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第十六章 ゆらぎの指先
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夜風は生温く、張り詰めた空気をまとっていた。
如月碧人は、岡部の住むマンションの扉の前に立っていた。
手袋をはめた手は、静かにドアノブの上へ伸びる。ドアスコープの位置、鍵穴の構造、周囲の音――すべてを記憶の奥で解析していた。
(俺は、何をしに来た?)
問いは浮かぶのに、答えが返ってこない。
ただ胸の奥に、遥が涙を流していた夜の記憶がある。
盗撮されていた。日常を覗かれていた。怯えて、自分にすがってきた――あの姿が焼きついている。
(あいつが、遥を“見ていた”)
(その目を、潰せば終わる)
ポケットの中には、小さな工具ナイフがあった。手に馴染む感触。知らないはずの道具なのに、使い方が脳に焼きついていた。
(これが、俺なのか?)
指がナイフの柄に触れたとき――心の底で、何かが軋んだ。
そのとき、背中のポケットの中――スマートフォンが震えた。
……ブルッ、ブルッ……
画面には、「遥」 の名前。
息を呑む。手が止まった。
(なんで……)
数秒迷い、通話ボタンを押す。
「……もしもし?」
『碧人くん……どこにいるの?』
聞こえた声は、弱々しく震えていた。
『……ごめん、勝手に出て。けど……なんか、変な夢見て、すごく嫌な気がして……』
碧人は、心臓を鷲掴みにされたような感覚に襲われた。
「……大丈夫。もうすぐ帰るよ」
『……うそ。声が、違う。……碧人くん、怒ってるときの声してる……』
「……怒ってない。怒ってなんか、ないよ」
『本当? お願い、ちゃんと帰ってきて。私……あなたがいないと、怖い。ねぇ、お願いだから、ひとりにしないで』
その言葉に、指先が微かに震えた。
(……何してんだ、俺)
ナイフをポケットに戻す。代わりにスマホをぎゅっと握り締めた。
「……わかった。今すぐ帰る。すぐに行くから、待ってて」
『うん……待ってる。帰ってきて』
通話を切ったあと、碧人はその場にしゃがみ込んだ。
喉の奥が焼けるように痛い。吐きそうなほどに、何かがせり上がっていた。
(俺は――また、あの扉を開けるところだった)
(誰かの命を、踏みにじろうとしていた)
(彼女を守るためなんて、言い訳だった)
その場から立ち上がると、背中の奥に誰かの視線を感じた気がした。
──風に揺れる屋上のフェンス。そこには、誰の姿もなかった。
*
その夜、烏牙は静かに手帳を閉じた。
(“予定された死”は、保留された)
(だが、彼の運命のバランスは極めて不安定だ)
死神は、記録者に過ぎない。だが、もし彼が再び“境界線”を越える時が来たなら――
次は、もう誰も止められない。
*
朝の光がカーテンの隙間から差し込む。
遥はうっすらと目を覚ました。隣にいるはずの碧人の姿はなかったが、テーブルの上に置かれたマグカップから湯気が立っていた。
(……帰ってきてくれたんだ)
心の奥がじんわりと温かくなる。昨夜、電話口の碧人の声が少し震えていたことを思い出す。
(彼は変わろうとしてる。壊れそうな自分を、止めようとしてる)
遥はそう信じたかった。
*
けれど、その日。
職場のオフィスで――小さな異変が、静かに彼女に忍び寄った。
「遥ちゃん、ちょっといい?」
振り返ると、岡部主任がいた。いつもと変わらない微笑み。けれど、どこか“色”が違って見えた。
「この書類なんだけど、会議室でちょっとだけ説明したいんだ」
「……あの、今はちょっと――」
「すぐでいいから。5分だけ」
断れない空気。遥は、書類を手にして会議室へと向かった。
会議室のドアが閉まると、急に世界が密閉されたように感じた。
「ねえ、遥ちゃん」
岡部は突然、笑顔のまま声のトーンを落とした。
「最近、帰りが遅いよね。駅のほうで誰かと一緒にいるの、見たよ」
遥の背筋が凍る。
「……え?」
「彼氏? ふふ、意外だなぁ。あんなタイプが好きなんだ。ほら、髪とか乱れてたから、ちょっと……激しかった?」
その言葉に、遥は震えた。背筋に冷たい汗が流れる。
「……どうしてそんなこと、知ってるんですか?」
岡部は、にっこりと笑った。
「だって、君のこと見てるからだよ。前から、ずっと」
遥は立ち上がった。椅子が音を立てて後ろに倒れる。
「やめてください……もう、やめてください……!」
「どうして? 僕、君が怖い目に遭うのが嫌なんだよ。あの男、危ないよ。目つき、変わるときあるだろ? ああいうタイプ、境界があいまいなんだ。どこかで“壊す”よ。……君を」
「碧人くんはそんな人じゃ――!」
そのとき、会議室の電球がチカッと一瞬だけ暗転した。
瞬間、遥の背後に黒い影が現れる。
外套をまとった死神・烏牙が、静かにそこに立っていた。
遥には、彼の姿が見えていた。
(また……来た)
心臓がドクドクと高鳴る。声はかけてこない。ただ、まっすぐに“警告”を込めた視線だけが遥に向けられていた。
「……何も言ってくれないんですね」
遥は、誰にも聞こえない声で呟いた。
岡部は訝しげに顔をしかめた。
「……誰と話してるの?」
遥は目を見開いたまま、言った。
「あなたには見えない。だって、あなたは私の運命の人じゃないから」
岡部の表情が引きつった。
その瞬間――遥は会議室から飛び出した。
職場の廊下を走る。胸が苦しくて、涙が出そうだった。
息を切らしながら、スマホを取り出し、震える指で碧人の名前をタップする。
呼び出し音――1回、2回、3回。
「……碧人くん、出て……お願い……!」
ようやく繋がったその先で、彼の声が聞こえた。
『遥? どうした、何が――』
「お願い、来て……迎えに来て……!」
その声は、泣いていた。
碧人は答えた。
『……わかった。今すぐ行く。誰にも触れさせない』
その声が、今は何よりの救いだった。
──遥の胸には知らず、烏牙の視線がまだ残っていた。
(君は、選んだ)
(その手を握るということが、何を意味するかを)
烏牙は再び、遥の死の運命を記した手帳を開いた。
記録は、かすかに乱れていた。
*
街の空気はどこか重く、湿っていた。午後の光が陰り始めた職場ビルの前で、遥は手に汗を握っていた。
(来てくれる……本当に、来てくれる……)
駅まで逃げようとも思った。けれど、足が動かなかった。背後から、また岡部に声をかけられるかもしれない。見られているかもしれない。自分の部屋さえも、もう安心できない。
そんな中で、スマホに表示された“着信中”の文字が、唯一の光だった。
「遥」
聞き慣れた声。振り返ると、スーツ姿の碧人がいた。
どこか風をまとっているような、落ち着いた表情。
けれど遥は、その顔を見た瞬間、すがりつくように抱きついた。
「来てくれて……ありがとう……!」
彼の胸に顔をうずめたまま、声が震えていた。
「……怖かった。誰が味方で、誰が敵か、わからなくなってた……でも、碧人くんだけは、信じてるから……」
碧人はそっと彼女の背に手を回す。
「……もう大丈夫。俺がいる。誰にも触れさせない」
そのときだった。
「あれ? 遥ちゃん、どうしたの?」
職場の自動ドアが開き、岡部が現れた。
手にはファイル。だが、その顔には“作られた驚き”が浮かんでいた。
「体調悪いの? 早退? ああ、それとも……彼氏さんと待ち合わせ?」
遥の肩がびくりと震える。
碧人は、ゆっくりと彼女を自分の背後へと庇った。視線は一切逸らさず、岡部に向けられている。
「……如月碧人、です」
「……ああ、遥ちゃんの“お友達”? 彼女、少し不安定でね。最近ストレスが強いみたいだから、周りで気をつけてあげないと――」
「お前だろ」
碧人の声が、低く静かに空気を切った。
「彼女を見てたのは、お前だ。勝手に家に入り、カメラを仕掛け、生活を覗き、盗んでいた」
岡部の笑顔が、ほんの一瞬だけ引きつった。
「それ、証拠あるの? ずいぶんと人聞きの悪いこと言うなぁ」
「証拠がなくても、お前の“目”がそれを物語ってる」
碧人の視線は、まるで観察対象を切り裂く手術刀のようだった。
岡部の目が細くなった。
「君も“見てた”んだろ? 彼女を。違うかい? そういう目を、知ってるよ。ああいうのはな、“こっち側”の人間にしか分からない」
一瞬、空気が止まった。
碧人の奥底に、黒い何かが蠢く。胸の内側に燃える熱が、こみ上げてくる。
遥が背後から、そっと彼の服を握った。
「やめて……お願い。今ここで、壊さないで……」
碧人の呼吸が、浅くなる。視界がわずかに揺れる。
けれど――彼女の声が、確かに届いていた。
「……俺は、お前とは違う」
そう呟くように言うと、碧人は遥の手を取った。
「もう関わるな。次があったら――お前がどれだけ“見て”いようと、戻れない場所まで行く」
岡部はしばらく無言だったが、やがて鼻で笑った。
「ふーん。じゃあ、せいぜい仲良くね」
そのまま背を向けてビルの中へ消えていく。
だが、あの背中にはまだ執着が残っていた。簡単には終わらない。
*
烏牙は、街灯の影からその一部始終を見下ろしていた。遥の背に、碧人の手が重なったまま歩き去っていく姿。
(再び運命が分岐した)
彼の記録帳には、碧人の“死神対象外”の印がある。
それでも、遥が彼に手を伸ばし続ける限り――
彼女の死の道は、いつでも、碧人の心ひとつで開く。
如月碧人は、岡部の住むマンションの扉の前に立っていた。
手袋をはめた手は、静かにドアノブの上へ伸びる。ドアスコープの位置、鍵穴の構造、周囲の音――すべてを記憶の奥で解析していた。
(俺は、何をしに来た?)
問いは浮かぶのに、答えが返ってこない。
ただ胸の奥に、遥が涙を流していた夜の記憶がある。
盗撮されていた。日常を覗かれていた。怯えて、自分にすがってきた――あの姿が焼きついている。
(あいつが、遥を“見ていた”)
(その目を、潰せば終わる)
ポケットの中には、小さな工具ナイフがあった。手に馴染む感触。知らないはずの道具なのに、使い方が脳に焼きついていた。
(これが、俺なのか?)
指がナイフの柄に触れたとき――心の底で、何かが軋んだ。
そのとき、背中のポケットの中――スマートフォンが震えた。
……ブルッ、ブルッ……
画面には、「遥」 の名前。
息を呑む。手が止まった。
(なんで……)
数秒迷い、通話ボタンを押す。
「……もしもし?」
『碧人くん……どこにいるの?』
聞こえた声は、弱々しく震えていた。
『……ごめん、勝手に出て。けど……なんか、変な夢見て、すごく嫌な気がして……』
碧人は、心臓を鷲掴みにされたような感覚に襲われた。
「……大丈夫。もうすぐ帰るよ」
『……うそ。声が、違う。……碧人くん、怒ってるときの声してる……』
「……怒ってない。怒ってなんか、ないよ」
『本当? お願い、ちゃんと帰ってきて。私……あなたがいないと、怖い。ねぇ、お願いだから、ひとりにしないで』
その言葉に、指先が微かに震えた。
(……何してんだ、俺)
ナイフをポケットに戻す。代わりにスマホをぎゅっと握り締めた。
「……わかった。今すぐ帰る。すぐに行くから、待ってて」
『うん……待ってる。帰ってきて』
通話を切ったあと、碧人はその場にしゃがみ込んだ。
喉の奥が焼けるように痛い。吐きそうなほどに、何かがせり上がっていた。
(俺は――また、あの扉を開けるところだった)
(誰かの命を、踏みにじろうとしていた)
(彼女を守るためなんて、言い訳だった)
その場から立ち上がると、背中の奥に誰かの視線を感じた気がした。
──風に揺れる屋上のフェンス。そこには、誰の姿もなかった。
*
その夜、烏牙は静かに手帳を閉じた。
(“予定された死”は、保留された)
(だが、彼の運命のバランスは極めて不安定だ)
死神は、記録者に過ぎない。だが、もし彼が再び“境界線”を越える時が来たなら――
次は、もう誰も止められない。
*
朝の光がカーテンの隙間から差し込む。
遥はうっすらと目を覚ました。隣にいるはずの碧人の姿はなかったが、テーブルの上に置かれたマグカップから湯気が立っていた。
(……帰ってきてくれたんだ)
心の奥がじんわりと温かくなる。昨夜、電話口の碧人の声が少し震えていたことを思い出す。
(彼は変わろうとしてる。壊れそうな自分を、止めようとしてる)
遥はそう信じたかった。
*
けれど、その日。
職場のオフィスで――小さな異変が、静かに彼女に忍び寄った。
「遥ちゃん、ちょっといい?」
振り返ると、岡部主任がいた。いつもと変わらない微笑み。けれど、どこか“色”が違って見えた。
「この書類なんだけど、会議室でちょっとだけ説明したいんだ」
「……あの、今はちょっと――」
「すぐでいいから。5分だけ」
断れない空気。遥は、書類を手にして会議室へと向かった。
会議室のドアが閉まると、急に世界が密閉されたように感じた。
「ねえ、遥ちゃん」
岡部は突然、笑顔のまま声のトーンを落とした。
「最近、帰りが遅いよね。駅のほうで誰かと一緒にいるの、見たよ」
遥の背筋が凍る。
「……え?」
「彼氏? ふふ、意外だなぁ。あんなタイプが好きなんだ。ほら、髪とか乱れてたから、ちょっと……激しかった?」
その言葉に、遥は震えた。背筋に冷たい汗が流れる。
「……どうしてそんなこと、知ってるんですか?」
岡部は、にっこりと笑った。
「だって、君のこと見てるからだよ。前から、ずっと」
遥は立ち上がった。椅子が音を立てて後ろに倒れる。
「やめてください……もう、やめてください……!」
「どうして? 僕、君が怖い目に遭うのが嫌なんだよ。あの男、危ないよ。目つき、変わるときあるだろ? ああいうタイプ、境界があいまいなんだ。どこかで“壊す”よ。……君を」
「碧人くんはそんな人じゃ――!」
そのとき、会議室の電球がチカッと一瞬だけ暗転した。
瞬間、遥の背後に黒い影が現れる。
外套をまとった死神・烏牙が、静かにそこに立っていた。
遥には、彼の姿が見えていた。
(また……来た)
心臓がドクドクと高鳴る。声はかけてこない。ただ、まっすぐに“警告”を込めた視線だけが遥に向けられていた。
「……何も言ってくれないんですね」
遥は、誰にも聞こえない声で呟いた。
岡部は訝しげに顔をしかめた。
「……誰と話してるの?」
遥は目を見開いたまま、言った。
「あなたには見えない。だって、あなたは私の運命の人じゃないから」
岡部の表情が引きつった。
その瞬間――遥は会議室から飛び出した。
職場の廊下を走る。胸が苦しくて、涙が出そうだった。
息を切らしながら、スマホを取り出し、震える指で碧人の名前をタップする。
呼び出し音――1回、2回、3回。
「……碧人くん、出て……お願い……!」
ようやく繋がったその先で、彼の声が聞こえた。
『遥? どうした、何が――』
「お願い、来て……迎えに来て……!」
その声は、泣いていた。
碧人は答えた。
『……わかった。今すぐ行く。誰にも触れさせない』
その声が、今は何よりの救いだった。
──遥の胸には知らず、烏牙の視線がまだ残っていた。
(君は、選んだ)
(その手を握るということが、何を意味するかを)
烏牙は再び、遥の死の運命を記した手帳を開いた。
記録は、かすかに乱れていた。
*
街の空気はどこか重く、湿っていた。午後の光が陰り始めた職場ビルの前で、遥は手に汗を握っていた。
(来てくれる……本当に、来てくれる……)
駅まで逃げようとも思った。けれど、足が動かなかった。背後から、また岡部に声をかけられるかもしれない。見られているかもしれない。自分の部屋さえも、もう安心できない。
そんな中で、スマホに表示された“着信中”の文字が、唯一の光だった。
「遥」
聞き慣れた声。振り返ると、スーツ姿の碧人がいた。
どこか風をまとっているような、落ち着いた表情。
けれど遥は、その顔を見た瞬間、すがりつくように抱きついた。
「来てくれて……ありがとう……!」
彼の胸に顔をうずめたまま、声が震えていた。
「……怖かった。誰が味方で、誰が敵か、わからなくなってた……でも、碧人くんだけは、信じてるから……」
碧人はそっと彼女の背に手を回す。
「……もう大丈夫。俺がいる。誰にも触れさせない」
そのときだった。
「あれ? 遥ちゃん、どうしたの?」
職場の自動ドアが開き、岡部が現れた。
手にはファイル。だが、その顔には“作られた驚き”が浮かんでいた。
「体調悪いの? 早退? ああ、それとも……彼氏さんと待ち合わせ?」
遥の肩がびくりと震える。
碧人は、ゆっくりと彼女を自分の背後へと庇った。視線は一切逸らさず、岡部に向けられている。
「……如月碧人、です」
「……ああ、遥ちゃんの“お友達”? 彼女、少し不安定でね。最近ストレスが強いみたいだから、周りで気をつけてあげないと――」
「お前だろ」
碧人の声が、低く静かに空気を切った。
「彼女を見てたのは、お前だ。勝手に家に入り、カメラを仕掛け、生活を覗き、盗んでいた」
岡部の笑顔が、ほんの一瞬だけ引きつった。
「それ、証拠あるの? ずいぶんと人聞きの悪いこと言うなぁ」
「証拠がなくても、お前の“目”がそれを物語ってる」
碧人の視線は、まるで観察対象を切り裂く手術刀のようだった。
岡部の目が細くなった。
「君も“見てた”んだろ? 彼女を。違うかい? そういう目を、知ってるよ。ああいうのはな、“こっち側”の人間にしか分からない」
一瞬、空気が止まった。
碧人の奥底に、黒い何かが蠢く。胸の内側に燃える熱が、こみ上げてくる。
遥が背後から、そっと彼の服を握った。
「やめて……お願い。今ここで、壊さないで……」
碧人の呼吸が、浅くなる。視界がわずかに揺れる。
けれど――彼女の声が、確かに届いていた。
「……俺は、お前とは違う」
そう呟くように言うと、碧人は遥の手を取った。
「もう関わるな。次があったら――お前がどれだけ“見て”いようと、戻れない場所まで行く」
岡部はしばらく無言だったが、やがて鼻で笑った。
「ふーん。じゃあ、せいぜい仲良くね」
そのまま背を向けてビルの中へ消えていく。
だが、あの背中にはまだ執着が残っていた。簡単には終わらない。
*
烏牙は、街灯の影からその一部始終を見下ろしていた。遥の背に、碧人の手が重なったまま歩き去っていく姿。
(再び運命が分岐した)
彼の記録帳には、碧人の“死神対象外”の印がある。
それでも、遥が彼に手を伸ばし続ける限り――
彼女の死の道は、いつでも、碧人の心ひとつで開く。
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