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21.お義姉さま
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ディアス伯爵邸の玄関の前に止まった馬車を下りれば執事及び使用人がずらりと一列に並んで頭を下げている。
「ジリアン様。お待ちしておりました。心より歓迎いたします」
「あ……ありがとうございます」
これほどの人数に出迎えられるとたじろいでしまう。タイラーは「無事に送り届けたからな!」と執事に報告をすると笑顔で手を振り帰っていった。たった一日過ごしただけだがタイラーがいなくなってしまうと急に心細くなる。
「当主たちは諸事情により出迎えることが叶いませんでした。大変申し訳ないとお伝えするようにと申しつかっております」
執事は出迎えが自分たちだけになってしまったことを申し訳なさそうに頭を下げた。それを聞き一気に肩の力が抜けた。
「あっ、そうなんですね」
ジリアンはそのまま侍女に部屋へ案内されると一休みをして食事と入浴を済ませる。広く整えられた客間は居心地がいい。高級そうな家具が珍しくつい見入ってしまった。
結局その夜は伯爵夫妻も結婚相手の御子息の顔を見ることはなかった。一体どんな人たちなのだろう。さすがに気になって就寝の挨拶のために顔を出した執事に問いかける。
「大変申し訳ございません。主が自分でジリアン様に説明したいと言っていまして私の方からは申し上げることが出来ません。その主なのですが本当は今頃屋敷にいるはずだったのですが急なトラブルがあり戻ることが叶いませんでした。伯爵夫妻も仕事で本日は帰宅できません。このような状態で不安でしょうが、どうかこのままお待ちください。決してジリアン様を蔑ろにしている訳ではないのです。今日のところはお疲れでしょうからお休みになってください」
「分かりました」
ジリアンにはどうすることも出来ない。執事は丁寧で自分を慮ってくれている。信じて待ってみよう。確かに疲れているので休ませてもらうことにした。そう思いいざ横になったが眠れない。体は疲れているのだが馬車で眠ってしまったせいかもしれない。いろいろ考え始めると不安だらけで眼が冴えてしまう。
自分は伯爵夫妻やご子息と上手くやっていけるだろうか。この屋敷の使用人たちはみんな明るい顔をしていた。屋敷の雰囲気を見る限り噂など当てにならないような気がした。不安を拭うためにつらつらと考えて空が明るみ始める頃、ようやくジリアンは眠りについた。せっかく眠りについたのだが体に染みついたメイド生活のおかげか日差しに反応して目を覚ます。ほとんど眠れていないが体が時間を覚えてしまっている。
カーテンの隙間の日差しの眩しさに目を細める。ここではメイドではないのだから起きるには早いだろう。うろうろしては迷惑になると思いもう一度ベッドに横になる。
「どうしようかな?」
ぼんやり天井を眺めていたらいつの間にか眠ってしまっていた。はっと目を開く。自分では目を閉じただけで眠ったつもりはないのだが時計を確認すればもう昼に近い時間だった。
「うそ!」
ジリアンは慌ててベッドサイドのテーブルにあった呼び鈴を鳴らす。初めて来た屋敷で寝坊など失態だ。
「ジリアン様。お目覚めですか?」
ノックと共に侍女が顔を出す。手を借り身支度をする。渡されたワンピースはシックなデザインだ。上質な生地で着心地がいい。もしかして自分のために用意してくれたものだろうか。サイズがぴったりだ。
「お嬢様がいらっしゃっています。ジリアン様が良ければお食事をご一緒したいとおっしゃっていますがどうしますか?」
「お嬢さまとはどなたでしょう?」
「失礼しました。伯爵夫妻のお嬢さまでジリアン様の夫となるフレデリック様の妹様でいらっしゃいます。今は公爵家に嫁がれていますが、ジリアン様を心配していらっしゃったようです」
「まあ、それは大変。いつからいらしていたのでしょう? ぜひご挨拶したいわ」
申し訳ない気持ちと自分を心配してくれる人がいるという事実が嬉しい。それなのに心配してもらった兄嫁がグーグー寝ていたなんて恥ずかしい。食事と言っても朝食の時間は過ぎているのでジリアンはブランチになる。情けなくてどんな顔をして挨拶をすればいいのか……。
侍女に案内されて食堂に入れば、そこで座っていた女性が立ち上がりジリアンを見るなり破顔した。
その女性は綺麗なチョコレートブラウンの髪とブラウンの丸い瞳の可愛らしい女性だった。大きなお腹に手を添えている。どうやら妊娠中のようだ。彼女のジリアンに向ける笑みが優しくてホッとした。
「ジリアン様? 初めまして。フレデリックの妹のシャルロッテ・フィンレーです。どうぞよろしく」
「初めまして、シャルロッテ様。ジリアン・カーソンと申します。こちらこそよろしくお願いします。わざわざ来て頂いたのに、その、寝坊してお持たせしてしまい申し訳ございません」
「気にしないで。昨日来たばかりで疲れていたのでしょう? こちらこそ突然押しかけて来てごめんなさいね。それよりお腹が空いているのではないのかしら? よかったら一緒に食べましょう」
柔らかい声が安心感を与えてくれる。怒っていないようでホッとする。
「はい」
席につけばテーブルの上に食事が運ばれてくる。新鮮なサラダに具沢山のスープに焼きたてパン、数種類のジャムとフルーツも並んでいる。こんなに豪華な朝食は久しぶりだ。シャルロッテの前にはスープとサンドイッチが置かれた。
「いただきます」
「いただきます」
最初にスープから手を付けた。煮込まれた豆やベーコンの味が滲み込んでいて美味しい。お腹もすいていたので夢中で平らげてしまった。食べ終わりはっとシャルロッテを見ればニコニコとジリアンを見ている。なんとなく既視感を覚えた。
「申し訳ありません。夢中になってしまって」
「いいのよ。それに美味しそうに食べているのを見ていると私も幸せな気持ちになるわ。だから謝らないで」
そのままサロンに移動してお茶をすることになった。
「それよりもジリアン様には謝らなくてはいけないわ。本当にごめんなさい。兄も両親も出迎えられないなんて失礼にもほどがあるわ。でも両親は領地での崖崩れの対処でどうしようもなかったの。兄も商会の方でトラブルがあって。でも急いで帰ってくるって言っていたから、それまで待っていてくれる?」
「はい。分かりました。あの、私に様付けは不要です。どうぞジリアンとお呼びください」
「そう? じゃあジリアンと呼ぶわね。それならジリアンも私のことをもシャルロッテと呼んでくれる?」
「はい。シャルロッテはおいくつなんですか?」
「私は二十二歳になったわ。ジリアンは確か十九歳だったわね」
「年上だったのですね」
「たった三歳よ。気にすることないわ」
呼び捨ては少し抵抗がある。ジリアンは思い切ってお願いしてみた。
「あの、それならお義姉さまとお呼びしては駄目ですか? 私一人っ子だったので姉妹の存在が憧れだったのです」
イヴリンと会った時、年の近い従姉なら姉妹のように過ごせたらと思ったこともあったが彼女とは仲良くなることは出来なかった。でもシャルロッテとならきっと仲のいい姉妹になれそうだ。彼女は明るく朗らかで親しみやすい。この人の兄だというフレデリック様はきっといい人だと思える。ジリアンの中の不安がどんどん消えていく。
「ふふふ。いいわよ。妹かあ。嬉しいな」
「赤ちゃんは今、何カ月なのですか?」
「七カ月よ。生まれたら可愛がってね」
「はい。もちろんです。楽しみですね。ところで聞いてもいいでしょうか?」
「何でも聞いて?」
「フレデリック様はどんな方なのでしょう?」
「…………」
シャルロッテは目を丸くして固まった。そしてこめかみを押さえて溜息をついた。気になって聞いてしまったが失礼だったかしら。気を悪くしたのなら申し訳ない……。
「あの……」
「ジリアン。ひとつ確かめたいのだけど。お兄様はジリアンにきちんとプロポーズをしていないのかしら?」
「……はい。いろいろ慌ただしくて」
ジリアンは昨日の朝、結婚が決まったことを告げられそのまま馬車に乗ってここに来たことを掻い摘んで話した。
「顔も合わせていない? はあ~。本当に申し訳ないわ。それでは兄はあなたに何も説明をしていないのね。実は私も兄からは急に結婚すると聞かされたの。トラブルがあってあなたを出迎えられないから様子を見に行ってほしいと頼まれてね。ジリアンの家に事情があるのは簡単に聞いているわ。たぶんこんな形でジリアンとの結婚を決めたことは兄なりに理由があるのだと思うの。少なくとも妹から見て悪い人ではないから嫌わないでくれると有難いわ。どんな人間かはジリアンが会って確かめた方がいいと思う。もし兄のことが好きになれず一緒にいるのが苦痛だと思ったら言ってね。その時は私が何とかするわ。私はジリアンの味方よ」
シャルロッテはウインクをして笑った。兄よりジリアンの味方だと言う言葉がふいに胸を突いた。
「うっ……」
両目からはぽろぽろと涙が溢れ出す。知らない国に知らない家に嫁ぐことが本当は恐ろしかった。怖くて怖くて逃げ出したかった。でも戻れないなら前向きになろうと悪いことは考えないようにしていた。執事も使用人も優しいけど夫となる人は顔も見せない。だけどシャルロッテが来てくれた。そうだ。生きるって悪いことばかりじゃない。
「ジリアン。大丈夫。大丈夫よ」
シャルロッテはジリアンの隣に移動すると抱きしめて背中を優しく擦ってくれた。幼子をあやすように何度もそうしてくれた。その手の温かさに涙が止まらない。ジリアンはまるで子供に戻ってしまったかのようにしゃくりあげて泣いた。
「ジリアン様。お待ちしておりました。心より歓迎いたします」
「あ……ありがとうございます」
これほどの人数に出迎えられるとたじろいでしまう。タイラーは「無事に送り届けたからな!」と執事に報告をすると笑顔で手を振り帰っていった。たった一日過ごしただけだがタイラーがいなくなってしまうと急に心細くなる。
「当主たちは諸事情により出迎えることが叶いませんでした。大変申し訳ないとお伝えするようにと申しつかっております」
執事は出迎えが自分たちだけになってしまったことを申し訳なさそうに頭を下げた。それを聞き一気に肩の力が抜けた。
「あっ、そうなんですね」
ジリアンはそのまま侍女に部屋へ案内されると一休みをして食事と入浴を済ませる。広く整えられた客間は居心地がいい。高級そうな家具が珍しくつい見入ってしまった。
結局その夜は伯爵夫妻も結婚相手の御子息の顔を見ることはなかった。一体どんな人たちなのだろう。さすがに気になって就寝の挨拶のために顔を出した執事に問いかける。
「大変申し訳ございません。主が自分でジリアン様に説明したいと言っていまして私の方からは申し上げることが出来ません。その主なのですが本当は今頃屋敷にいるはずだったのですが急なトラブルがあり戻ることが叶いませんでした。伯爵夫妻も仕事で本日は帰宅できません。このような状態で不安でしょうが、どうかこのままお待ちください。決してジリアン様を蔑ろにしている訳ではないのです。今日のところはお疲れでしょうからお休みになってください」
「分かりました」
ジリアンにはどうすることも出来ない。執事は丁寧で自分を慮ってくれている。信じて待ってみよう。確かに疲れているので休ませてもらうことにした。そう思いいざ横になったが眠れない。体は疲れているのだが馬車で眠ってしまったせいかもしれない。いろいろ考え始めると不安だらけで眼が冴えてしまう。
自分は伯爵夫妻やご子息と上手くやっていけるだろうか。この屋敷の使用人たちはみんな明るい顔をしていた。屋敷の雰囲気を見る限り噂など当てにならないような気がした。不安を拭うためにつらつらと考えて空が明るみ始める頃、ようやくジリアンは眠りについた。せっかく眠りについたのだが体に染みついたメイド生活のおかげか日差しに反応して目を覚ます。ほとんど眠れていないが体が時間を覚えてしまっている。
カーテンの隙間の日差しの眩しさに目を細める。ここではメイドではないのだから起きるには早いだろう。うろうろしては迷惑になると思いもう一度ベッドに横になる。
「どうしようかな?」
ぼんやり天井を眺めていたらいつの間にか眠ってしまっていた。はっと目を開く。自分では目を閉じただけで眠ったつもりはないのだが時計を確認すればもう昼に近い時間だった。
「うそ!」
ジリアンは慌ててベッドサイドのテーブルにあった呼び鈴を鳴らす。初めて来た屋敷で寝坊など失態だ。
「ジリアン様。お目覚めですか?」
ノックと共に侍女が顔を出す。手を借り身支度をする。渡されたワンピースはシックなデザインだ。上質な生地で着心地がいい。もしかして自分のために用意してくれたものだろうか。サイズがぴったりだ。
「お嬢様がいらっしゃっています。ジリアン様が良ければお食事をご一緒したいとおっしゃっていますがどうしますか?」
「お嬢さまとはどなたでしょう?」
「失礼しました。伯爵夫妻のお嬢さまでジリアン様の夫となるフレデリック様の妹様でいらっしゃいます。今は公爵家に嫁がれていますが、ジリアン様を心配していらっしゃったようです」
「まあ、それは大変。いつからいらしていたのでしょう? ぜひご挨拶したいわ」
申し訳ない気持ちと自分を心配してくれる人がいるという事実が嬉しい。それなのに心配してもらった兄嫁がグーグー寝ていたなんて恥ずかしい。食事と言っても朝食の時間は過ぎているのでジリアンはブランチになる。情けなくてどんな顔をして挨拶をすればいいのか……。
侍女に案内されて食堂に入れば、そこで座っていた女性が立ち上がりジリアンを見るなり破顔した。
その女性は綺麗なチョコレートブラウンの髪とブラウンの丸い瞳の可愛らしい女性だった。大きなお腹に手を添えている。どうやら妊娠中のようだ。彼女のジリアンに向ける笑みが優しくてホッとした。
「ジリアン様? 初めまして。フレデリックの妹のシャルロッテ・フィンレーです。どうぞよろしく」
「初めまして、シャルロッテ様。ジリアン・カーソンと申します。こちらこそよろしくお願いします。わざわざ来て頂いたのに、その、寝坊してお持たせしてしまい申し訳ございません」
「気にしないで。昨日来たばかりで疲れていたのでしょう? こちらこそ突然押しかけて来てごめんなさいね。それよりお腹が空いているのではないのかしら? よかったら一緒に食べましょう」
柔らかい声が安心感を与えてくれる。怒っていないようでホッとする。
「はい」
席につけばテーブルの上に食事が運ばれてくる。新鮮なサラダに具沢山のスープに焼きたてパン、数種類のジャムとフルーツも並んでいる。こんなに豪華な朝食は久しぶりだ。シャルロッテの前にはスープとサンドイッチが置かれた。
「いただきます」
「いただきます」
最初にスープから手を付けた。煮込まれた豆やベーコンの味が滲み込んでいて美味しい。お腹もすいていたので夢中で平らげてしまった。食べ終わりはっとシャルロッテを見ればニコニコとジリアンを見ている。なんとなく既視感を覚えた。
「申し訳ありません。夢中になってしまって」
「いいのよ。それに美味しそうに食べているのを見ていると私も幸せな気持ちになるわ。だから謝らないで」
そのままサロンに移動してお茶をすることになった。
「それよりもジリアン様には謝らなくてはいけないわ。本当にごめんなさい。兄も両親も出迎えられないなんて失礼にもほどがあるわ。でも両親は領地での崖崩れの対処でどうしようもなかったの。兄も商会の方でトラブルがあって。でも急いで帰ってくるって言っていたから、それまで待っていてくれる?」
「はい。分かりました。あの、私に様付けは不要です。どうぞジリアンとお呼びください」
「そう? じゃあジリアンと呼ぶわね。それならジリアンも私のことをもシャルロッテと呼んでくれる?」
「はい。シャルロッテはおいくつなんですか?」
「私は二十二歳になったわ。ジリアンは確か十九歳だったわね」
「年上だったのですね」
「たった三歳よ。気にすることないわ」
呼び捨ては少し抵抗がある。ジリアンは思い切ってお願いしてみた。
「あの、それならお義姉さまとお呼びしては駄目ですか? 私一人っ子だったので姉妹の存在が憧れだったのです」
イヴリンと会った時、年の近い従姉なら姉妹のように過ごせたらと思ったこともあったが彼女とは仲良くなることは出来なかった。でもシャルロッテとならきっと仲のいい姉妹になれそうだ。彼女は明るく朗らかで親しみやすい。この人の兄だというフレデリック様はきっといい人だと思える。ジリアンの中の不安がどんどん消えていく。
「ふふふ。いいわよ。妹かあ。嬉しいな」
「赤ちゃんは今、何カ月なのですか?」
「七カ月よ。生まれたら可愛がってね」
「はい。もちろんです。楽しみですね。ところで聞いてもいいでしょうか?」
「何でも聞いて?」
「フレデリック様はどんな方なのでしょう?」
「…………」
シャルロッテは目を丸くして固まった。そしてこめかみを押さえて溜息をついた。気になって聞いてしまったが失礼だったかしら。気を悪くしたのなら申し訳ない……。
「あの……」
「ジリアン。ひとつ確かめたいのだけど。お兄様はジリアンにきちんとプロポーズをしていないのかしら?」
「……はい。いろいろ慌ただしくて」
ジリアンは昨日の朝、結婚が決まったことを告げられそのまま馬車に乗ってここに来たことを掻い摘んで話した。
「顔も合わせていない? はあ~。本当に申し訳ないわ。それでは兄はあなたに何も説明をしていないのね。実は私も兄からは急に結婚すると聞かされたの。トラブルがあってあなたを出迎えられないから様子を見に行ってほしいと頼まれてね。ジリアンの家に事情があるのは簡単に聞いているわ。たぶんこんな形でジリアンとの結婚を決めたことは兄なりに理由があるのだと思うの。少なくとも妹から見て悪い人ではないから嫌わないでくれると有難いわ。どんな人間かはジリアンが会って確かめた方がいいと思う。もし兄のことが好きになれず一緒にいるのが苦痛だと思ったら言ってね。その時は私が何とかするわ。私はジリアンの味方よ」
シャルロッテはウインクをして笑った。兄よりジリアンの味方だと言う言葉がふいに胸を突いた。
「うっ……」
両目からはぽろぽろと涙が溢れ出す。知らない国に知らない家に嫁ぐことが本当は恐ろしかった。怖くて怖くて逃げ出したかった。でも戻れないなら前向きになろうと悪いことは考えないようにしていた。執事も使用人も優しいけど夫となる人は顔も見せない。だけどシャルロッテが来てくれた。そうだ。生きるって悪いことばかりじゃない。
「ジリアン。大丈夫。大丈夫よ」
シャルロッテはジリアンの隣に移動すると抱きしめて背中を優しく擦ってくれた。幼子をあやすように何度もそうしてくれた。その手の温かさに涙が止まらない。ジリアンはまるで子供に戻ってしまったかのようにしゃくりあげて泣いた。
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