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第十章
霊媒師『多幸』
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11月の初旬のある日、妻は大阪南港へと電車で向かっていた。
その向かい先は、ネットで探し当てたある霊媒師の所であった。
妻は東京から滋賀に戻るや否や、早々に、その道の者を頼りにするべく、ネットで「悪霊祓い」を検索した。
胡散臭い謳い文句の輩が沢山ヒットした中、妻は自身の直感により『多幸』と名乗る霊媒師に決め、電話をした。
電話で一通り社宅での出来事を話すと多幸は妻に次の指示を出した。
「全ての部屋の天井四隅と全ての窓ガラスの写真を持って、こちらに来るように」と
妻は南港東口駅で降りて、徒歩5分程にある多幸の住むマンションの一室に向かった。
部屋の前に着いた妻は呼鈴を鳴らすと、高齢の女性が出て来た。
「電話で相談した小野です。」
「お待ちしておりました。中にお入りください。」
部屋の中は普通の住いのものであった。
リビングのソファーに勧められ、お互い向かい合って座ると、
多幸と名乗る老婆は、お茶も入れず、先早やに妻に問うた。
「お願いした写真は持って来てくれましたか?」と
妻は慌てて、バックから紙袋を取り出して、数十枚に及ぶ写真を多幸の前に差し出した。
そして、妻が一枚一枚の写真の場所を説明しようとしたら、
「その必要はありません。」と多幸は一言言い、一枚一枚、じっくりと写真を見だした。
そして、多幸は見終わった写真をテーブルの上に、左、右側と整理するように置いていった。
リズム良く写真を精査していた多幸の手が止まった。
多幸は額に表出している無数の皺を眉間に引き寄せ、顰めっ面をしながら、一枚の写真を睨んでいた。
そして、「うん~」と唸り、その写真を他の写真と明らかに区別するよう、裏返しにし、妻の袂のスペースにそっと置いた。
そのようにして、多幸は全ての写真を見終えた。
妻の袂に裏返しに置かれた写真は3枚であった。
多幸はその3枚の写真を左から順に説明を始めた。
1枚目は風呂場の四隅の写真であった。
「ここに穴があるのが分かりますか?」と多幸は四隅一角を指差した。
「はい…、何か窪みのようなものが見えますが…」と妻は写真を凝視しながら、そう答えた。
「そうです。その穴です。」
「これが何か…」
「この穴から怨霊の眼が見えます。」
「………」
驚き固まり、声を失った妻を他所に多幸は2枚目の写真をひっくり返した。
2枚目の写真は、北部屋の窓ガラスの写真であった。
多幸は、今度は単刀直入にこう言った。
「窓ガラスに無数の怨霊の顔がびっしりと張り付いています。」
「………」
「子供達の霊です。」
「子供……」
「そうです。これらの霊は寂しがっています。貴方達を誘っています。」
「………」
さらに声を失った妻には構わず、多幸は3枚目の写真をひっくり返した。
3枚目は北部屋の押入れの中の四隅の一角の写真であった。
多幸の表情が変わった。
今までとは異なり、険しい表情となった。
多幸は一つ唾を飲み込むと、ゆっくりと説明を始めた。
「この四隅の一角には、途轍もない憎悪を抱いた怨霊らしき姿が見えます。」
「怨霊らしき…?」
「そうです。今までの者達とは全然違う霊です。
先の2枚の者達は地縛霊です。この部屋に永らく棲みついた者達です。
怨霊の力は強くありません。
寂しがっています。
貴方達家族に遊んで欲しがっています。」
この時、妻は娘が見た裸の男の子の件が頭をよぎった。
「これは違う!」と
いきなり、多幸が怒鳴るように叫んだ。
「地縛霊ではない。浮遊霊です。」
「浮遊霊…?」
「そう、何らかの原因により貴方達家族の誰かに纏わりついている霊です。
浮遊霊には良い霊と悪い霊があります。
良い霊としては、先祖の霊、祖霊、よく言う背後霊などです。
悪い霊としては、怒り、恨み、嫉妬、妬みといった憎しみをエネルギーとして現出する呪い、所謂、呪怨です。」
「呪怨?」
「そうです。怨念の塊です。
それは生霊であったり、死霊であったりするのです。」
「生霊、死霊…」
「恐らく、貴女を襲う黒髪の白い女は正に怨念の塊、呪怨の霊と思われます。」
「どうすれば良いのですか?」
妻は悲痛に問うた。
多幸は暫くの沈黙の後、こう言った。
「私が行きます。
悪霊祓いの儀式を行います。」と
その向かい先は、ネットで探し当てたある霊媒師の所であった。
妻は東京から滋賀に戻るや否や、早々に、その道の者を頼りにするべく、ネットで「悪霊祓い」を検索した。
胡散臭い謳い文句の輩が沢山ヒットした中、妻は自身の直感により『多幸』と名乗る霊媒師に決め、電話をした。
電話で一通り社宅での出来事を話すと多幸は妻に次の指示を出した。
「全ての部屋の天井四隅と全ての窓ガラスの写真を持って、こちらに来るように」と
妻は南港東口駅で降りて、徒歩5分程にある多幸の住むマンションの一室に向かった。
部屋の前に着いた妻は呼鈴を鳴らすと、高齢の女性が出て来た。
「電話で相談した小野です。」
「お待ちしておりました。中にお入りください。」
部屋の中は普通の住いのものであった。
リビングのソファーに勧められ、お互い向かい合って座ると、
多幸と名乗る老婆は、お茶も入れず、先早やに妻に問うた。
「お願いした写真は持って来てくれましたか?」と
妻は慌てて、バックから紙袋を取り出して、数十枚に及ぶ写真を多幸の前に差し出した。
そして、妻が一枚一枚の写真の場所を説明しようとしたら、
「その必要はありません。」と多幸は一言言い、一枚一枚、じっくりと写真を見だした。
そして、多幸は見終わった写真をテーブルの上に、左、右側と整理するように置いていった。
リズム良く写真を精査していた多幸の手が止まった。
多幸は額に表出している無数の皺を眉間に引き寄せ、顰めっ面をしながら、一枚の写真を睨んでいた。
そして、「うん~」と唸り、その写真を他の写真と明らかに区別するよう、裏返しにし、妻の袂のスペースにそっと置いた。
そのようにして、多幸は全ての写真を見終えた。
妻の袂に裏返しに置かれた写真は3枚であった。
多幸はその3枚の写真を左から順に説明を始めた。
1枚目は風呂場の四隅の写真であった。
「ここに穴があるのが分かりますか?」と多幸は四隅一角を指差した。
「はい…、何か窪みのようなものが見えますが…」と妻は写真を凝視しながら、そう答えた。
「そうです。その穴です。」
「これが何か…」
「この穴から怨霊の眼が見えます。」
「………」
驚き固まり、声を失った妻を他所に多幸は2枚目の写真をひっくり返した。
2枚目の写真は、北部屋の窓ガラスの写真であった。
多幸は、今度は単刀直入にこう言った。
「窓ガラスに無数の怨霊の顔がびっしりと張り付いています。」
「………」
「子供達の霊です。」
「子供……」
「そうです。これらの霊は寂しがっています。貴方達を誘っています。」
「………」
さらに声を失った妻には構わず、多幸は3枚目の写真をひっくり返した。
3枚目は北部屋の押入れの中の四隅の一角の写真であった。
多幸の表情が変わった。
今までとは異なり、険しい表情となった。
多幸は一つ唾を飲み込むと、ゆっくりと説明を始めた。
「この四隅の一角には、途轍もない憎悪を抱いた怨霊らしき姿が見えます。」
「怨霊らしき…?」
「そうです。今までの者達とは全然違う霊です。
先の2枚の者達は地縛霊です。この部屋に永らく棲みついた者達です。
怨霊の力は強くありません。
寂しがっています。
貴方達家族に遊んで欲しがっています。」
この時、妻は娘が見た裸の男の子の件が頭をよぎった。
「これは違う!」と
いきなり、多幸が怒鳴るように叫んだ。
「地縛霊ではない。浮遊霊です。」
「浮遊霊…?」
「そう、何らかの原因により貴方達家族の誰かに纏わりついている霊です。
浮遊霊には良い霊と悪い霊があります。
良い霊としては、先祖の霊、祖霊、よく言う背後霊などです。
悪い霊としては、怒り、恨み、嫉妬、妬みといった憎しみをエネルギーとして現出する呪い、所謂、呪怨です。」
「呪怨?」
「そうです。怨念の塊です。
それは生霊であったり、死霊であったりするのです。」
「生霊、死霊…」
「恐らく、貴女を襲う黒髪の白い女は正に怨念の塊、呪怨の霊と思われます。」
「どうすれば良いのですか?」
妻は悲痛に問うた。
多幸は暫くの沈黙の後、こう言った。
「私が行きます。
悪霊祓いの儀式を行います。」と
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