ちながら、清十郎のすぐ眼前で、静かに脈打ち続けた。

第十五話 寅の輝き

 寅の珠は、眩いほどの光を放ちながら、清十郎のすぐ眼前で、静かに脈打ち続けた。

 どくん、どくん。
寅の脈が、空気そのものに響く。

 ――その瞬間、珠の周囲だけが薄い膜で切り取られた。
 清十郎の鼻先から数歩ほどの空間だけ。

 そこに漂っていた砂埃が、舞い上がる途中の形のまま止まる。

 清十郎の身体も、引きかけた重心のまま、時間の縁で静止する。
 けれど――外側の世界は動いている。

「……なんだ?」
広場の端にいた虚舟の配下が、ざわめき、首を傾げた。

 武蔵の背にいた連中も、
“そこだけ空気が張りつめている”とでも言いたげに視線を寄せる。

 鉄之介も武蔵も、戦いの途中のまま動けず珠の光に魅入られてしまった。

「いまの……」
何が起きたか理解できず、ただ目を見張る。
 
 その中心で、寅の珠だけが生き物みたいに脈打っている。
 橙朱の光が、清十郎の頬骨の陰影をゆらりと撫で、旅笠の下の瞳に、熱の輪郭を映していた。

 後ろにいた忠壽も今の状況の把握が出来ずに立ち尽くしていた。

 清十郎の喉が、わずかに動く。
息を呑む――というより、胸の奥が“吸い寄せられる”みたいに、勝手に空気を求めた。

 珠は、ふいに鼓動の高さを変えた。

 どく、どく、どくん。
近づくたび、明るさが濃くなる。

 清十郎の唇が、言葉にならない息を零す。
 その微細な吐息すら、止まった空間の中では淡い白の糸みたいに残り、ゆっくりと溶けた。

 珠の縁が、清十郎の唇に触れた。
熱い――けれど、火の痛みじゃない。
 柔らかいのに、芯が硬い。
口の端が、思わず震える触感。

 清十郎の身体が拒むより先に、喉がその熱を“迎えに行って”しまう。
 珠が、ふっと形をほどく。
 実体の光が、液体のように滑り、舌の上へ、ゆっくりと降りた。

 橙朱の光が、口内を照らす。
唇の内側、歯の白、舌の膜、そのどれもが一瞬だけ艶を帯び、熱の輪郭をくっきり映す。

 清十郎は目を見開いたまま、息を吸う。
 吸った分だけ、珠は深く入り、喉の奥に触れる。

 ぞくり、と背筋のどこかが震えた。
怖気じゃない。
もっと根の深い、生理の震え。

 珠が、清十郎の喉をすべる。
熱が、内側から胸へ落ちる。
 胃の底へ沈む前に、
清十郎の体内で一度、脈が跳ねた。

 どくん。
清十郎の眼の奥で、橙朱が弾ける。
視界の縁が、わずかに白む。

 ――その瞬間、
金之助の背筋に、ひやりとしたものが走った。

 砂埃の匂いが、妙に薄い。
空気のどこかが、穴を穿たれたみたいに。

 金之助は顔を上げた。
瓦礫の影。
 黒布の端が、ふっと揺れ、そこに“いる”としか言えない眼が光った。

 虚舟。

清十郎の眼前で、寅の珠が脈打つ。

 橙朱の光が、胸へ落ちきる寸前。
虚舟の指先が、ゆっくりと印を結ぶ。

 その動きには、迷いがない。
“獲った”とでも言うように、肩の力が抜けている。

「……よし」
低い声が、瓦礫の裏から滑った。

「はまったぁ」
笑いに近い息。

 次の瞬間、虚舟の手が“踏み込んだ”。

 術が、領域を閉じる。
空気が、薄紙みたいに張り詰め――金之助の身体が、先に跳んだ。

 思考は置き去り。
辰の熱が背を押し、足が地を穿ち、虚舟の“死角”へ突っ込む。

 抜刀の音が、乾いて弾けた。
「――っ!」

 一直線。
虚舟の肩口を狙う斬線が、風ごと影を裂く。

 虚舟が目を見開く。
「な――」
結びかけた印が、ほんの僅か乱れる。

 宙に張られた黒い糸が、ささくれ立ち、ぷつり、と切れかけた。

 止まった領域の中、
清十郎の胸へ沈みきろうとしていた橙朱の熱が、一瞬だけ、自由に跳ねる。

 ――外れる。
金之助は刃をさらに押し込もうとした。

 そのときだった。
背後の空気が、すっと冷えた。

 視界の端に、音もなく滑り込む影が映る。

 鉄之介の背へ、艶やかな着物姿の影が伸びていく。

 お蘭。

「――危ない、鉄之介!!」
 叫んだ瞬間、金之助の斬線が、紙一枚ぶれた。

 虚舟の口角が、わずかに上がる。
 乱れた指が、そこだけ正確に結び直される。

 ひゅ、と息みたいな音がした。
黒い糸が、領域の縁から滑り込み、清十郎の胸へ“縫い込まれる”。

 橙朱が宿りきる、その刹那に。
冷たい指が、心臓の裏を掴む。
 清十郎の眉が、ぴくりと動いた。
旅笠の奥の光が、ほんの一瞬、違う影を含む。

 ――捕らえられた。

 金之助は振り返り、お蘭へ半身を向ける。
 鉄之介が遅れて身を捻り、お蘭の吐いた毒液がが袖口を焼いた。

「うおッ……!?」
肘の辺りが熱く痺れた。

 鉄之介の目が据わる。
その隙に、虚舟の気配は瓦礫へ溶け、残ったのは――

 清十郎へ絡みつく黒い術の糸だけ。
金之助は歯を食いしばった。

 止まった領域が、ゆっくりほどける。
 砂埃が舞い直し、武蔵の鉞が重い風を呼び戻す。

 武蔵が怪訝そうに目を細める。
何も知らないまま、鉞を構え直す。

 喉奥に残る橙朱の熱。
胸の裏に絡む黒い冷たさ。

 その境目で、
静かに目を細めた。

 頭の芯に、針みたいな疼きだけ残したまま。

 珠の鼓動が、清十郎の鼓動と重なる。
 橙朱の光が、口腔の闇に吸い込まれ、喉を滑り、胸の底へ沈んでいく。

 熱い。
灼けるほどではない。

 骨の芯へ、じわりと染み込む熱。
その瞬間、清十郎の背中を這っていた黒い糸が、“宿り場所”を見つけたみたいにぴたりと張りついた。

 虚舟の目が、陶然と細くなる。

 ――刺した。
確かに刺した。
 確信の笑いが、瓦礫の陰で小さく漏れた。

 だが。
清十郎の指先が、すう、と開く。

 風が変わった。
さっきまでの“拒む気配”が、消えたわけじゃない。

 消えるどころか――
さらに深い場所で、別の何かが目を覚ました。

 清十郎の立ち上がりは静かだった。
膝の砂を払うでもない。
 ただ、自然に立っているだけで、その場の空気が固まる。

 武蔵の前で鉞を構えていた鉄之介が、無意識に息を止めた。

 金之助も、お蘭も、虎之進も、虚舟さえも、清十郎の“変わった輪郭”に目を奪われる。

 ――悟った。
誰もが、言葉にしないまま悟った。

 清十郎は旅笠の陰から武蔵を見た。
さっきまでとは別人の眼だった。
 烈しいのに澄んでいて、冷たいのに、あたたかい。

「貴様、もうよい。退け。命が惜しいだろ」
平坦な声。しかしそれは命令だった。

 武蔵が間の抜けた顔で瞬きをする。
「……なんだとぉ」

 清十郎は首をほんの少し傾けた。
「私は無用な殺生はしたくないんだ」

 武蔵の頬が引きつる。
鉞を握る左手の血管が浮いた。
「ふざけてるのか、てめえ。地獄に送ってやる」

 清十郎はため息すらつかない。
「仕方がない」

 次の瞬間、武蔵が踏み込んだ。
大鉞が唸る。重い刃が横薙ぎになって、清十郎へ迫る。

 ――だが、清十郎は消えた。
そう思うほど、動きが見えない。

 武蔵の鉞が空を切る。
その“切った空気”の内側から、清十郎の太刀が、静かに返った。

 ひゅ。
音が遅れて届く。

 武蔵の右腕が、
肘から先ごと、ふわりと宙へ浮いた。

 血が、遅れて噴き出す。
「――っ!?」

 武蔵の口から声が抜けたのは、
右腕が地面に転がってからだった。

 清十郎は一歩も踏み込んでいない。
ただ、そこに立っているだけで、武蔵の巨体が“崩れた”ように見える。

 場の空気が凍りつく。
その凍りを割るように、清十郎がすっと振り向いた。

 そして、お蘭の前へ歩み出る。
血溜まりの中で転がる武蔵の腕に、顎をしゃくる。

「その腕を持って帰れ」

「え——っ」
お蘭の目が跳ねる。

 だが清十郎の眼が、二度言わせる気配を許さない。

 お蘭は慌てて走り、
腕を抱え上げると、そのまま背を向けた。

 血が指の隙間から滴り、
彼女の足跡を赤く繋いでいく。

「武蔵殿、退け!退くのじゃ!」
虚舟の怒号が飛んだ。

 焦りと苛立ちが混ざった声。
だがそれは、もはや命令というより――悲鳴に近かった。

 武蔵は自分の肩口を見つめている。
噴き出す血の温度を、いま初めて理解したみたいな顔で。

 黙ったまま、左手で大鉞を握り直す。
 持ち上げた刃が、重く揺れる。
でも、武蔵の脚は一歩も前へ出なかった。

 清十郎は追わない。
ただ、視線だけで武蔵を押し返している。

 その横で、金之助は息を呑んでいた。
 清十郎の中に入った寅の熱が、世界の芯を塗り替えていくのが分かったからだ。

 左門が我に返ったのは、誰より遅かった。
「……っ、佐野様に!!」

 叫ぶように呟き、
左門は屋敷の方へ駆け出した。

 戸を跳ね開け、廊下を走り抜ける足音が遠ざかっていく。

 広場には、冷えた沈黙だけが残る。
虚舟が舌打ちをひとつ落とし、黒布を翻した。

 彼の合図ひとつで、闇の縁に潜んでいた黒屍人たちが、潮が引くみたいに散っていく。

 血と砂の匂いも、焚き火の熱も、さっきまでの喧騒も、まるで嘘だったように消えていく。

 最後に残ったのは、
寅の鼓動を胸に宿した清十郎の、凪いだ眼だけだった。

 その眼は、
敵も味方も、危ういほど均等に見据えていた。
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