脇役よ恵まれてくれ！

第二話 学校の七不思議

学校探索

「え？ちょ待ってくださいフェル様！」

　暗い夜、学校の廊下。私のクラスにあるだろう課題を取りに教室へ向かう。
　フェル様の歩幅が大きいので中々追いつくのが大変だ。これだから美脚は……とつくづく思う。
　私たちの学年は三階まで登ったところにある。その合間には登校時に多少のストレスを溜め、体力を削っている長い廊下、長い階段がある。

「なんだ、エリーフェ。もうへばっているのか？君の体力が少ないのは把握しているがそこまでとは…」
「すみませ…ｯ。」
「仕方ない…もう少しゆっくり行くか。」
「ありがとうございます。」

　そう言うと、彼は歩幅を合わせてくれた。全く～そういう所だぞ！フェル•ライゼント！ヒロインと歩くときも良い所を見せようとしてヒロインを置いてっちゃったり、ここ！マイナスポイント！
　フェル様の紳士度評価を考えていると、ふと何処からかピアノの音楽が聞こえてきた。聞いたことのない様な曲で胸が上がる様な寂しくなる様な。聞いていると不思議と元気が湧く様な。

「フェル様、この音なんでしょう？」
「音？……僕には聞こえんが」
「私には、はっきり聞こえますよ？うーん。こっちです！」

　フェル様の手を引いて音の聞こえる方に向かう、ピアノの音色は近づくに連れ、美しい歌声も聞こえてくる。

　目的の方へ向かうとそこは音楽室、ただ真ん中にピアノが置かれ、鍵盤が凹み独りでに音を奏でていた。何処からか聞こえる歌声はピアノとピッタリの相性で溶けて無くなりそうな声。
　どうやってこの曲は弾かれているんだろう。何故こんなにも美しい歌声が出せるのだろう。
知りたい、欲しい、もっと聞きたい。

いつのまにか私はそのピアノの方へ1人手を伸ばしていた。

「エリーフェ！！！」

　はっと、その一言で我にかえる。私は今何をしようとしていたのか。私が学校に来た目的なんてものは忘れて何故こんなにもピアノに熱中していたのか。ピアノの音と歌声はもう聞こえない。ただ真ん中にピアノが弾ける状態になっているだけだった。そこでこの前話した事を思い出す。
　　学校の七不思議、二つ目。
音楽室から聞こえる人を取り込む歌声。取り込む、人を虜にするとはこの事だろう。じゃあ、七不思議は本当にあったと言うことで…

　ちょっとまて、何かおかしい、そんな考えが急によぎった。ぱっと辺りを見渡すとそこは音楽室では無かった。真っ暗で何も見えない、フェル様もおそらく居ない。ここは…一体？
　エリーフェ•バレナティオ15歳。人生初、怪奇現象に巻き込まれました。