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半蔵
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「さあもうすぐ出口でっせ、こっからは松明消して静か~に行きまひょ」
真っ暗な中を手探りで進んでいた一行は、やがて枯れた古井戸の底にたどり着いた。
「この井戸をまた水が出るように掘り直すっちゅう名目でハシゴが掛けてますねん。ほな登りまっせぇ。」
黙々と登って辺りに誰もいないか確かめてから外に出る。暗がりで見えにくいが、どうやら中之島の近くらしい。
全員が登りきって歩き出そうとしたところに大きな声がかかる。
「城が落ちた日に怪しげなる振る舞い!その方ども何者じゃ!」
皆驚いて声のする方を向くと、鎧兜に身を包んだ武将と、十人ばかりの黒装束の男達。
道頓がアチャ~という顔をして頭を抱えている横から、幸村が前に出て「服部半蔵殿でごさるな?久しいのう、わしじゃ真田左衛門佐(幸村の官名)じゃ」
鎧兜の頭領らしき男が驚愕の声を漏らす。「まさか!真田殿か!お主は討死したと聞いたが!!」
「この御方を落とし奉るまではくたばるわけにはいかぬでのう」
「待て待て!お主がそのように敬語を使わなければならぬ相手とは…」
「フフッ、まあその辺は詮索せぬことじゃ」
服部半蔵の顔が火を吹くように赤くなり下忍どもに命令を下そうとした刹那
「まあまあまあ、待ちなはれ待ちなはれ」何とものどかな道頓の声。
「伊賀忍者の頭領、服部半蔵様でございますな、お初にお目にかかります。わては安井道頓と申す…」
「町人風情が黙るが良い!そこにおわすは豊臣秀頼公であろう!ならば見逃すわけにはいかぬ!!」
「まあそう言わんと、あんさん達にち~とお得なお話ですねん、時間は取らせませんよってに」
今は伊賀忍者は徳川の家来ということになっているが、元々は金で雇われればどこにでも行って暗殺・撹乱・流言飛語拡散などを行う傭兵集団のようなもので、利益に敏感なところがある。そこへもって安井道頓は秀吉・秀頼親子に可愛がられ、金山奉行も務めたことのある男である。全くの方便ということもないのではないか???
「まあ少しなら聞いてやっても良い」
道頓は少し俯いてヨッシャ!って顔をしたが誰にも見えなかった。
「今こんな調子で徳川の勝ちとなりました。これで戦のネタは無くなりましたわなぁ」
「うむ」
「そうなると次に何があるか」
「ん?」
「戦に強い方々のお取り潰しですわ」
「ば!ばかな!」
「唐土の諺にもありましてな、《狡兎死して走狗烹らる》っちゅうてね、目的を達成したらもう道具は要りまへんねん」
「お、大御所様はそのような方では」
「家康狸がそうでなくても側近がね」
「う…そ…それは」
道頓がとどめを刺す
「本多正純」
半蔵はがっくりうなだれた。
真っ暗な中を手探りで進んでいた一行は、やがて枯れた古井戸の底にたどり着いた。
「この井戸をまた水が出るように掘り直すっちゅう名目でハシゴが掛けてますねん。ほな登りまっせぇ。」
黙々と登って辺りに誰もいないか確かめてから外に出る。暗がりで見えにくいが、どうやら中之島の近くらしい。
全員が登りきって歩き出そうとしたところに大きな声がかかる。
「城が落ちた日に怪しげなる振る舞い!その方ども何者じゃ!」
皆驚いて声のする方を向くと、鎧兜に身を包んだ武将と、十人ばかりの黒装束の男達。
道頓がアチャ~という顔をして頭を抱えている横から、幸村が前に出て「服部半蔵殿でごさるな?久しいのう、わしじゃ真田左衛門佐(幸村の官名)じゃ」
鎧兜の頭領らしき男が驚愕の声を漏らす。「まさか!真田殿か!お主は討死したと聞いたが!!」
「この御方を落とし奉るまではくたばるわけにはいかぬでのう」
「待て待て!お主がそのように敬語を使わなければならぬ相手とは…」
「フフッ、まあその辺は詮索せぬことじゃ」
服部半蔵の顔が火を吹くように赤くなり下忍どもに命令を下そうとした刹那
「まあまあまあ、待ちなはれ待ちなはれ」何とものどかな道頓の声。
「伊賀忍者の頭領、服部半蔵様でございますな、お初にお目にかかります。わては安井道頓と申す…」
「町人風情が黙るが良い!そこにおわすは豊臣秀頼公であろう!ならば見逃すわけにはいかぬ!!」
「まあそう言わんと、あんさん達にち~とお得なお話ですねん、時間は取らせませんよってに」
今は伊賀忍者は徳川の家来ということになっているが、元々は金で雇われればどこにでも行って暗殺・撹乱・流言飛語拡散などを行う傭兵集団のようなもので、利益に敏感なところがある。そこへもって安井道頓は秀吉・秀頼親子に可愛がられ、金山奉行も務めたことのある男である。全くの方便ということもないのではないか???
「まあ少しなら聞いてやっても良い」
道頓は少し俯いてヨッシャ!って顔をしたが誰にも見えなかった。
「今こんな調子で徳川の勝ちとなりました。これで戦のネタは無くなりましたわなぁ」
「うむ」
「そうなると次に何があるか」
「ん?」
「戦に強い方々のお取り潰しですわ」
「ば!ばかな!」
「唐土の諺にもありましてな、《狡兎死して走狗烹らる》っちゅうてね、目的を達成したらもう道具は要りまへんねん」
「お、大御所様はそのような方では」
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道頓がとどめを刺す
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半蔵はがっくりうなだれた。
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