最弱攻撃力スキルが実は最兇だったところで俺が戦いたくないのは変わらない

だんぞう

文字の大きさ
24 / 38

#24 情報交換

しおりを挟む
 ジェノランには一人ずつ入る。
 先ずロッカーの立ち並ぶテントの中で下着も靴も含めて全裸になる。
 荷物を全部入れたロッカーの扉に付けられたケースの中へ、自分の名前と入塔時間を記入した紙を差し込み、ボタンを押してジェノランの中へ。
 このボタンはテントの外へ連動しており、ボタン押下を確認した後、一分経過したら次の者が入って来る。
 とは言っても入口テントは男女別だし、破廉恥なハプニングはまず起きない。
 ジェノランの壁を通り抜けるときの感じは、うちの前の壁を抜けたときと同じ。
 呼吸のできない真っ暗な空間で一歩前へと踏み出し抜けた先で待ち構えていたのは、枝を組み布を張った簡易テント。床には布が敷かれている。
 布!
 自衛隊員のvisウィース保持者のうち一人は『布創造』だと聞いていたが、俺が以前作った草布ではなく編み目の細かい本物の布。
 そんな文明の香りがする簡易テントの中には、事前に説明されていた通り、膨らんだ布製背負い袋がいくつもあった。
 木炭で名前を書いてあるものは既に所有者が決まっているとのことなので、まっさらな一つを取り、傍らに置いてある木炭で「詩真」と書く。
 画数が多くて面倒なのだが、荷物の取り違えはがあると困るので絶対に漢字でと言われている。しかも「しま」と読みがなまで。
 持ち物にに名前書くなんて小学生以来かも。
 まあ確かにフンドシは共用したくないし、誰かがボソリと水虫の人が居るとか言っていたし。
 背負い袋は、平たい布紐を四箇所で留め、そのうちの上部二箇所は固定されていない。リュックタイプと肩掛けタイプの両用使いが可能なスグレモノ。
 『布を作る』と言っても平たい布しか出せないわけじゃないらしく、visウィースを使ううちに材質や形もある程度のバリエーションが可能になったらしい。
 背負い袋の口の部分は紐を通せるようになっていて、別途作った布製の紐を後から通して結ぶことで閉じられる構造。
 中には布製のものが幾つも入っていて、最初にフンドシを探し出して装着する。
 いい。
 このフィット感。
 草布は編み方が荒いので時折網目に下の毛が挟まることがあったが、これは違う。布フンドシ、最高。
 次はサラシを腹に巻く。このサラシは男女問わず。
 女性の場合はブラジャーを兼ねるのだが、探索中に布が必要になった場合に裂いて紐や包帯としても使えるそうだ。
 サラシの生地は和手拭いと一緒。いざって時に裂きやすい。
 一応サラシの上から紐でも留めておく。
 次は浴衣に帯。
 驚くことにテント用の生地や背負い袋の生地、サラシやフンドシの生地とはまた別の生地。
 visウィースジェノランの中に最初に入ったときに欲したものが能力として授かるというが、そこで布を欲してくれたなんて感謝しかない。
 聞いたところでは俺と姉貴とフッコさんとクソタマ以外のvisウィース保持者4人は全員、自衛隊の方々らしい。
 ジェノランは立川駐屯地の敷地にもかぶっていたからね。
 と、そこまで着込んだところで、次の人が真っ裸で入塔してきた。
 エチケットとして目をそらし、足袋っぽいものを取り出す。
 足首までのちょっと大きめの足袋で、足首のところに紐で縛り付ける感じ。この上から足の甲部分にぐるぐる巻く紐は、サイズ調節と滑り止めとを兼ねている。
 背負い袋の中には、この足袋セットをしまう「汚れてもいいものを入れる袋」の他に、A4サイズくらいの袋が五つ、それら袋の口を縛るのにも使える布紐が10本ほど入っていた。
 塔内簡易テントの外へ出ると、俺より先に入った人たちが皆さん和の白装束でずらりと。
 布色は全て真っ白なので、頭に三角の布でもつければどう見ても死に装束だが、皆さんこれで探索を行う。
「詩真」
 姉貴が近寄ってくる。
 何か言いたそうだが、言い淀んでいる風でもある。
 昨晩、砂峰すなみねさんに参加の意思を伝える際、姉貴たちとは別の班にしてくださいとお願いしてあった。
 もともとAチームとBチームとに別れていて、それぞれ10名ほど。姉貴たちとしづさん以外は全員自衛隊員。
 姉貴たち女子4人はBチームに固まっているので、俺はAチームに入れてもらうことになったわけ。
 ちなみに俺を拉致った千島田ちしまだ田平ただいらもAチーム。まあその事実はなかったことにしてあるけど。
「や、やあ、詩真くん」
 姉貴が口ごもっているうちに、田平が近寄ってきた。
 あからさまに姉貴の胸をチラ見している。これ、視線がきっとバレてるって教えた方がいいのかな。
「あ、田平さん、昨晩はジェノラン内の情報、どうもありがとうございました」
 ということにしてある。
「い、いやぁ。あのくらい造作もないことさ。どんどん頼ってくれたまえ!」
 あからさまに怪しいぎこちなさだが、胸へのチラ見のおかげでいい感じにスケベな小物感が出ていて怪しさがうまく霞んでいる。
 千島田は24歳、田平は26歳。なので会話においてはちゃんと「さん」付けで呼ぶようにしているし、まさか昨晩の拉致の実行犯と被害者だとは姉貴も全く気付いてないようだ。
「チーム別にミーティングを行う! Aチームはこちら、伊古金いこがねのとこへ集まってくれ!」
「じゃあ、俺は向こうだから」
「しっ、詩真! 気をつけるんだぞ!」
「ああ。姉貴もね」
 それ以上の会話は交わさずに離れる。
 クソ珠もフッコさんも今朝はまだ近づいてきていない。
 俺は、伊古金さんの前へと急いだ。

 Aチームのミーティングは、俺への説明も兼ねて今までの進捗報告から始まった。
 これまでの四回にも及ぶ公式探索においては、ジェノラン内の環境把握を目的に探索が行われた。
 最初の三回は、ジェノランに入る人数も限定し、自衛隊側入口付近の安全確保と食料や飲料水の調達に時間を費やした。
 というのも最初のうちは『布創造』のvisウィースを持つ牟佐むささんが作れたのはシーツだけだったから。大昔のギリシャ人のような格好だったんだな。
 その間、他の隊員は歩幅を50cmにして歩く練習を行ったそうだ。
 自衛隊側入口の近くには、壁から垂直に約1000歩約500mほどの場所に広めの川があり、そこでは六本足のサンショウウオっぽい生き物――ムツアシサンショウウオモドキ(仮)と、鮎サイズで鮮やかな緑色の魚――ミドリウオ(仮)とが捕れる。
 これは大きめの葉で巻いてから焼いて食料にする。
 前者は手足の先が指ではなくヒレ状であるため厳密にはサンショウウオともかなり違うのだが、俺のノートに記載されていた適当ネーミングが参考にされてしまったためにそんな妙な名前になってしまったと言われ、恥ずかしかった。
 牟佐さんはその後、次々と様々な布製品を作るマッシーンと化し、それゆえSVステータス・ヴィジョンしんについては自衛隊メンバー中、一番の伸びを見せたという。
 visウィースを使うだけでもpotentiaポテンティアが伸びるんだな。
 他にもモモモドキや、さらには青いリンゴに似た酸味のある果実(青リンゴモドキ)をも発見したようだ。
 Bチームである牟佐さん以外の自衛隊visウィース保持者は全員Aチームで、リーダーの伊古金さんが『筋力増強』、サブリーダーの歩長ふちょうさんが『治癒』、火志賀ひしがさんが『火』とのこと。ちなみに歩長さんは女性だ。
 姉貴は案の定『雷』で、クソ珠は『闇』、フッコさんは『探査』とのこと。危険なものが近づくと分かるみたいで、食べられるものなのかどうかも判断できるらしい。
 食料調達は俺の想像以上に充実していたが、水筒困った問題が起きていた。
 というのも、いろんな布を作れるようになった牟佐さんが防水布の作成に挑戦したそうだが、布の繊維と繊維の間を埋める樹脂だけ再現することができなかったとのこと。
 そこで俺が、ヨツデグレイさんたちの仮住居で見た方法を教えたところ、即採用となった。
 一つはニセヒモツタを捕まえてきて、丈夫な葉っぱを巻いた枝でまんべんなく全身を叩きまくる方法。
 歯の生えた頭部と尻尾の先だけを落として中身を外へこそぎ出すと、細めのホースみたいな皮だけが残る。ここへヒモツタを差し込み、ぐるぐると振り回すと内側が掃除され、防水性のホースが出来上がる。端っこを縛ると体に巻き付ける水筒のようにも使えて、500mlちょいは入る。
 もう一つはゴムガエル。中身を石で綺麗にこそいで皮だけにすると、食用以外に大きな防水袋としても使える。
 もちろんニセヒモツタもゴムガエルも中身はちゃんといただきました。
 ニジカナブンの卵を保護する泡の塩も教えてあげたため、探索隊の中ではヒーローのようにもてはやされた。
 姉貴に関係なくほめられたのって、家族とフッコさん以外では初めてかもしれない。



### 簡易人物紹介 ###

国館川くにたちかわ 詩真しま
主人公。現実よりジェノランの方が居心地が良い。visウィースは公的には『異世界通訳』。探索隊Aチーム。水筒と塩の救世主となった。

・国館川 亜貴あき
姉。羞恥心<探究心な姉。ご立派(推定G)。visウィースは『雷』。探索隊Bチーム。

たま
元幼馴染(推定D)。話が通じない。すぐに変態呼ばわりしてくる。visウィースは『闇』。探索隊Bチーム。

中分地ちゅうぶんじ 富久子ふくこ
フッコさん。亜貴の同級生で信奉者。タレ目の眼鏡美人(推定E)。詩真の境遇と趣味に理解と共感があり、告白された。visウィースは『探査』。探索隊Bチーム。

小馬こうま しづ
母の元同僚。姉以上にご立派(推定J)な童顔ゆるふわ女子。ジェノランで遭難しかけてたのを詩真が助けた。探索隊Bチーム。

砂峰すなみね
マッチョなお兄さん。陸上自衛隊のカレーに誇りを持っている。マッチョポージングなしには喋れないのかもしれない。

千島田ちしまだ
詩真を拉致し、日本のためにと殺しかけた自衛隊員。24歳男性。全然笑わない。探索隊Aチーム。

田平ただいら
詩真の拉致に加担した、顔のパーツが中央に寄っている丸顔の自衛隊員。26歳男性。無類のおっぱい好き。探索隊Aチーム。

伊古金いこがね
自衛隊員。探索隊Aチームのリーダー。男性。visウィースは『筋力増強』。

牟佐むさ
自衛隊員。探索隊Bチーム。男性。visウィースは『布創造』。

歩長ふちょう
自衛隊員。探索隊Aチームのサブリーダー。女性。visウィースは『治癒』。

火志賀ひしが
自衛隊員。探索隊Aチーム。男性。visウィースは『火』。

・ヨツデグレイ
いわゆるグレイに似た四腕の人型種族。交信能力を持ち、平和的で親切。子供には母乳ではなく素嚢そのうで整えた甘い液を与える。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

裏切り者達に復讐を…S級ハンターによる最恐育成計画

みっちゃん
ファンタジー
100年前、異世界の扉が開き、ハンターと呼ばれる者達が魔物達と戦う近未来日本 そんな世界で暮らすS級ハンターの 真田優斗(さなだゆうと)は異世界の地にて、仲間に裏切られ、見捨てられた 少女の名はE級ハンターの"ハルナ•ネネ"を拾う。 昔の自分と重なった真田優斗はハルナ•ネネを拾って彼女に問いかける。 「俺達のギルドに入りませんか?」 この物語は最弱のE級が最強のS級になり、裏切った者達に復讐物語である。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。

最強のチート『不死』は理想とはかけ離れていました ~ 人と関わりたくないので史上最強の家族と引きこもりを目指したいと思います

涅夢 - くろむ
ファンタジー
何をやってもうまくいかなかった前世。人間不信になってしまった超ネガティブ中年。そんなおっさんが転生時に見つけてしまった「不死」という能力。これで悠々自適なスローライフが確実なものに……。だがしかし、最強のチート能力であるはずの「不死」は理想とはかけ離れていた。 『え!?なんでワカメ!?』 うっかり人外に身を落としてしまった主人公。謎の海藻から始まる異世界生活。目的からかけ離れた波乱万丈の毎日が始まる……。 いくら強くなっても不安で仕方ない。完璧なスローライフには憂いがあってはならないのだ!「創造魔法」や「寄生」を駆使して生き残れ! なるべく人と関わりたくない主人公が目指すは「史上最強の引きこもり」 と、その道連れに史上最強になっていく家族の心温まるほっこり生活もお送りします。 いや、そっちがメインのはず…… (小説家になろうでも同時掲載中です)

主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸
ファンタジー
高等魔術学園に入学した主人公の新田伸。彼は大人しく高校生活を送りたいのに、友人たちが問題を持ち込んでくる。嫌々ながら巻き込まれつつ、彼は徹底的に目立たないようにやり過ごそうとする。例え相手が高校最強と呼ばれる人間だろうと、やり過ごす自信が彼にはあった。何故なら、彼こそが世界最強の魔術使いなのだから……。最強の魔術使いの高校生が、平穏な学園生活のために実力を隠しながら、迫り来る問題を解決していく物語。 ※主人公はできる限り本気を出さず、ずっと実力を誤魔化し続けます ※小説家になろう、ノベルアップ+、ノベルバ、カクヨムにも投稿しています。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

最弱スキル《リサイクル》で世界を覆す ~クラス追放された俺は仲間と共に成り上がる~

KABU.
ファンタジー
平凡な高校生・篠原蓮は、クラスメイトと共に突如異世界へ召喚される。 女神から与えられた使命は「魔王討伐」。 しかし、蓮に与えられたスキルは――《リサイクル》。 戦闘にも回復にも使えない「ゴミスキル」と嘲笑され、勇者候補であるクラスメイトから追放されてしまう。 だが《リサイクル》には、誰も知らない世界の理を覆す秘密が隠されていた……。 獣人、エルフ、精霊など異種族の仲間を集め、蓮は虐げられた者たちと共に逆襲を開始する。

処理中です...