俺は善人にはなれない

気衒い

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第9章 フォレスト国

第141話 計画

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カグヤ達がギルドの扉を潜る約3時間前。王城内のフォレスト王の私室を訪れる者達がいた。とは言ってもノックや扉の外から声を掛けるなどの一般的な方法ではなく、それは一風変わった訪問であった。

「お父様!お久しぶりです!」

「っ!?リ、リースか!?お前、今まで一体どこに……………書き置きには"少しの間出掛けてきます。ご心配なさらず"ということしか書かれていなかったぞ。まぁ、この間、迷宮都市へと向かった例もあるから、それほど心配はしていなかったが。何よりセバスが一緒だしな」

「国王様、ご心配をお掛け致しました」

「無事に帰ってきてくれて何よりだ……………それはそうと今、この部屋の中にいきなり現れなかったか?あんな芸当、セバスでも出来んだろ?お前達がいなくなっている間に何かがあったのか?それこそ、急成長するような何かが……………」

「それも含めて話したいことがあるんだけど……………その前にちょっといい?」

「ん?何だ?」

「今から紹介したい人達がいるんだけど、ここに呼んでもいいかな?」

「それはお前達が信頼できる者達か?だったら、別に構わんが。とは言っても城内へは関係者以外、立ち入り禁止だぞ。いくらお前達の知り合いとはいえな」

「大丈夫だよ。だって、今この場にいるんだから」

「は?」

「シンヤ、いいってさ。もう解除しても」

「了解だ」

「っ!?こ、これはなんと……………」

「お初にお目にかかる。俺はシンヤ、冒険者をしている者だ。フォレスト王に相違ないな?」

「うむ。ワシはアース・フォレスト。この国で王をやっておる。つかぬことを聞くがお主、まさか……………邪神を討ち滅ぼしたといわれる英雄か?」

「ああ。不本意だが、そう呼ばれることもある」

「な、なんと!?まさか生きている内にお目にかかれるとは。この者があの……………いやはや、これは驚いた。しかも見たところ仲間も数人いるみたいだな。確か"十人十色"と呼ばれる幹部だったか…………いよいよもって何故、リースの知り合いなんだ?」

「それらについても俺の方から説明させてもらう。気になったことがあったら、質問してくれ」

「了解だ」

「では……………」




――――――――――――――――――――





「なるほど。そのようなことが…………」

「ああ。それで今日に至る。ちなみにここへは"透過"と呼ばれる固有スキルを使用して、やってきた。城内で誰かに見つかる訳にはいかないからだ」

「ほぅ。名前を聞くからに便利なスキルだな。やりようによっては国1つを自由自在に操れるやもしれん」

「興味がない」

「欲がないのか?」

「縛られたくないだけだ」

「?お主が縛りつける側じゃないのか?」

「逆だ。いくら自分の思うがままにできるとはいえ、結局は国1つに囚われ、そこに留まり続けて、行動していくしかない。自然と選択肢も狭まっていくだけだ。そんなのは自由を愛する冒険者の精神とは反する。ましてや、俺は政治自体に興味がない」

「惜しいな。お主ならば上手くいきそうな気がするんだが」

「したくないことはしない。この世界は弱肉強食。鍛えた剣技や魔法があり、強ければ理不尽に屈することなく、自由に生きることができる。俺が元いた世界とは違ってな」

「元いた世界?お主は一体……………」

「そんなことはどうでもいい。今はここに来た目的の方が先だ」

「うむ。それはずっと気になっていた。一体何を考えているんだ?」

「ああ。それはな……………」








「おぉっ!なるほど!それは面白い。だが、いいのか?いくら、それ相応の礼はするとしてもお主達に負担が」

「大丈夫だ。任せてくれ。とりあえず、このビラに印鑑とサインをしてくれ。そしたら、ビラを冒険者ギルドまでカグヤ達に持っていってもらうから。そこではおそらく多くの者がビラ配りに参加してくれるだろう。つまり、予定では間に合うはずだ」

「了解だ。何から何まで済まない。そして、ありがとう」

「まだその言葉は早いぞ。全てが終わってからにしてくれ」

「それもそうだな。じゃあ、これだけは言わせてくれ……………リースのことを大切にしてくれて、ありがとう。これは国王としてではなく、1人の親としての言葉だ」

「こちらこそ、ありがとう。リースはとても良い奴だ。一緒にいると楽しい」

「そうか。なら、結婚相手としてはどうだ?」

「お、お父様!?」

「その言葉もまだ早いぞ」

「シ、シンヤ!?ま、まだって……………」

こうして、秘密裏に進められた計画は数時間後、驚くべき結果を残すこととなる。しかし、それは当事者たちしか知りようのないことであった。
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