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果心
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「大坂城の和睦の時にも『外堀をちょっとだけ埋めさせて』っちゅうといて全部埋めましたわな?あれ正純はんの計略て聞いてまっせ!ウソつきの極みでんがな!あと同僚はんもいろいろ讒言で陥れられたりしとるんちゃいます?」
「確かに、あの狐めは大御所様の意に関わらずやりそうじゃわ」
半蔵が喰い付いたので道頓は(よっしゃ!もう一丁!)と気合を入れる。
「もしそうなった時の受け入れ先は、作っておいた方がええんちゃうかなぁ~と」
「…」
「このお二人が創る国でっせ!あんさんとその郎党ぐらいなんぼでも受け入れてもらえまっせ!」
忍者の頭は顔を赤くしたり青くしたりしながら汗みどろで思考する。
永遠とも思える時が流れた後
「了解した、どこへなりと行くが良い」
「ほな行きまっさ、さいなら」
伊賀忍者が見えなくなるぐらい遠くに来て道頓がドサッと尻もちをついた。
「あ~~~えらかった~」
皆ドッと笑った。それほどまでの難所だった。幸村も「道頓なかなかやるな」とニヤリと笑いながらねぎらいの言葉をかける。
場が落ち着いたところでおもむろに道頓が呼びかける。
「果心はん、ゴタゴタは終わったさかい早よ出てきなはれ」
暗がりから小柄で、茶人のような格好をした男がぬっと出てくる。全体的に地味な、風景に溶け込んでしまうような格好をしているが、眼はすべてを射抜くような力を放っている。
「道頓よ、うぬはわしのことを牛車か荷車と勘違いしておらぬか?なぜにこのわしが人運びなんぞせねばならぬ!」
「まあまあそない怒りないな、果心はんかて面白いと思たさかい来たんちゃいますのん?」
幸村がニヤリと笑って口を挟む。
「なかなか面白い人をご存じのようじゃな道頓よ」
「これは申し遅れました、こちらはかの有名な果心居士殿でございます」
ー果心居士ー
巷では忍者として知られているが、実際には忍者なのか僧侶なのか幻術士なのか定かではない。信長・光秀・秀吉・家康を手玉に取ったという噂がある。
「まあ確かに戦の終わったすぐ後は残党狩りが厳しいからの。わしも前天下様と日本一の勇者を見殺しにするのも寝覚めが悪い」
果心は地面に何やら呟きながら自らの周りに円を描く。
「さあ御三方、この中に入りなされ」
秀頼があわてて「道頓!そちは来ぬのか?」と尋ねるが「足手まといは川堀りの続きでもやれば良いのじゃ」と果心が一刀両断する。
「わてはここで一旦御暇いたします、お手伝いできる時があればまたお邪魔しまっさ」
秀頼は黙るしかなかった。
三人が円の中に入ると、果心が眼をお閉じなされと言うので皆その通にした。その瞬間、足元がズルっと滑るような感覚が全員を襲う。
「ほなさいなら」
道頓の間の抜けたあいさつが遠くの方で聞こえたような気がした。
「確かに、あの狐めは大御所様の意に関わらずやりそうじゃわ」
半蔵が喰い付いたので道頓は(よっしゃ!もう一丁!)と気合を入れる。
「もしそうなった時の受け入れ先は、作っておいた方がええんちゃうかなぁ~と」
「…」
「このお二人が創る国でっせ!あんさんとその郎党ぐらいなんぼでも受け入れてもらえまっせ!」
忍者の頭は顔を赤くしたり青くしたりしながら汗みどろで思考する。
永遠とも思える時が流れた後
「了解した、どこへなりと行くが良い」
「ほな行きまっさ、さいなら」
伊賀忍者が見えなくなるぐらい遠くに来て道頓がドサッと尻もちをついた。
「あ~~~えらかった~」
皆ドッと笑った。それほどまでの難所だった。幸村も「道頓なかなかやるな」とニヤリと笑いながらねぎらいの言葉をかける。
場が落ち着いたところでおもむろに道頓が呼びかける。
「果心はん、ゴタゴタは終わったさかい早よ出てきなはれ」
暗がりから小柄で、茶人のような格好をした男がぬっと出てくる。全体的に地味な、風景に溶け込んでしまうような格好をしているが、眼はすべてを射抜くような力を放っている。
「道頓よ、うぬはわしのことを牛車か荷車と勘違いしておらぬか?なぜにこのわしが人運びなんぞせねばならぬ!」
「まあまあそない怒りないな、果心はんかて面白いと思たさかい来たんちゃいますのん?」
幸村がニヤリと笑って口を挟む。
「なかなか面白い人をご存じのようじゃな道頓よ」
「これは申し遅れました、こちらはかの有名な果心居士殿でございます」
ー果心居士ー
巷では忍者として知られているが、実際には忍者なのか僧侶なのか幻術士なのか定かではない。信長・光秀・秀吉・家康を手玉に取ったという噂がある。
「まあ確かに戦の終わったすぐ後は残党狩りが厳しいからの。わしも前天下様と日本一の勇者を見殺しにするのも寝覚めが悪い」
果心は地面に何やら呟きながら自らの周りに円を描く。
「さあ御三方、この中に入りなされ」
秀頼があわてて「道頓!そちは来ぬのか?」と尋ねるが「足手まといは川堀りの続きでもやれば良いのじゃ」と果心が一刀両断する。
「わてはここで一旦御暇いたします、お手伝いできる時があればまたお邪魔しまっさ」
秀頼は黙るしかなかった。
三人が円の中に入ると、果心が眼をお閉じなされと言うので皆その通にした。その瞬間、足元がズルっと滑るような感覚が全員を襲う。
「ほなさいなら」
道頓の間の抜けたあいさつが遠くの方で聞こえたような気がした。
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