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Chapter_2:コーズ&エフェクト

Note_37

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 【フェニコプテラス】近郊にある、海沿いの港湾地域【PLNフォニカ・ロキアムノーティカ】にて運輸船が行き来している。そこには機体や燃料などを運ぶ、エンダー家の拠点の一つでもある。

 ある女性士官が運輸船を調達し、燃料や素材などの積載を指示する。そして司令室に入り、コーヒーを淹れて報告を行う。


『……ボレアリスです。』

「ロキ様の忠実な幹部、フューニスだ。」

『リネア様!』

「上の名前で呼ぶな!畜生ごときが!」


 【リネア・フューニス】はロキの元側近であるが、妹のためにその座を渡す。現在もロキに忠誠を尽くすため、広い範囲で活動している。


「例の物は用意しているか?ロキ様に献上される女性は逃げ出しておるまい……。」

『それが……1人逃げ出してしまい……』


 リネアは飲み物を吹き出す。


「ふざけるな!この楽園に無用の恥晒しが。ロキ様に献上されない不幸な女性を世に出すつもりか!?」

『い、いえ!納期までに間に合わせます!ご勘弁を!!』


 紙コップを握り潰し、怒りを露呈する。


「……貴様のような取るに足らん汚物など、楽園にいる価値などないわ!

エンドラどもの排除、レジスタンスキャンプの破壊、信仰の拡大、そしてそれに逆らう者達の抹消……それらを見事こなして、百歩譲って我々の配下となることを大目に見てやった。

……その失態は決して許されぬぞ!」

『申し訳ございません!必ずや、納期までにすべて納めてみせます!』

「……必ずだ。いいな!」


 通話を切る。リネアは苛立ちを隠せなかった。愚かなボレアリスに対してでは決してない。


(……ロキ様、申し訳ございません。あなたに貢献することもできず……)


 海岸の境に現れる日の出を眺め、己の無力さに怒っていた。


_____


 日の出は他の人に平等に訪れる。本当にそんな事を思っているならば、見当違いも甚だしい。この街【フェニコプテラス】の壁が日の出を邪魔し、街灯を失えば暗闇のままである。

 姉弟は下町【セカンドステップ】のホテルにて全員が寝ている。

 ライラは大きなベッドで、枕をぎゅっと抱きながら布団を乱して寝ている。

 サドは仕事を終えて支度をした後に、端末を横に置き、机の上で寝落ちしている。

 レオは…ベッドから落ちて寝ていた。





 数時間後、3人は食事を済ませる。サドがライラに買った古着を与えて、新しい服装に着替えた。少し大きめであった。

 支度を終えて、経路の最終確認を始める。


「んじゃあ、始めるか。」

「了解!……まずホテル街から繁華街へ抜ける経路は、いつもと同様に進みます。逆に裏道の方を、兵士が多く見張っているそうです。逆張りのつもりだと思いますが、完全に無意味です。

次に繁華街から【アクアトンネル】付近の駐機場へ向かいます。警備が強い場所の2つ手前で、裏道に入り、道なりを歩いてそのまま到着です。」

「ここまではあっさりだな。んで、壁の向こうに着いてからは?」

「レオに任せるよ。放射環状の通路だからまっすぐ向かってもいいし、人目の多い通路を避けてもいい。行ってみると分かりやすくて、監視もくぐり抜けやすいと思う。

とにかく塔を目印に進むのがベストだね。」

「……分かったよ。」


 これで経路の確認は終わりである。帰り道も一緒であり、避難自体は短時間でこなす。


「レオさん、サド君……本当にありがとう!」

「それは終わってから言うことだ。」

『私も忘れないでください!』


 マークⅢもライラを助ける。3人の仲間がサポートする。


「……警備がきつくなる前に、行くぞ。」


 扉を開けて、3人はこの部屋を後にした。


_____


 チェックアウトを済ませて外に出る。ホテル街の道のりはサドの言う通り、警備がまず見られなかった。サドは逆に不安になる。


(この雑さ……さすが下町と言うべきか。)


 難なく繁華街に入る。朝の街は賑わっていて、買い出しに出るパイロットや、出勤するエンジニアが出てくる。彼らに紛れつつ、流れに沿って進む。

 ライラがサドに話す。


「サド君。裏道怖いけど……他の道は無かったのかしら?」

「ないです。表は警備が堅く、上院の配下の兵士がいるはずです。」

「そっか……私、怖いんだよね。裏通るの。」


 ライラは昨夜の出来事を思い出した。サドは彼女を諭す。


「そうですね。僕も、一番危険なのはそこだと思います。走りづらいし、浮浪者が出るし、見渡しも悪いし……」

「先に言ってよ……。」

「もし腕を掴まれたら、全力で振り払ってください。刃物や武器を差し向けられたら、僕達が守ります。全力でその不届き者を成敗するので、ご安心を。」

「……頼りにしてる。」


 ライラは深く願う。そして、警備員がバリケードを張っている様子が見えてくる。


「そろそろです。」

「……今か?」

「次だね。」


 3人が歩いて裏道へと向かう。薄暗く、人気もなく、不穏な空気であった。

 レオが先頭、サドが後方でライラを挟む形で進んでいく。曲がりくねった粗雑な道で、狭い通路が続く。

 サドは後方を見張る。怪しい気配を察して、背後を見る。1人が隠れているようだ。引き続き警戒を緩めないで歩く。



…出口が見えてきた。


「おっ、出口じゃん。」


 レオは先に走り出す。


「………。」


 サドはビームソードを手に取る。まだ解放はしない。



(……今だ!)


 突然、左側から腕が伸びてきて、ライラの左腕を掴もうとしてきた。


「きゃっ!」


 サドは冷静に、ライラの肩を掴んで引き下げる。そして敵の伸びてきた腕を掴んで、ビームソードでぶった斬る。


「……出て来い。卑怯者。」


 サドが口車に乗せる。左から人が出てくる。他にも、右、上、背後からやってくる。2人を囲むようにした。全員、大の女性だがいかにも力づくでやろうとしている。


「そのお嬢さんはお前には不似合いだよ。」

「そうそう、あたしらにこそ相応しい。」

「そんな眼鏡より、私達と一緒に……ってなんで2人して伏せてんだよ。お前なにやらせて……」


 光線が一直線に何発も放たれる。裏道の女性にどんどん命中する。


「「「「うわあああっ!!!」」」」


…どうやら光線の弾幕は収まったようだ。道の先には光線銃と、合体剣に付属している小型機を従わせたレオの姿があった。


「あ、危なかったじゃない!」
「何も言わずに撃たないでよ!」
『びっくりしたじゃないですか!』

「あ~すまん。ピンチだと思ってさ。今日のウォームアップも兼ねてやった。」

「……とにかく進もう。」


 サド達は僅かながら不服だが、文句を言う暇などない。先へと進む。

 ようやく駐機場の階段へとたどり着く。関係者以外厳禁らしいが、サドは責任を持って、自ら階段への扉を開く。作業員の声は聞こえてこない。

 レオの顔を見て互いに頷き合い、3人が中へと入る。


_____


 サドが先に扉を開けて、駐機場に入る。サドはP-botピーボットの特性を活かす。

 P-botは画像に映った際、強力なノイズを自由自在に放つ外殻を持っている。サドをサドとして扱うか、P-botとして扱うか、または全く別のものとして扱うか、電磁波を自在に発してカメラに錯覚させる。

 この特性を利用して、監視カメラやロボの位置を把握する。作業員もいない。管制室も見当たらない。

 そしてP-botの本領、【プラズマネットワーク】にそれらの機器を遠隔で一気に繋げる。これでカメラやロボの設定を変更できる。

 すべての映像を一時停止させて、そのままにする。そして15分毎に1フレームだけ動くよう設定した。

 これで準備は万端だ。サドは小声で、2人を端末を通して呼び寄せる。


(……ロボに気をつけて僕のところに来て。)


 カメラはOKでも、センサーで感知される可能性がある。しかしセンサーは監督ロボの巡回ルートを制御させるために必要であり、いじって不自然にするのはよろしくない。

 レオとライラが扉を開けて入ってくる。慎重に歩いていく。それと同時に駐機場の雰囲気に、ライラは圧倒された。

 ロボの正面を避けつつ、サドのところまでたどり着く。サドは機体の扉を電波で開ける。


「後ろに乗ってください。」


 レオとライラを後ろに乗せて、機体の扉を閉ざす。P-bot自身が鍵扱いとなり、ブザーは鳴ることがない。


「……今すぐ水中へ飛び込みます。」


 エンジンをかけ、機体を動かす。音はとても静かであった。


「乗っちゃった……。」

「これ、電気駆動か?」

「潜水系は空気が命綱いのちづなだから、電動がほとんどだよ。インターバル来ない内に、早速入りますね。」


 水中への入り口が坂となっている。この時点で綺麗な水の実感が湧く。坂を下るように潜水する。

 3人はその魅力に惹かれ、水の都を代表する機体【エギルサーヴァント】と共に、美しい水中の世界へと誘われる。


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