脇役よ恵まれてくれ!

二鈴 照

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第一話 転生したら推しの婚約者だった

作戦開始

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 目が覚めるとそこはベットの上だった。こうやって起きるのは何回めだろうか…。イマイチ、把握しきれていないが前の人生と合わせるととうに一万回は超えている気がする。

「お目覚めですか、お嬢様。」
「ええ、おはようミル。」

 話を聞くとどうやら庭で倒れていた私をミルが部屋まで運んで両親に伝えてくれたようだ。

「ありがとうミル。」
「当然のことをしたまでです。ところで夕食はお食べになられますか?」
「ええ、食べるわ。体はなんともないから、いつも通りでお願いね。」
「かしこまりました。用意でき次第お呼びいたします。」

 そう言うとミルは夕食の準備をしに私の部屋を後にした。幸せの形は一つじゃない…。そんなこと当たり前だが、他にどんな方法が?あの人が生涯想い続けた、ヒロインが彼の中でどれだけ大きいか分からないのだろうか。
やっぱ人間と神サマって違うのかな?

「夕食の準備が整いました。」
「ええ、今行くわ。」

 なんて言うか…夕食はぶっちゃけ普通だった、むしろ前世の方がうまい気がする。計画がうまく行ったら料理考案して開業でもしようかな。
うまくいったらうまい飯を作る。ウマウマ作戦だぜ。でもまあ、そんなに人生甘く無いか…

2ヶ月後ーーーー

 あっという間に入学式なんですが??
入学式も終わり今日は放課となった。この学園では寮生活であり(といっても設備が高級ホテル並)メイドは専属の1人のみとなる。

入学の余韻に浸ったり周りの人と仲良くなるチャンスの時間として、現在ここには新入生が集まっている。
…え?あれから忙しすぎてフェル様と会うどころか連絡も取れてないわ!本当に後1年になっちゃった。あと1年でフェル様を人当たりの良い人間にして。この1年の間にヒロインが誑かす奴を片っ端から消さなければ。入学前から人を魅了するとか罪な女すぎるだろ!!

「入学おめでとう、エリーフェ•バレナティオさん。」

 ふわふわした髪質に私と同じ金髪、黄玉のように輝く目の色は気品と人の視線をよく集める。

「あ、貴方は!ラシア•フリューガス様!」
「あら、いつものようにラシア様って呼んでくれないのかしら。」
「アッ…すみません。ラシア様も入学おめでとうございます。」
「ふふ、ありがとう。エリーフェもおめでとう。


 公爵令嬢、ラシア•フリューガス。私の従姉妹だ。秩序と伝統に忠実な人で、立てば白雀、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。のセリフがよく似合う方。
小説ではヒロインに一般的な社交界の知識を教えるのだが、厳しく回りくどいので中々伝わらないどころか、王子に悪い印象を与えてしまっている。でも凄く素敵で真っ直ぐな人だから、王子とは結ばれて欲しい。まあ、身内にはこの通り…

「そうだわ、入学祝いにお茶でもどうかしら。私、最近良い茶葉を見つけたの。良かったら飲んでもらいたくて。」

緩々のゆるなのである。なのに王子に対しては…

「お話しの所、失礼する。」
「…。」

 噂をすれば…紫苑色の短い髪に優しさと冷淡さが混じったような目。恐らくチャームポイントは?と聞かれたら彼は『泣き黒子ですかね。』と自信ありげにこの王子は言うことだろう。この隠れナルシが!!

「クラウド•ベルセルク様。どうかなさいましたか?」

少しの沈黙の末、ラシア様が口を開いた。

「今日は母様が貴方に話があると言っていたので時間を空けておくようにと言うことを伝えたくてね。」
「分かりました。」
「では、僕はこれで。2人とも入学おめでとう。」
「「ありがとうございます。」」

 伝え終わると王子は挨拶回りに行った。……塩ッーーーーー。さっきのふわふわ一気に消えたなァ。え?ツンデレ?いやでも、多分ツンデレじゃないなこれ…

「私、あの人チャラチャラしてて少し苦手なのですよね。」
(で、ですよねー。そう言うと思ってました。)
「あはは、、どこか少し分かります。」
「貴方が倒れたと聞いて心配していたのですが、顔を見れて安心しました。また別の機会にお誘いしますね。では私もこれで」
「はい!では、また!」

軽く会釈をすると王子の後を追う様に去っていった。

「エリーフェ。ここにいたんですね。」

背後から聞こえる大好きな人の声。くるりと体を反転させる。

「フェル様!」
「…、私が君の屋敷を後にしてからまた倒れたれたと聞いていたので心配したのですが。元気そうで何よりです。」
「アッ!ハイ…ご心配をおかけしました。」
「宜しければ、今日でもお話を聞きたいと思うのですが。時間…ありますか?」
「はい、勿論です!」
「では寮に戻ってから、供用の談話室を借りるのでそこに集合で。」
「わかりました!」

急いで寮に戻って支度をしなければ!!
浮き足立つとはこのこと…でも!推しとの作戦会議とかぁ!!!ワクワク超えて心臓破裂するくらい最高じゃないか。
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