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第四章 『ヤマト運用商会』結成
恩人
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「ヤマト様は私の恩人なのです」
「恩人?」
「はい。私はかつて、ハンナと同じで奴隷商の元で奴隷として暮らしていました」
ハンナが俯き、暗い表情で手をギュッと握る。
「ある日、私に目を付けた商人が使えそうだからと、買い取ったんです。もちろん私は嫌でした。ハンナたち同じ境遇の奴隷たちと離れるのは不安で仕方なかったんです」
「ぶしつけなことを聞いてごめん。そこの奴隷は、みんなハンナぐらいの年の子なの?」
ヤマトが問うと、アヤより先にハンナが答えた。
「そこには、孤児や身売りされた女の子たちが集められて、奴隷として調教……育てられていたの」
「ひどい……」
「いいのよシルフィ。奴隷商の主人は最悪だったけど、私たちは奴隷同士で身を寄せ合って、なんとかやっていけてたからそこまで辛くはなかった。でも、アヤが奴隷として売られた後、他の子たちもどんどん売られていったわ。奴隷仲間が次々に減り、どんどん心細くなっていって、次は自分の番じゃないかと考えると怖かった。それで残った奴隷たちはみんな一斉に逃げ出したの。それぞれ別の方向へ向かってね」
自分が出た後のことを始めて知ったようで、アヤは瞳を揺らす。
「そうだったの……でも、売られる前に逃げたのは正解だと思う」
「どうして?」
「売られた先での私の扱いがひどかったから。もちろん奴隷だからっていうのは理解はしていたけど、それでも服も食事も満足に与えられなかったし、暴力や怒声は日常茶飯事だった」
「アヤ……辛かったんだね」
「うん。でも、そのとき私を救ってくれたのがヤマト様なの」
「え? 僕?」
突然自分が登場し、ヤマトはポカンと口を開く。
アヤは頬を緩ませ頷いた。
「主からひどい扱いをされていた市場で、ヤマト様と出会いました。あなたは私を見て、彼女を解放してやってほしいと主に告げ、交渉をしてくださいました。そしてすぐに金を渡して、私を主の奴隷から解放してくださったんです。その後、金庫番でご自分の資金を引き出し、それを私に渡して言ってくれました。『辛かったね。これでまたやり直せばいいよ』と」
アヤの目は潤んでいた。
周囲もしんみりした雰囲気で聞き入っていて、シルフィに関してはハンカチ片手に溢れる涙をぬぐいながら聞き入っている。
しかしヤマトのほうは、そんなこともあったなとようやく思い出した。
(確か、彼女をほしいと言ったら、使えないからって安く買えたんだったけ? その後、彼女に渡した資金が十分かだけが気がかりだったけど、問題ないみたいで良かった)
ヤマトがうんうんと満足げに頷いていると、アヤがヤマトの目の前で片膝を立て頭を下げる。
「あのときは名も分からず、ハンター業をしながらもずっと探し続けていましたが、ようやくお会いすることができました。あのときは助けてくれて、本当にありがとうございました」
「ヤマトくん、アヤを助けてくれて本当にありがとう」
「当然のことをしたまでだよ」
ヤマトが笑みを浮かべながら、さきほどのアヤと同じ言葉で返すと、アヤは嬉しそうに微笑んだ。
彼にとっては、金で救える人がいるのなら惜しまず救うのは当然のこと。
それが師匠の教えでもあり、ヤマト自身の夢でもある。
「……どっかで聞いた話だね。まったくヤマトらしい」
ラミィはあきれたように言って肩をすくめる。
シルフィも涙をぬぐいながら苦笑した。
「ちょっと複雑ですね」
二人はヤマトと出会ったときのことを思い出しているのだろう。
あのときも、彼は無償で自らの資金を使い、三人を助けた。
昔も今も、ヤマトの行動原理はなに一つ変わっていないのだ。
アヤはこうべを垂れ、仰々しく告げる。
「あのときのご恩、今こそ返すときだと考えています。どうか、あなたの護衛として雇って頂けないでしょうか?」
「……分かった。これからよろしく頼むよ、アヤ」
「っ! ありがとうございます、ヤマト様!」
「良かったね! アヤ!」
「うん!」
アヤとハンナは涙を浮かべながら嬉しそうに抱き合う。
そんな姿を見てヤマトも温かい気持ちになるのだった。
「恩人?」
「はい。私はかつて、ハンナと同じで奴隷商の元で奴隷として暮らしていました」
ハンナが俯き、暗い表情で手をギュッと握る。
「ある日、私に目を付けた商人が使えそうだからと、買い取ったんです。もちろん私は嫌でした。ハンナたち同じ境遇の奴隷たちと離れるのは不安で仕方なかったんです」
「ぶしつけなことを聞いてごめん。そこの奴隷は、みんなハンナぐらいの年の子なの?」
ヤマトが問うと、アヤより先にハンナが答えた。
「そこには、孤児や身売りされた女の子たちが集められて、奴隷として調教……育てられていたの」
「ひどい……」
「いいのよシルフィ。奴隷商の主人は最悪だったけど、私たちは奴隷同士で身を寄せ合って、なんとかやっていけてたからそこまで辛くはなかった。でも、アヤが奴隷として売られた後、他の子たちもどんどん売られていったわ。奴隷仲間が次々に減り、どんどん心細くなっていって、次は自分の番じゃないかと考えると怖かった。それで残った奴隷たちはみんな一斉に逃げ出したの。それぞれ別の方向へ向かってね」
自分が出た後のことを始めて知ったようで、アヤは瞳を揺らす。
「そうだったの……でも、売られる前に逃げたのは正解だと思う」
「どうして?」
「売られた先での私の扱いがひどかったから。もちろん奴隷だからっていうのは理解はしていたけど、それでも服も食事も満足に与えられなかったし、暴力や怒声は日常茶飯事だった」
「アヤ……辛かったんだね」
「うん。でも、そのとき私を救ってくれたのがヤマト様なの」
「え? 僕?」
突然自分が登場し、ヤマトはポカンと口を開く。
アヤは頬を緩ませ頷いた。
「主からひどい扱いをされていた市場で、ヤマト様と出会いました。あなたは私を見て、彼女を解放してやってほしいと主に告げ、交渉をしてくださいました。そしてすぐに金を渡して、私を主の奴隷から解放してくださったんです。その後、金庫番でご自分の資金を引き出し、それを私に渡して言ってくれました。『辛かったね。これでまたやり直せばいいよ』と」
アヤの目は潤んでいた。
周囲もしんみりした雰囲気で聞き入っていて、シルフィに関してはハンカチ片手に溢れる涙をぬぐいながら聞き入っている。
しかしヤマトのほうは、そんなこともあったなとようやく思い出した。
(確か、彼女をほしいと言ったら、使えないからって安く買えたんだったけ? その後、彼女に渡した資金が十分かだけが気がかりだったけど、問題ないみたいで良かった)
ヤマトがうんうんと満足げに頷いていると、アヤがヤマトの目の前で片膝を立て頭を下げる。
「あのときは名も分からず、ハンター業をしながらもずっと探し続けていましたが、ようやくお会いすることができました。あのときは助けてくれて、本当にありがとうございました」
「ヤマトくん、アヤを助けてくれて本当にありがとう」
「当然のことをしたまでだよ」
ヤマトが笑みを浮かべながら、さきほどのアヤと同じ言葉で返すと、アヤは嬉しそうに微笑んだ。
彼にとっては、金で救える人がいるのなら惜しまず救うのは当然のこと。
それが師匠の教えでもあり、ヤマト自身の夢でもある。
「……どっかで聞いた話だね。まったくヤマトらしい」
ラミィはあきれたように言って肩をすくめる。
シルフィも涙をぬぐいながら苦笑した。
「ちょっと複雑ですね」
二人はヤマトと出会ったときのことを思い出しているのだろう。
あのときも、彼は無償で自らの資金を使い、三人を助けた。
昔も今も、ヤマトの行動原理はなに一つ変わっていないのだ。
アヤはこうべを垂れ、仰々しく告げる。
「あのときのご恩、今こそ返すときだと考えています。どうか、あなたの護衛として雇って頂けないでしょうか?」
「……分かった。これからよろしく頼むよ、アヤ」
「っ! ありがとうございます、ヤマト様!」
「良かったね! アヤ!」
「うん!」
アヤとハンナは涙を浮かべながら嬉しそうに抱き合う。
そんな姿を見てヤマトも温かい気持ちになるのだった。
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