脇役よ恵まれてくれ!

二鈴 照

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第二話 学校の七不思議

彼を見つけに

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 ええ~。暗くてなんも見えない…。ここは…一体。

「へ、クチュン!ズビ……寒っ。ん…てか私服濡れてる?!髪も?!」

 暗闇の中下がっている自分の体温と、濡れている服と髪。…全く状況が掴めない。まず、明かりを灯してここが何処なのか確かめる必要がある。
それなら……

「フレイム!!」

 ポフッと言う音を立てて炎が出ることがなかった。(うぅ、なんでうまく行かないの~!)
折角フェル様に教えてもらった魔法も残念ながら働くことは無かった。

「シャイン」

 声の方を振り向くと光の球を持った同じ制服の人が居た。
 その顔は何処か見覚えが…

「あ!魔力検査の人!」
「うん、正解。改めまして、僕はヴァン•クライネス。君が巻き込まれたのは生徒会の罠(?)…みたいなものだよ。」
「そうなんですね、ええーっと私何で濡れてるんですか?」
「君が引っかかった罠は2番目の七不思議、『音楽室から聞こえる人を取り込む歌声』つまりセイレーンを模したものだからだよ。」
「セイレーン?」
「そう、海の怪物。もうすぐ習うんじゃないかな。」
「海の怪物…セイレ…クシュン!!」
「おや、それでは風邪を引いてしまいまうね。
……フォトン。」

 彼がそう唱えるとフワッと風が吹き張り付いていた服がパリパリになり髪がふわふわになった。

「か、乾いた…。」
「ふふ、これももうすぐ習うよ。」
「ほぇ、ありがとうございます!」
「とりあえず君はこれから生徒会が所有している部屋に来てもらうから、ついてきて。」
「……は、はい。(アッこれ怒られる奴じゃ…)」

 ノコノコとついていくと、そこにはお茶とお菓子が用意されていた。

「彼が来るまで、少し世間話でも。」
「はぃ。」
~~~~~~~~
「それでね!僕の飼っている猫が~」
「ふふふ、凄くお話しお上手ですね。」

(フェル様とは逆なタイプだけど、凄く惹かれる何かがある…もし、フェル様が上手くいったら、クライネス先輩見たいな人と結婚したいな。)

「昔から話すのが好きでね。婚約者にはいつも話を聞いてもらってるんだ。」
「そうなんですね~。」

(婚約者居るよね~まあ、こんな感じの人は皆、既に相手居そうだけどな。)

 コンコン、軽快なノック音と共に部屋の扉が開く。そこにはイケメンフェル様とゲームの登場人物、シャルク•スモーケル先輩がいた。
 シャルク•スモーケルさんはたしか王子の一つ前の生徒会長かつ、アンネ•マルクスの婚約者…。
 じっとスモーケル先輩を見つめていると、ムッとした『僕には言うことないのか』と言う顔つきで見つめるフェル様が横目に見えた。

「あ、あの…フェル様。ご心配をおかけしました。」

 私の顔を見ては大きなため息を付き隣の美人に目を向けた。するとスモーケルさんはニコッと笑い口を開いた。

「初めまして、エリーフェ•バレナティオさん。
私はシャルク•スモーケル。楽しかったかい?」
「は、初めまして。シャルク•スモーケルさん…その『私の魔術』って…」
「君が引っかかったセイレーンのことだよ。あれは私が書いた魔法陣だからね。綺麗な歌声だっただろう。」
「はい、とても綺麗でしたが…魔術だとしたら何故フェル様には聞こえなかったんですか?」
「あぁ、それね」

「魔力属性特有の共感覚魔術だ。この魔術を駆使すると同じ属性以外のものは負傷をしなければ、見ることも出来ない。だから、僕には聞こえなかったが、君には聞こえた。君は水の属性だったから。」


 スモーケル先輩の声を遮るようにフェル様が説明をした。


「なるほど!そんな魔術があったのですね。と言うことは…フェル様も何か見えました?」
「僕は話をするステンドグラスだった。」
「なるほど!ステンドグラスは光属性の共感覚魔術だったんですね!」

 パチパチパチ、と拍手する音。それを出していたの紛れもない、スモーケル先輩だった。

「やはり…そこまで分かっていたとは。流石だね、フェル•ライゼントくん。…私の見込みは正しかった様だ。」
「それは…ありがとうございます(?)」


「突然だけどフェルくん
生徒会に入らないかい?」

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