異世界投資家の逆襲 ~冤罪で国を追われた王子は、辺境の地で最強の投資家として成り上がる~

高美濃 四間

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最終章 逆襲の投資家

予感

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 その日、エデン城内の大会議室では、増税について様々な議論がなされていた。
 増税に対して反対する意見もありはしたが、宰相であるキグスが強く賛成しており、正式な決定も時間の問題だ。

 オーキは苦々しい表情で目を瞑る。
 なにか状況を打開できるような手はないのかと、無意味にも考え始めるが――

「――ご報告します!」

 会議室の扉が開き、一人の騎士が慌てて入ると片膝を立て頭を下げた。
 肩当の階級章を見るに、それなりに高位の階級にいる騎士だ。

「今は会議中だぞ!? よほどの緊急事態でもない限り、報告は後にせよ!」

 キグスが苛立ちに眉を歪ませ怒鳴りつける。
 彼の叱責しっせきに、騎士は肩を震わせ「し、しかし……」と言葉を詰まらせた。
 だがオーキは、騎士へ目を向け告げる。

「構わない。なにがあった?」

「お、王様!? 今は大事な会議中です。報告は会議が終わってからで良いではありませんか」

「いやダメだ。もし会議よりも重要で緊急の内容だったらどうする? それに、緊急かどうかを判断するのは私たちだ。まずは内容を聞いてみようじゃないか」

「……承知、致しました」

 キグスは渋々と言った様子で騎士へ顔を向ける。
 騎士は報告を始めた。

「現在、城門に数十人の国民が押しかけております」

「なに? 理由はなんだ?」

「それが……大臣の不正について、明確な説明を求めると……」

 それを聞いて会議室がざわついた。
 不祥事の話など、最近新たに発生したとは聞いていないからだ。
 オーキは困惑に眉を寄せ騎士に問う。

「それはどんな内容だ?」

「なんでも、特別融資によってランダー元王子の出資金の肩代わりをしたことを理由に、スカール大臣がハンターギルドに対して裏金を流すよう要求したと」

 騎士はスカールとは目を合わせないように、ななめ下を向き言いづらそうに言った。
 一瞬、凍りついたかのように会議室が静まり返る。
 すると、当のスカールが立ち上がり必死に叫んだ。

「デ、デタラメです! そんな事実はありません! 貴様、よくもそんなことが言えたなぁっ!?」

「お、押し寄せた民がそう言っているのです! 実際に指示されたというハンターギルドが告発しているようでして……」

「バ、バカなっ!? そ、そんなわけが……」

 しどろもどろになるスカール。
 オーキが睨みつけていることに気付いた彼は、ばつが悪そうに目をそらした。
 そこでキグスが助け船を出す。

「ふむ、確かに緊急事態だ。しかしあまりに突然のことで、なんとも言えない。国民には、『そのような事実は確認されていない。事実関係を調査し、明確な答えが出てから公表する』と伝えよ」

「かしこまりました」

 指示を受け、騎士はすぐに部屋を出て行った。
 スカールはキグスへ目を向け、弱々しい声を発する。

「キ、キグス宰相……」

「ふんっ、どうせ誰かが流したデマだ。放っておけばすぐに忘れられるだろう。事実無根だと言うのなら、堂々としているがいい」

 どうやら、事実関係を調査するという話は時間稼ぎのための方便のようだ。
 キグスが真に受けている様子はまるでない。
 しかしオーキは、なにかとてつもなく悪い方向へ進んでいるのではないかと、かすかに感じ始めていた。

 そしてすぐに、オーキは自分の直感が正しかったのだと悟る。
 数日後、舌の根も乾かぬうちに新たな噂が流れたのだ。 
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