脇役よ恵まれてくれ！

第三話 猫の家

クライネス家突撃！！

　馬車のカラカラとした音がピタリとやむと扉が開いた。

「どうやら着いたようですね。」

　スッとフェル様が馬車から降りると手を差し出した。

「エリーフェ、手を」

　どうやら馬車から降りるために手を貸していただけるようだ。

（いやいやいや！！『どうやら馬車から降りるために手を貸していただけるようだ。』じゃない！！私しんじゃう！！！待って…待ってくれ顔を長い間見るだけでぶっ倒れる私が？！手とれるわけないじゃん！ァーーー！！！！気づかなきゃよかった～！！馬車から降りれねえ！）

「あっ、バレナティオさん達！いらっしゃい～」

　ふと屋敷の方から声がする、するとそこには先に帰省していたクライネス先輩が居た。
　スタスタと駆け寄ってくると馬車を下ろすの手伝うよとフェル様に伝えるとイーゲルさんに手を差し出した。
　それを受け取りゆっくり馬車からイーゲルさんは降りた。
　
（はわーここまできたら死に物狂いでフェル様の手を取るしかねぇ…ワタシナニモカンジナイ…ワタシナニモシラナイ…よし！）

　覚悟を決め手を取ろうとした。

「ほら、バレナティオさんも。降りれる？」

　スッと差し出された手はフェル様のものではなく、クライネス先輩のものだった。

（え…っとこれって令嬢的にとっても大丈夫なんだっけ？うーまっフェル様だと倒れちゃう気がするし、とりあえず手を貸して貰おう。）

「ありがとうございます、クライネス先輩。」
「こちらも来てくれてありがとう。」

フワッと降りた馬車から、少しムッっとしたフェル様が脇に見える。腕を組んで今にも、何故僕では駄目なんだ。とか考えているのだろうか。

「さ、皆さんこっちです。僕の家へようこそ。」

クライネス先輩の案内と共に何処からか出てきた猫が私の足に擦り寄ってきた。

「ニャアン～🎵」

「マロン、お客さまに失礼の無いようにな。
こちら、僕の家で飼っている猫のマロンだよ。ここは野良猫も多く来るから周りからは『猫の家』とも呼ばれてるんだよ。あっ、それに」
「ヴァン様。」
「あっ、ごめんごめん～」

クライネス先輩の長くなりそうな話を察したのかイーゲルさんが話に水を差し、家へ歩んでいく。

（婚約者だからちゃんと取り扱い分かってるな…。私達とは違って小さい頃から長い間ずっと近くにいるから分かるんだ、理解してるんだ。）

　前に歩く幸せそうな2人をただ、私は見ていｯ！

　軽く頭にチョップをされた私はそれをしたであろう人物の方に『何するんですか』と訴えかける目を向けた。

「エリーフェ。ボケっとするな、既に依頼は始まっているんだぞ。」
「…うぅ～すみません。（どうも他の婚約者見ちゃうとモヤモヤしちゃう～ｯ！！）」
「僕がついてるんだから少しは自信を持て。
1人より僕が着いていた方が心強いだろ？」

（周りを羨ましがる必要はない。私は私のやるこをするだけ！
推しフェル様も見てるんだから、活躍見せつけますよ！）

「！！！その通りですね！！私たちの力見せつけてやりましょう！！」

どんとこい！どんな謎でも解決してやるんだからなーーー！！！