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#35 離れたいのに離れられない
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薄暗く風のほとんどないその場所を、シャルロットは天井が見えないせいで洞窟だと思っていた。
屋外ならば、響いてくる金属を打ち合うような音はこんなにも反響しないだろうし、汗をにじませる熱気や湿度の高さにもより納得感がある。
しかし空間的にはかなりの広さを感じるその場所には、ブーローニュの森に生える樹々のように巨大なアリ塚のような岩が乱立して視界を遮り、また地面にも縦横無尽に水路のような鈍く赤い光を発する小川が流れ、その川幅がまちまちなために自分の行きたい方向へは思うように進めないでいた。
進んでいる方向が正しいのかを確かめるためシャルロットが何度目かの天を仰いだとき、漆黒の空に赤い光を幾つも見つけた。
星空。それもことごとく赤い星々のまたたき。
だがよく観察すると、金属を打ち合う音に合わせて明滅しているようにも見える。
シャルロットは「やっぱり外なのかも」とあまり気にせずに先へと進んだが、俺はグローワームを思い出していた。
オーストラリアやニュージーランドに生息するヒカリキノコバエの幼虫は、洞窟の奥で粘着質の糸を垂らして青緑色の光を発し、誘われて寄ってきたユスリカなどの小さな虫を捕食する。
だとしたら、屋外ではなく洞窟内だと言えるだろう。
もちろん異世界に似たような生物が居ると判断するのは早計だが、衝撃に反応して光が弱まるのは生物である可能性が高いと思う。
もしかしたら、あの衝撃音と赤い光とを離れた場所でのコミュニケーションとして用いる、人類が知らない新しいタイプの生物かもしれない。
心が踊る――のを、ぐっと抑えて、シャルロットから送られてくる『記憶』に再び集中する。
慎重に音を辿り続けたシャルロットはやがてその音の主を目撃できた。
送られてきたイメージの感想は、隻腕のアイアンゴーレム。
頭部は円錐形に尖っており、二本の足は象のように太く力強い。
巨大な腕を除けば肩のない全身のフォルムは穴の空いてない無骨な「A」の形。
そして全身に幾重にも不規則に貼り付く鉄板を、互いに一本しかないハンマーの様な巨腕で打ち合っている。
シャルロットはそれを、「ハンマー系の武器を持った騎士の一騎打ち」のように感じていた。
送られているのは過去のイメージだから、俺のvisでコミュニケーションを取ることはできない。
久々に「五感のみ」で相手を判断するという状況に、自分が陥りかけていた「相手の気持ちを感じ取れる」アドバンテージがいかに便利過ぎるモノだったかを再確認する。
シャルロットはそこで来た道を引き返すという判断をした。
あのハンマーで体を潰されるような重傷でも『回復』できるのかどうか、そもそも一発で頭をやられて意識が飛んでしまったらどうなるのか、わからなかったから。
安全への配慮と好奇心との間でそういう判断を下したシャルロットを見て、俺は自分の迷い込んだここの塔環境が随分と恵まれていたのかもと、そんな環境に自分は甘えていたのかもと自省した。
元の場所へ戻るのに、シャルロットは随分と苦戦していた。
似たような景色、溶岩水路の幅のせいであちこち回り道せざるを得ない道、薄暗さ、過ごしやすいとは言えないコンディション。
結果から言うと、シャルロットがなんとか到着した「壁」は、彼女が入ってきた場所とはそれなりに離れていた。
ちょっと離れた場所からアヌークの悲鳴が聞こえたてそれを悟ったシャルロットは、声の方向へと走った。
「壁」と溶岩水路との間の狭いスペースを、ひたすらに。
さっき自分を置いて逃げたアヌークへ思うことがないわけじゃなかったが、きっと自分が逆の立場でもそうした可能性があり得たかもと自身に言い聞かせながら。
シャルロットはすぐにそこへ着いた。
全裸のアヌークがしゃがみ込んで震えているそこへ。
そんな状況にも関わらずアヌークは最初に謝罪した。たった今、シャルロットを見捨てて逃げたことを。
シャルロットの体感時間では随分と時間が経っていたから、シャルロットはアヌークが塔の中へ入るのに相当な時間、葛藤をしたのだと思った。そのときは。
「壁」の内と外とで時間の経過が異なるなんて、その時点ではわからなかったから。
そう言えば箕方さん情報だが、塔内外の時間の流れの差は国によって異なるっぽい。
それぞれの国に出現した塔は全く別の世界、というのが世界共通認識だった。
だからこそ今回みたいに、日本とフランスの塔が内部で繋がっているかもしれないというのは、ものすごい発見になる。
連絡通路があるとなると、塔についての情報整理や対処方法が変わってくる。
そういう可能性を予想した意見はネットでも散見されてたらしいけど。
田平情報によると、それぞれの塔について何らかの「クリア」をすると最終的なステージへの扉が開く系の設定。
個人的には好きじゃない。その手のゲームとかクリアとかステージみたいな考え方は。
実際に入ってみて感じた、塔の中に生きている彼らの生態系や価値観に触れて、つくづくそう思う。
俺は命を感じた。
それを軽視するような意見は、引きこもっていた俺に対して俺の気持ちもわからないで好き勝手言ってた連中の声みたいで嫌悪感が湧いてしまう。
それに、俺たちが手に入れたvisだって同じだ。
ガチャで手に入れたわけじゃない。
必要だと感じて、それに応じて手に入れたもの。
これは、塔内の命の持つ能力が、生きていく進化の過程で手に入れた、環境適応能力であることを暗に示しているんじゃないかなとも思う。
ピリリたちもハイイロたちも、俺にとってはリアルな存在。
俺には『交信』のvisがあって、表面上じゃない深いコミュニケーションを彼らと取れたからこそそう思えるのかもだけど。
そういや異なる塔が繋がることで、生態系が重なる部分へのケアはどうしているんだろう。
ピリリたちがこの洞窟を通ってフランスの塔世界へと行くこともできそうだよね。
ただまあ餌を含めた環境を考えると、行くことのメリットは本来の環境から離れることのデメリットを超えなさそうではあるが。
実際、ピリリたちはこの洞窟を嫌がっていたし――なんて意識をしばらく『記憶』からうっすら外し気味だったのは、シャルロットもアヌークも全裸のイメージが送られてきていたから。
覗き見しているみたいで申し訳ない気持ちで。
俺が目をなんとなくそらしている間、シャルロットはアヌークのパニック状態をなだめ、自分が体験したことの説明をしていた。
少し経って落ち着いたアヌークは、自分の『能力』を思い描いたようだった。
突然、アヌークが服をまとった。
その次にシャルロットも。
さっきまで塔の外で互いにしていた格好を。
アヌークはこのvisを、『服を着ているように見せる』と説明した。幻覚系かな?
何にせよ、ようやくシャルロットの記憶の中の二人を直視できるようになった。
その後、二人はいったん外への脱出を試みた。
手をつないで、二人一緒に。
思ったよりも簡単に外へは出られた。
ただ、外に出た二人は再び全裸へと戻ったせいで大慌てだったが。
アヌークが秒で服を出し、二人の外見はなんとか取り繕えた。
それでもその時点では、『服』は体と一緒に動いてくれはするものの、袖や膝などは固定されていて、ちょっと動けばその部分は素肌が簡単に露出してしまっていた。
シャルロットも、全身の肌に直接感じる風にとても大きな不安を感じていた。
なぜならこの後、彼女たちは男子二人と公園内で待ち合わせる予定だったから。
ここでシャルロットから人物関係図まで送られてきた。
アヌークが片想いしているバルタザールは、アヌークに良い顔しながらも裏でシャルロットに言い寄ってきていて、もう一人の朴訥男子ジャンのことも別に好きでもないのに、アヌークが必死に自分とカップル成立させようと外堀を少しずつ埋められている状態。
そうまでしてこのアヌークって子と一緒にいる必要ないんじゃ、と俺なんかは思うのだが――同じ趣味でその方向性と深さ、そしてコレクションなどを考えると、切るに切れなさげな感情も伝わってきた。
一方、シャルロットとアヌークは、すぐに塔から離れようとした。
しかし塔からある程度離れると、アヌークの能力で出した『幻の服』が消えてしまうことがわかり、仕方なく塔の近くへ戻らざるを得なかった。
そんな時だった。
遠くからパトカーのサイレンが近づいてきたのと、二人の男子が自転車で到着したのは。
バルタザールとジャンだった。
『幻の服』が彼らにも通用するのか不安だったシャルロットは、さりげなく両手で胸と股間とを隠した。
### 簡易人物紹介 ###
・国館川 詩真
主人公。現実より塔の方が居心地が良い。visは公的には『異世界通訳』だが微細な電気の流れを送受信できる。伊薙探索特別班。支給浴衣を謎の美少女に与えたので、現在フンドシとサラシ、足袋のみ。
・国館川 亜貴
姉。羞恥心<探究心な姉。ご立派(田平推定G)。visは『雷』。責任感が強く嘘が苦手。伊薙探索特別班。
・椰子間比嘉 良夢
自衛隊員。男性。探索隊B→Aチーム入り。色黒で元野球部キャッチャー。既婚者。伊薙探索特別班。
・伏猿 晶乃
自衛隊員。女性。マッチョ自慢で腹筋を触らせようとしてくる。伊薙探索特別班。
・伊薙 珠
元幼馴染(田平推定D)。話が通じない。visは『闇』。詩真への恋慕と暴言を爆発させ塔内へ逃走。
・田平 己輝
詩真の拉致に加担した、顔のパーツが中央に寄っている丸顔の自衛隊員。26歳男性。無類のおっぱい好き(特技はカップ推定)。情報通。
・箕方
すらっとした長身で眼光鋭い眼鏡美人の三等陸曹。本来は広報担当。民間人への連絡係。
・シャルロット
なぜか日本の塔の奥地に居たフランスの「聖女」。17歳。マンガ好きで詩真と好きな作品がかぶった。身体部位を自身の肉体で再生するvisを持つが、男性の下半身を治療したために(厳密には自身のではない)股間画像がネット流出し、塔内へ失踪していた。
・アヌーク
日本アニメ好きなシャルロットの女友達。visは『服を着ているように見せる』。四角関係を持ち込んでくるが、趣味の方向性や深さ、コレクション等のせいでシャルロットは切れないでいる。
・バルタザール
アヌークの想い人。アヌークに良い顔しながらも裏でシャルロットに言い寄ってくる。
・ジャン
朴訥男子。アヌークが必死にシャルロットとくっつけようとしている。
・デンキトカゲ
交信能力を持つ六足トカゲ。一番懐いている個体に「ピリリ」と名付けたが、群れが蛹を経て一個の生物に。蛹化終了後、巨大化して再会。
・ヨツデグレイ
いわゆるグレイに似た四腕の人型種族。交信能力を持ち、平和的で親切。子供には母乳ではなく素嚢で整えた甘い液を与える。
・ハイイロ
ヨツデグレイの若者。異邦人、詩真の世話係。日本語への理解と駆使ぶりがハンパない。銀色の球体に乗って帰郷した。
屋外ならば、響いてくる金属を打ち合うような音はこんなにも反響しないだろうし、汗をにじませる熱気や湿度の高さにもより納得感がある。
しかし空間的にはかなりの広さを感じるその場所には、ブーローニュの森に生える樹々のように巨大なアリ塚のような岩が乱立して視界を遮り、また地面にも縦横無尽に水路のような鈍く赤い光を発する小川が流れ、その川幅がまちまちなために自分の行きたい方向へは思うように進めないでいた。
進んでいる方向が正しいのかを確かめるためシャルロットが何度目かの天を仰いだとき、漆黒の空に赤い光を幾つも見つけた。
星空。それもことごとく赤い星々のまたたき。
だがよく観察すると、金属を打ち合う音に合わせて明滅しているようにも見える。
シャルロットは「やっぱり外なのかも」とあまり気にせずに先へと進んだが、俺はグローワームを思い出していた。
オーストラリアやニュージーランドに生息するヒカリキノコバエの幼虫は、洞窟の奥で粘着質の糸を垂らして青緑色の光を発し、誘われて寄ってきたユスリカなどの小さな虫を捕食する。
だとしたら、屋外ではなく洞窟内だと言えるだろう。
もちろん異世界に似たような生物が居ると判断するのは早計だが、衝撃に反応して光が弱まるのは生物である可能性が高いと思う。
もしかしたら、あの衝撃音と赤い光とを離れた場所でのコミュニケーションとして用いる、人類が知らない新しいタイプの生物かもしれない。
心が踊る――のを、ぐっと抑えて、シャルロットから送られてくる『記憶』に再び集中する。
慎重に音を辿り続けたシャルロットはやがてその音の主を目撃できた。
送られてきたイメージの感想は、隻腕のアイアンゴーレム。
頭部は円錐形に尖っており、二本の足は象のように太く力強い。
巨大な腕を除けば肩のない全身のフォルムは穴の空いてない無骨な「A」の形。
そして全身に幾重にも不規則に貼り付く鉄板を、互いに一本しかないハンマーの様な巨腕で打ち合っている。
シャルロットはそれを、「ハンマー系の武器を持った騎士の一騎打ち」のように感じていた。
送られているのは過去のイメージだから、俺のvisでコミュニケーションを取ることはできない。
久々に「五感のみ」で相手を判断するという状況に、自分が陥りかけていた「相手の気持ちを感じ取れる」アドバンテージがいかに便利過ぎるモノだったかを再確認する。
シャルロットはそこで来た道を引き返すという判断をした。
あのハンマーで体を潰されるような重傷でも『回復』できるのかどうか、そもそも一発で頭をやられて意識が飛んでしまったらどうなるのか、わからなかったから。
安全への配慮と好奇心との間でそういう判断を下したシャルロットを見て、俺は自分の迷い込んだここの塔環境が随分と恵まれていたのかもと、そんな環境に自分は甘えていたのかもと自省した。
元の場所へ戻るのに、シャルロットは随分と苦戦していた。
似たような景色、溶岩水路の幅のせいであちこち回り道せざるを得ない道、薄暗さ、過ごしやすいとは言えないコンディション。
結果から言うと、シャルロットがなんとか到着した「壁」は、彼女が入ってきた場所とはそれなりに離れていた。
ちょっと離れた場所からアヌークの悲鳴が聞こえたてそれを悟ったシャルロットは、声の方向へと走った。
「壁」と溶岩水路との間の狭いスペースを、ひたすらに。
さっき自分を置いて逃げたアヌークへ思うことがないわけじゃなかったが、きっと自分が逆の立場でもそうした可能性があり得たかもと自身に言い聞かせながら。
シャルロットはすぐにそこへ着いた。
全裸のアヌークがしゃがみ込んで震えているそこへ。
そんな状況にも関わらずアヌークは最初に謝罪した。たった今、シャルロットを見捨てて逃げたことを。
シャルロットの体感時間では随分と時間が経っていたから、シャルロットはアヌークが塔の中へ入るのに相当な時間、葛藤をしたのだと思った。そのときは。
「壁」の内と外とで時間の経過が異なるなんて、その時点ではわからなかったから。
そう言えば箕方さん情報だが、塔内外の時間の流れの差は国によって異なるっぽい。
それぞれの国に出現した塔は全く別の世界、というのが世界共通認識だった。
だからこそ今回みたいに、日本とフランスの塔が内部で繋がっているかもしれないというのは、ものすごい発見になる。
連絡通路があるとなると、塔についての情報整理や対処方法が変わってくる。
そういう可能性を予想した意見はネットでも散見されてたらしいけど。
田平情報によると、それぞれの塔について何らかの「クリア」をすると最終的なステージへの扉が開く系の設定。
個人的には好きじゃない。その手のゲームとかクリアとかステージみたいな考え方は。
実際に入ってみて感じた、塔の中に生きている彼らの生態系や価値観に触れて、つくづくそう思う。
俺は命を感じた。
それを軽視するような意見は、引きこもっていた俺に対して俺の気持ちもわからないで好き勝手言ってた連中の声みたいで嫌悪感が湧いてしまう。
それに、俺たちが手に入れたvisだって同じだ。
ガチャで手に入れたわけじゃない。
必要だと感じて、それに応じて手に入れたもの。
これは、塔内の命の持つ能力が、生きていく進化の過程で手に入れた、環境適応能力であることを暗に示しているんじゃないかなとも思う。
ピリリたちもハイイロたちも、俺にとってはリアルな存在。
俺には『交信』のvisがあって、表面上じゃない深いコミュニケーションを彼らと取れたからこそそう思えるのかもだけど。
そういや異なる塔が繋がることで、生態系が重なる部分へのケアはどうしているんだろう。
ピリリたちがこの洞窟を通ってフランスの塔世界へと行くこともできそうだよね。
ただまあ餌を含めた環境を考えると、行くことのメリットは本来の環境から離れることのデメリットを超えなさそうではあるが。
実際、ピリリたちはこの洞窟を嫌がっていたし――なんて意識をしばらく『記憶』からうっすら外し気味だったのは、シャルロットもアヌークも全裸のイメージが送られてきていたから。
覗き見しているみたいで申し訳ない気持ちで。
俺が目をなんとなくそらしている間、シャルロットはアヌークのパニック状態をなだめ、自分が体験したことの説明をしていた。
少し経って落ち着いたアヌークは、自分の『能力』を思い描いたようだった。
突然、アヌークが服をまとった。
その次にシャルロットも。
さっきまで塔の外で互いにしていた格好を。
アヌークはこのvisを、『服を着ているように見せる』と説明した。幻覚系かな?
何にせよ、ようやくシャルロットの記憶の中の二人を直視できるようになった。
その後、二人はいったん外への脱出を試みた。
手をつないで、二人一緒に。
思ったよりも簡単に外へは出られた。
ただ、外に出た二人は再び全裸へと戻ったせいで大慌てだったが。
アヌークが秒で服を出し、二人の外見はなんとか取り繕えた。
それでもその時点では、『服』は体と一緒に動いてくれはするものの、袖や膝などは固定されていて、ちょっと動けばその部分は素肌が簡単に露出してしまっていた。
シャルロットも、全身の肌に直接感じる風にとても大きな不安を感じていた。
なぜならこの後、彼女たちは男子二人と公園内で待ち合わせる予定だったから。
ここでシャルロットから人物関係図まで送られてきた。
アヌークが片想いしているバルタザールは、アヌークに良い顔しながらも裏でシャルロットに言い寄ってきていて、もう一人の朴訥男子ジャンのことも別に好きでもないのに、アヌークが必死に自分とカップル成立させようと外堀を少しずつ埋められている状態。
そうまでしてこのアヌークって子と一緒にいる必要ないんじゃ、と俺なんかは思うのだが――同じ趣味でその方向性と深さ、そしてコレクションなどを考えると、切るに切れなさげな感情も伝わってきた。
一方、シャルロットとアヌークは、すぐに塔から離れようとした。
しかし塔からある程度離れると、アヌークの能力で出した『幻の服』が消えてしまうことがわかり、仕方なく塔の近くへ戻らざるを得なかった。
そんな時だった。
遠くからパトカーのサイレンが近づいてきたのと、二人の男子が自転車で到着したのは。
バルタザールとジャンだった。
『幻の服』が彼らにも通用するのか不安だったシャルロットは、さりげなく両手で胸と股間とを隠した。
### 簡易人物紹介 ###
・国館川 詩真
主人公。現実より塔の方が居心地が良い。visは公的には『異世界通訳』だが微細な電気の流れを送受信できる。伊薙探索特別班。支給浴衣を謎の美少女に与えたので、現在フンドシとサラシ、足袋のみ。
・国館川 亜貴
姉。羞恥心<探究心な姉。ご立派(田平推定G)。visは『雷』。責任感が強く嘘が苦手。伊薙探索特別班。
・椰子間比嘉 良夢
自衛隊員。男性。探索隊B→Aチーム入り。色黒で元野球部キャッチャー。既婚者。伊薙探索特別班。
・伏猿 晶乃
自衛隊員。女性。マッチョ自慢で腹筋を触らせようとしてくる。伊薙探索特別班。
・伊薙 珠
元幼馴染(田平推定D)。話が通じない。visは『闇』。詩真への恋慕と暴言を爆発させ塔内へ逃走。
・田平 己輝
詩真の拉致に加担した、顔のパーツが中央に寄っている丸顔の自衛隊員。26歳男性。無類のおっぱい好き(特技はカップ推定)。情報通。
・箕方
すらっとした長身で眼光鋭い眼鏡美人の三等陸曹。本来は広報担当。民間人への連絡係。
・シャルロット
なぜか日本の塔の奥地に居たフランスの「聖女」。17歳。マンガ好きで詩真と好きな作品がかぶった。身体部位を自身の肉体で再生するvisを持つが、男性の下半身を治療したために(厳密には自身のではない)股間画像がネット流出し、塔内へ失踪していた。
・アヌーク
日本アニメ好きなシャルロットの女友達。visは『服を着ているように見せる』。四角関係を持ち込んでくるが、趣味の方向性や深さ、コレクション等のせいでシャルロットは切れないでいる。
・バルタザール
アヌークの想い人。アヌークに良い顔しながらも裏でシャルロットに言い寄ってくる。
・ジャン
朴訥男子。アヌークが必死にシャルロットとくっつけようとしている。
・デンキトカゲ
交信能力を持つ六足トカゲ。一番懐いている個体に「ピリリ」と名付けたが、群れが蛹を経て一個の生物に。蛹化終了後、巨大化して再会。
・ヨツデグレイ
いわゆるグレイに似た四腕の人型種族。交信能力を持ち、平和的で親切。子供には母乳ではなく素嚢で整えた甘い液を与える。
・ハイイロ
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※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。
※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。
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