俺は善人にはなれない

気衒い

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第10章 セントラル魔法学院

第171話 初出勤

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「俺達はクラン"黒天の星"の者達だ。この度、セントラル魔法学院の理事長ネバダ・クウォーターの依頼により、ここを訪れた。確認を頼む」

カンパル王国に到着してから1時間後、俺達はセントラル魔法学院の門前にいた。学院の敷地内に入る際、警備員によって身分証の確認が行われた後、素性とどのような要件でやってきたのかを尋ねられた。それに対し、簡潔に答えた俺達は理事長へ魔道具で確認を取ると言った警備員の返答を待っていた。そこから少ししてこちらを振り向いた警備員はこう言った。

「大変お待たせ致しました。ただいま確認が取れましたので通って頂いて結構です」

「ああ。手間をかけたな」

「いえいえ!……………あ、ち、ちょっとお待ち下さい!」

「ん?」

「あの、非常に申し上げ難いのですが…………今、私が申し上げたのは人族の方々に対してでして、それ以外の方々は」

「何だ?理事長に人族以外を通すなとでも言われたのか?」

「いえ…………」

「じゃあ問題ないな」

「あ、ちょっ、ちょっと!」

「これ以上は無駄な話し合いだ。俺達がここまで辿り着けている時点でお察しだろ」




――――――――――――――――――――





「ようこそ!お待ち申し上げておりました」

「待たせたな。フリーダムから結構、距離があったがネバダも来る時、大変だっただろ?」

「いえいえ!とんでもございません!その間にも色々と勉強になることが満載でした。こちらの方こそ、ありがとうございます!」

「そう言って頂けて何よりだ。それにしてもこの王国に入って、人族至上主義の洗礼を受けたんだが…………何だあれ?」

「非常にお恥ずかしい限りです。皆様、申し訳ございません」

「いや、お前が謝る必要はないだろ。ってか、お前はそっち側じゃないんだな」

「ええ、少し訳がありまして……………とにかく、"黒天の星"の皆様ならば大丈夫だろうと高を括ったが為に不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございませんでした……………まさか、誰彼構わずとは思いも寄らなかったです」

「いや、こっちは大丈夫だ。特に被害があった訳ではないからな」

「そうですか。それは良かったです」

その後、少し雑談を交わした俺達は教師陣に軽い自己紹介をして欲しいと頼まれ、理事長室を出て、職員室へと向かった。







「え~皆様、こちらが本日より特別講師としておいで下さったクラン"黒天の星"の方々です」

「俺はシンヤ・モリタニ。冒険者をしていて、"黒天の星"のクランマスターを務めている。全員だと時間が掛かる為、代表して俺が挨拶をさせてもらう。まず、お前達に言いたいことが2つある。1つ目は俺達が担当する授業に一切の口出しをするな。そして、2つ目が俺達の邪魔をするな………だ。今回、正式な依頼という形で俺達はこの学院に足を運んでいる。お前達の感情がどうであれ、それを邪魔する権利はお前達にはない。あと講師の年齢が生徒と変わらないとかいうくだらないいちゃもんも一切受け付けない。この世界では実力が全てだ。実際、若くても強い奴はゴロゴロいる。まぁ、そんなことすら分かっていない奴がこの中にいるとは思えないが。とにかく、今日から少しの間、よろしく頼む」

「「「「「よろしくお願い致します」」」」」

俺の後に続けて、クランメンバーも軽く挨拶をする。いきなり色々と言ったからか、少し戸惑いの空気が場を支配していたが1人が拍手をすると徐々にそれが広がっていった。しかし……………

「み、認めないぞ!私は絶対に!」

「キルギス!あなた、何を」

理事長にキルギスと呼ばれた金髪の痩せ型の男は俺達を忌々しく睨みつけながら、こう言った。

「たかが冒険者風情が何を偉そうにほざいている!しかもこんなに他種族を引き連れて!よくもまぁ、入国できたものだな!汚らわしい!今すぐ、そのゴミ共々…………」

「今、なんて言った?」

「ひっ!?」

俺は音も気配もなく、その男の後ろに立つと刀を首に当て、軽く殺気を出した。

「さっき言ったよな?俺達の邪魔をするなって………………次はないぞ」

「は、はい!す、すみませんでした!」

俺はそこから先程の位置までゆっくりと歩いて戻り、振り返ってからこう言った。

「まぁ、心配せずとも依頼はキッチリとこなすから黙って見ててくれ」

他種族のクランメンバーに対する視線は相変わらずなものではあったが、ほとんどの教師達がとりあえずは様子見という姿勢でいくらしい。ただ1人……………その目に暗い炎を宿した険しい表情の男を除いては。
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