上 下
5 / 48

第5話「行為の果てに」

しおりを挟む


 テンガがクラムをチラリとみる。……その顔!
 どやぁ。───と、言っているのだろう。

 ……。



 ブチッ……──!



 多分、切れていたっぽい。

 何も考えずに、槍を手に……命すら顧みずに、勇者クソ野郎の横っ面を──ああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!──テンガァァぁぁあああ゛あ゛あ゛!!



 ッッ!!



「おいおいおいおい……。なんの真似だぁ?」

 あ゛?
 た、確かに……。
 貫いた……──はず。

「懲りないやつだな? 雑魚と勇者でどれだけ力に差があると思ってる?」

(ば、バケモノめ……!)

 勇者は体勢を変えずに、シャラを抱き留めたまま微動びどうだにしないで……二本の指で槍の穂先をつまんでいた。

「ちょ……ちょっと!」
 それを見て怒り狂っているのはシャラだった。

「ふざけるんじゃないわよ! あんた寝所番でしょ!」
 パァン! と思いっきり頬を叩かれる、が……驚きが強く、もはや痛みすら感じない。

「シャぁぁぁラ……めとけ。お前の手が汚れるだけだぜ? ッと、ほらよぉ!」 

「ゴフッ……!」
 ゴスッ!──……衝撃を感じたときには、喉が焼けるような痛みを伴う。
 さらにゴキン! ガン! と、1撃……! 2撃……! と──目にもとまらぬ連撃。

「ご、ゴホ……。ゲホッ」

 槍を指でつまんだまま奪い取り、
 穂先ほさきの逆、「石突き」の部分で滅多打ちにしてくれたようだ。
 ……それでも、かなり手加減しているのだろう。

 でなければ……──死んでいる。とっくに死んでいるともさ。

「グホッゴホ……! げぇぇ──」

 びちゃ、びちゃびちゃ……。

 吐き戻した胃液には何も入っていない。
 そりゃロクに食べてないからな……。

「はー……物覚えの悪い奴だな? これで何回目だと思う? いい加減学習しろよ……。あー……──」

 そこで勇者はフト思いついたように、




「────もう殺しちまうか?」




 スッと温度が下がったような気がする。
 殺気を感じ────、

「え、ちょ……」

 シャラの驚いた声・・・・・・・・と同時に──。
 クルっと回転した槍の穂先がこっちを向く。

「て、テンガ? あの」
 それを戸惑った声で呼び止め、急にオドオドとしだしたのはシャラ。
 
「どうした? シャラ……他人・・なんだろ?」
「あ……う、うん」
 バツが悪そうに眼を逸らす──……か、義母さん?

 か、義母さん……──。
 カアサン……。

 か……。


 ヨロヨロと伸ばす手……。
 それがシャラへと伸び──、

「じゃぁなぁ! お前がいると、女が嫌がったり、照れたりで結構面白かったぜぇぇ」



 それだけの理由で俺は、

「テンガ待って!!」
 ギュっと勇者の首に抱き着くシャラ。

「んーーー??」

「や、やめましょ……ね?」
「なんでだ?」
「そ、その……」

 そんなくだらない理由で俺は────!

「コイツがいないと、ほら……夜に燃えない・・・・・・じゃない?」
「あーうんうん、そういやそうだなー」


 そんな理由で・・・・・・


「ははは……! 冗談、冗談。冗談だって、……こぉんな面白いもの、そう簡単に・・・・・捨てられるかよ」






 そんな理由で、

 ──俺は、「勇者の寝所番」をさせられている。




※ キャラ紹介 ※

登場キャラ



名前:シャラ
・金髪、碧眼の──エルフ?
眉目秀麗びもくしゅうれい、妖艶な女性……。
・クラムに「義母さん」と呼ばれるが……? あのシャラなのか??
・実年齢不詳(一見すると10代後半にしか見えない)
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

陰キャ肉便器

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:20

男戯噺〜不思議の国に迷いこんだら肉便器になりました〜

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:63

ちびヨメは氷血の辺境伯に溺愛される

BL / 連載中 24h.ポイント:47,230pt お気に入り:4,770

悪魔皇子達のイケニエ

BL / 連載中 24h.ポイント:2,905pt お気に入り:1,920

浮気な彼と恋したい

BL / 連載中 24h.ポイント:547pt お気に入り:10

ずっと、君しか好きじゃない

BL / 連載中 24h.ポイント:21,090pt お気に入り:920

最弱召喚士:練習で召喚したら出て来たのは『魔王』でした

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:727

処理中です...